北陸・みちのく旅情編⑤ 盛岡麺の天国と地獄 ~盛岡「ぴょんぴょん舎」の冷麺とわんこそば~
山形では米沢牛をたらふく食べ、小岩井牧場ではソフトクリームとジンギスカンなんぞを食してみた。
「あー、観光客気分満喫だぜい」という軽口も飛び出す始末だ。
そんなわけで、盛岡。盛岡といえば冷麺。
なぜか冷麺を食べなければ損したような気分になる。
他に名物あったけ?と思うくらい頭が冷麺で満たされる。
盛岡の冷麺はうまい。
冷麺だけを食べて満足、ってな感じだ。
が、なぜか東京ではそうはいかない。
冷麺だけを食べに焼肉屋に行く、という習慣がないばかりか、そうしたいという気にさえならない。
冷麺はあくまでも焼き肉を食べた後の〆であり、どうしてもあそこの冷麺を食べたい、と思えるほど素敵な冷麺様にはそう滅多にお目にかかれない。
焼肉>冷麺の図式は変わらないのである。
が、盛岡ではこの図式が真逆になってします。
焼肉屋でもあくまでも冷麺が主役であり、焼き肉を食べたければそれはそれでいいんじゃないか、みたいな感じだ。
いや、実際には焼肉は美味なんだろうと思います。
なにせ周囲はブランド牛ばかりだ。
焼肉食べてもかなり幸せになれることだろう。
しかしである。うまい肉は東京でも食えるが、うまい冷麺は東京では食べられない。
よって観光客的価値観によると盛岡といえば冷麺、となるわけである。
で、訪れたのが「ぴょんぴょん舎」という焼肉屋。
なんともふざけた名前だが、オーナーがピョンさんという名前。なんでも盛岡冷麺というネーミングを考えたのがこの店らしい。
またもや元祖、である。
前回の横手焼きそばの場合にしてもそうだが、元祖というのは往々にしてそれほどのもんじゃない。
むしろ何度食べても食べ飽きない味、つまりジモティに人気の店の方がうまいのが常識であろう。
だいたいガイドブックというのは、メジャーな情報を追うものであるからして、元祖物、観光客に人気の店を載せるのが常である。
よってどんなガイドブックを見ても似たような店が載っているものであり、然るにその店は観光客たちの巣窟になっていたりもする。
観光シーズンになんて行くモンじゃない。
が、いまはGWの前…さらにこのぴょんぴょん舎はガイドブックに載っているような他店とはひと味違う、と聞く。
ならばいくしかない、ということ向かいましたよ。
メニューを見るともちろん焼き肉屋であるからして、いろいろな肉が並んでいる。
しかし、いまはそんなものはどうでもいい。
肉なら昨日、米沢牛を食ったし、昼にはジンギスカンも食べた。
いまは冷麺ですよ。
(やはり麺のツルツル感がたまらんす)
待ちかねた冷麺のスープをまずひとすすり。
やや甘めだが、ほどよく酢がきいており、キムチのピリリ感が引き締める。
コクがありながら、しかもフレッシュな感じだ。
そして麺をいただく。
おぉ、なんという素晴らしい喉越し…
これですよ、これ!
どういうわけかこの素敵な喉越しが東京の冷麺にはない。
ぴょんぴょん舎だけにど根性が入っているのだろうか?
根性、根性、ド根性のぴょん吉様といったところでしょうか。
具はキムチ、ゆで卵、胡瓜、リンゴ、肉、ゴマなど。
麺をすすって、スープ飲んで、具をつまんで…
いいねぇ、盛岡風流。
すっかり満足して、盛岡はやはり冷麺だなぁと独りごちていると訳知りの知人から連絡が入り、
「わんこそばの立場は!」
「ジャージャー麺の立場は!」と突つかれた。
そうそう盛岡の三大麺、わんこそばとジャージャー麺も忘れてはならない。
そんなわけで、続いてわんこそばにチャレンジ。
次から次へと器に蕎麦が盛られていくというあれは一回は体験したいと思っていた。
なぜ、少量ずつ盛らなければならないのか、いっぺんに出せばいいじゃないか、と思わないこともないがそれが盛岡スタイルだ。
ちなみに調べたところによると少量ずつ出すのは、いにしえのおもてなしスタイルからだという。
遡ること江戸時代に、祝い事の時に必ず最後に蕎麦をだしたらしいが、
多くの人に一度に食べてもらえるほど大量の麺は茹でられないから、ゆであがった麺を小分けにして次々に出すようになったのが始まりだという。
で、チャレンジするにはしましたが、はっきしいって厳しいです。
いくら遊び気分といえども途中からはいっぱいいっぱい。
食べるそばからホイホイですからね。
なんとか24杯ほど食べてギブアップ。
いやー、なんとも粋な遊びですわな。
(こんだけ食えばもうたくさんでゴンス)
ちなみに現在の記録は559杯。
世の中には猛者がいるもんです。
盛岡の麺に天国と地獄を見た…
●「ぴょんぴょん舎」
住所:岩手県盛岡市稲荷町12-5
電話:019-646-0541
じかん:11:00~22:30
定休日:無休