「カレー記念日」だから仕事人なムルギー気分
今日は「カレー記念日」なんである。
なんでもカレーが船に乗って横浜港から入ってきた、ことに由来し、
横浜港の開港記念日である6月2日を「カレー記念日」に制定した、ということだ。
本日は蒲田にある「タージ・マハール」という超ウマ、しかしあやしいというB級テイストな
カレー屋に行こうと誘われたのだが、残念ながら夜は用事があって断念。
近日中には訪れる予定ですのでお楽しみに。
そんなわけで、お昼に渋谷の「ムルギー」に行くことにした。
「ムルギー」がどんな店なのかは『ムルギーな雰囲気こそB級グルメの王道だった 』を読んでいただきたい。
オヤジなき後、あやしさは半減したものの、「ムルギー」の味は健在であったりする。
私にとってあの味は麻薬だ。
いや、私はタバコも吸わない人間であるからして、本当に麻薬がヤミツキにならざるをえないものなのか甚だ疑問ではあるのだが、なぜか渋谷に来るとムルギーに心ひかれてしまう。
死ぬまでにあと何回ムルギーを食べる幸せにありつけるのだろか…
などと考えるとこれはもう何が何でもムルギーを食べたい、いや食べなければいけないのではないか、という気にさえなるのだ。
こりゃ、麻薬というよりは強迫観念ですな。
私をそこまで思わせるムルギーの味とはどんなものなのか?
(カレー富士とルーの湖の図)
ムルギーカレーの形状は「富士山と河口湖」の風情を持っている。(ちなみに本当はエベレストのイメージらしいが)
私はさまざまなカレーを食しているが、これほど神々しい雰囲気を持った盛りつけをしているのはムルギーだけではなかろうか、と感じる。
とにかくご飯が山のように盛られている。
山のように、といっても大盛りという意味ではない。
本当に山の形状に盛りつけられているのだ。
そして山の麓にはカレールーの湖が広がっている。
湖には玉子の島が浮かんでいる。
うーむ、カレー美とはまさにこのことか。
カレー記念日に食べるにはまさにうってつけの逸品といえよう。
で、おもむろにスプーンで山を切り崩していく。
自然崩壊、な一瞬である。
ちなみにご飯を山状に盛りつけているのは、ご飯とカレールーを初めから混ざらないための配慮、ということだ。
よって、ご飯を切り崩してカレールーに浸けて食べるのが正しい。
カレールーはことことに煮込まれており、相当にスパイシー。
糸を引くように浮かんでいる油が曲者で、これがムルギー独特の味を醸し出している。
鶏肉がベースということだが、あらゆる食材が跡形もなく煮込まれている。
これだと具にまどわされることなく純粋にカレールーの味を楽しむことが出来る。
天ぷら蕎麦なんかにしてもそうなんだが、いったい主役は蕎麦なのか天ぷらなのかハッキリさせて欲しいと思う。
私の場合、あくまでもカレーが主役であって欲しいと願っているわけだから、ゴツイ具で邪魔されたくはないんである。
ルーの中にかすかに残る鶏肉やたまねぎなどの食感がまた良い。
口に入れるとジワジワと辛さが広がってくる。
相当に煮込まれているだけあって、かなりコクを感じる。
このジワリとくる辛さを和らげるのが、ちょろりと添えられているチャッツネである。
中盤戦からはこのチャッツネが威力を発揮してくる。
ご飯、カレールー、チャッツネが混ざり合って、複雑な味わいを醸し出してくるのである。
そして忘れたならないのが玉子の存在だ。
いまはなきオヤジさんがあれだけしつこく玉子入りを勧めるのもわかる。
玉子の上にはジグザグにケチャップが掛かっている。
あらゆる内容物がトロトロに煮込まれて形骸化している中で、
ゆで玉子の微妙な歯ごたえはありがたく
普段は歯ごたえなどを感じないゆで玉子が、こんなにも歯ごたえのあるものなのか、
あぁ、ありがたやありがたや、ってなもんである。
最後の方になるとご飯の残量が気になってくる。
さすがに山だけあって量も多い。
残り少ないカレールーをご飯に少量付け、残していた玉子と一緒にかき込む。
最後の至福の瞬間である。
このカレーの味はいったいなんなんだろうか?
私は食べる度に常々思う。
ラーメンと違って、なんとか風というカテゴリーでは区別できない。
仕事人みたいな味、とでもいうのであろうか。
「この仕事はムルギーにしかできない」と人々に言わせてしまうような雰囲気を持った味なのである。
過去、さまざまな人間がゴルゴ13の正体を暴こうとした。
私もムルギーの正体を暴くために今日もムルギーへと通った。
ゴルゴ13に関わった人間たちが命を落としたのと同様、
私もムルギーのためにどうにかなっちまうんじゃないかな、と思った次第である。
●「ムルギー」
渋谷区道玄坂2-19-2
営業時間 11:30~15:00 16:00~20:00 木曜11:30~15:00
定休日:金曜日