北陸・みちのく旅情編⑥ フカヒレ寿司の真実に迫る ~気仙沼「すし処 谷口」の苦悩~ | B級グルメを愛してる!

北陸・みちのく旅情編⑥ フカヒレ寿司の真実に迫る ~気仙沼「すし処 谷口」の苦悩~

さて、岩手から秋田、青森と抜け再び岩手のリアス式海岸を南下した後、ついに宮城県に辿り着いた。

目指すは気仙沼港

知っている人は知っていると思うが(当たり前か)気仙沼はフカヒレの街なのである。

フカヒレじゃなかったら気仙沼ちゃん

欽ドンではっちゃけていたあの人です。

自慢じゃないが私は気仙沼という土地を彼女のおかげで知った。

気仙沼から来たから気仙沼ちゃん。

快活な女の子でした。(いまは地元で旅館の女将さんをしてるそうです)


そんなわけで、気仙沼ちゃんで有名になった気仙沼だが、いまはフカヒレで町おこしをたくらんでいる。

寿司屋に行けばフカヒレ寿司が、食堂にはフカヒレラーメンにフカヒレ丼、中にはフカヒレソフトクリームなんてのもある。

フカヒレ、フカヒレ、フカヒレですよ。

特に名物といわれているのがフカヒレの姿寿司

フカヒレ様が握られた美しい姿は実に美しいだろうな、と思いつつ、寿司屋に向かった。

さすがに漁港だけあって、そこかしこに寿司屋がある。

どの店にしようか…

ネットで調査したところ、その日揚がった魚しか握らないというこだわりの店を選んでみた。

店の名は「すし処たに口」。

思えばこれが運命の選択だったのかもしれない。


まずは軽くツマミをいただく。

地魚の刺身に酒に合いそうな肴の数々…

おやじさんの説明を聞きながら、フムフム、なかなかいけますねぇ、などと舌鼓を打っていた。

で、しばらくして出てきたのがこれ。



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(なんともいえない滑らかな感触のマンボウ)


マンボウの刺身です。

回転寿司屋なんかではたまに見掛ける魚だが、これほどまでに瑞々しいのは初めて。

食感はまさに水の如し…というかほとんど水のような滑らかさが面白い。

おやじさんに聞くと「マンボウなんてのはほとんど水だからね。揚がったそばからどんどんどんどん水気がなくなっていくから、新鮮じゃないと食べられないんだよ」という。

「ま、こんな魚、地元の人は金出して食わないけどね」と付け加えたのが気に掛かる。

「いや、マンボウはよく網に掛かるから漁港にいけばたくさん落ちてるのよ。だから地元の人はみんなもらって食べてんだ。こんなの出してるからいろいろ言われるんだけどね」

とのたまった。


話を聞いてみるとどうもこの店は気仙沼の寿司組合から毛嫌いされているらしい。

まず他の店より値段がかなり高いということと比較的新参者だということとおやじさんの上昇志向が気に入らないとのことだ。

そりゃね、私だって出来れば銀座で勝負したいですよ」とオヤジさんは言う。

「気仙沼の魚をそのまま直送すればいい勝負が出来ると思うんですけどね」

うんうん、そうですよ、気仙沼ってところで結構いけるかもしれませんよ、などと調子を合わせているとこの店のオヤジの弟さんがやってきた。

なんでも気仙沼最高料理技術研鑚会というのを兄弟で主催しているらしい。

弟さんはフランス料理のガストロノミー認定料理人だという。

ガストロノミーとはフランス語で美食だとか美味しく食べる術、という意味があるらしい。

在仏8年のフレンチシェフなのだ。

で、弟さんはなんとか気仙沼にフレンチを広めるべく奮闘しているとのことだ。

その名も気仙沼フレンチ。

フカヒレばかりに飽きた地元のおばちゃんの支持をひそかに受けているとのことだった。

漁港にフレンチを、しかも地元のおばちゃん相手に根づかせるのはかなり難しいことと思うが、是非とも頑張ってください。


気仙沼最高料理研鑚会か…気仙沼の食材を使った料理を広めようと講演会などをしていると聞く。新しいチャレンジを試みるということは、他の店の人から見ると「一人だけ目立ちやがって」となりますな。出る杭は打たれる。

が、もっと衝撃だったのは名物のフカヒレの姿寿司をいただいたときのことだった。


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(見事なお姿のフカヒレ寿司様)


いやね、こんなもんホントは握りたくないんですよ。だってこれ加工品ですよ。生の魚がたくさんあるのになんで加工品なんか握らなきゃなんないんだって話ですよ」とオヤジさんは言う。

「一応、気仙沼はフカヒレで盛り上がろう、ってことになってるから握ってますけど、やっぱりお客さんには新鮮な気仙沼の魚を食べて欲しいんですよ」

確かにフカヒレ寿司の味は「ムムム…」であった。

フカヒレの淡泊な味がどうにも酢飯と馴染まない

フカヒレの味が際だつでもなくあれれ、ってなもんである。

やはりフカヒレはスープで煮てそのスープの味が染みこんだヤツが美味しいのであって、普通に戻しただけの素フカヒレは味がほとんどない。

「ね、美味しくないでしょ?こんなのありがたがって食べてる場合じゃないですよ」とオヤジさんは気仙沼の寿司屋らしからぬ発言を連発する。

これではフカヒレ姿寿司を看板にしている他の寿司屋から嫌がられて当然といえば当然か。


が、私は断然、「すし処たに口」を支持したい

話が盛り上がって、気仙沼復興プロジェクトなんて話にもなってしまった。

なので、宣言します。

気仙沼を盛り上げよう!いや盛り上げます…いつか、きっと、必ず…

私のB級グルメ魂を賭けたプロジェクトが今始まろうとしていたのだった…


余談

次の日、漁港の市場をのぞいたら鮫の心臓を見つけた。

気仙沼では有名な食材でモーカサメの心臓を食べさせるモーカの星、という。


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(さすがに心臓だけあって、ハート型をしている…結構、デカイです)



一口食べれば精力絶倫、という代物だ。

ちなみにたに口のオヤジさんは「別にウマイもんじゃないからうちには置いてないよ」と言っていた。

気仙沼最高料理研鑚会の主催者はアンチ気仙沼食材の人なのであった…



●「すし処 たに口」

住所:宮城県気仙沼市河原田2-5-12

電話:0226-21-3038 

営業時間:11:00~14:00

       17:00~23:00

定休日:水曜日