中級ユーラシア料理「元祖日の丸軒」の怪人
中級ユーラシア料理「元祖日の丸軒」という店がある
まだ世間にエスニックブームが到来する以前からある店だから
その筋では相当に老舗であったりする
とにかく、すべてが見せ物小屋のような雰囲気の中にある
昭和30年代の怪しげな出し物のような…
黄色く塗られた外観にはサーカス絵が描かれ、周りからは完全に浮き上がっている
なにせ場所が新代田、しかも環七沿いとくればラーメン屋くらいしかこれといった店がないところだ
心惹かれるまま、階段を上がってみる
ギギーッと扉を開けると予想通りの光景が目に飛び込んでくる
壁にはどういうわけか柱時計がやたらと並んでいる。時間を間違えなくて良さそうだ
窓は船仕様の丸窓。雨漏りしなくて良さそうだ
窓の外には光の帯を連ねながら環七を泳ぐ車の群れが見える
都会を航海する気分にちょいと惹かれる
BGMは昭和歌謡だ
「サムライ・ニッポン」なんかが流れていたりする
席に着くとついに噂の主人がお出ましになる
アンドレ、だ
人間山脈、大巨人のあのアンドレだ
「いらっしゃいませ…」
アンドレ(通称:店の主人)もとい店の主人(通称:ペペ・アンドレ…でも日本人らしい…思いっきり怪しいけど)だ
風貌は「ジョゼと虎と魚たち」のジョゼのおばあちゃん に似ているだとか、長髪になったゴリラーマン に似ている、とか諸説飛び交っている
なぜアンドレなのかという謎も残る
ちなみに私はかってこの店の付近に住んでいて、よく日の丸軒を訪れていた
ある日、道端でアンドレとすれ違った時にニターッとされてブッ飛んだ記憶がある
あのアンドレを昼間に見るのも強烈だが、挙げ句にあの顔でニターッだ
恐ろしい、背筋がゾッとする、というのもうなずけよう
大学生の頃の話である
で、メニューを見てみる
中級ユーラシア料理とは何か?という疑問が解ける
そもそも高級ユーラシア料理が何で低級ユーラシア料理とは何なのか、という話であるが、
まぁ、タイ、インド、中東などなどアジアンフードがいろいろと食べられて、それらが酒のつまみに合いそうな感じ=ゆえに中級みたいなことだろうか?
名物はターメイヤ(エジプトのコロッケ風)やタイの蟹料理やらいろいろあるんだが、
中でも私が好きなのはナン、である
イースト菌を使っているので、パンのような食感がよい
熱々の出来たてをちぎって食べるのがウマイのだ
味がほんのりと付いていて、そのままでもいける
ほうれん草カレーとかに浸けて食べるのだが、お土産にしてよく持ち帰ったもんだ
アンドレの一挙一動に心を奪われながら、見せ物小屋で過ごす至極の時間…
まさに時が止まったような空間、というに相応しいB級なスポットである
●中級ユーラシア料理「元祖日の丸軒」
世田谷区羽根木1—4—18
03—3325—6190
営業時間:PM17:00~AM2:00