デカイ、厚い、うまいは成立するのか? ~大森の超デカとんかつ「丸一」~
とんかつというものは衣のサクサク感だとか、肉のジューシーさだとか、衣と肉の密着感だとか、いろんな要素がよい出来にないと残念な結果に終わることが多い。
よって、肉の質以外の部分では料理人の技量というのがとても重要になる。
食べたときに肉汁がうっすらと口腔内に広がる柔らかさ、衣と肉の一体感…そんなとんかつに出会ったときはちょっと幸せであったりする。
そんな幸せなとんかつというのは適度なサイズ、というのが常識である。
あまりにも大きなとんかつというのは、揚げる時間が難しく中まで火が通っていなかったり、逆に揚げすぎになったり、衣が肉からポロポロと剥がれてしまったりとがっかりさせることが多く、とんかつ業界ではデカイとんかつに美味ナシ、といわれているくらいなのだが、どうも大森にそんな常識を覆すとんかつがあると聞いて出掛けてみた。
店の名は「丸一」。
どこにでもあるような風体をしたとんかつ屋である。
店はオヤジさん、おかあさん、そしておそらく息子さんの3人で回している。
メニューには170グラムと250グラムのとんかつ定食、ひれ定食と300グラムのロースカツ定食が並んでいる。
170グラムでも普通に十分な量である。いや、普通のとんかつ屋からすれば一回り以上、デカイだろう。
デカイ=美味くない、という図式がふと頭に浮かび、様子見のため170グラムのとんかつ定食にしてみた。
肉厚、デカイだけに揚げ時間も10分以上たっぷりかかるとのことで、お新香とビールで一杯やりながら待った。(とんかつが揚がるのを待つ間の一杯が幸せであったりする)
待ちながらカウンター内のオヤジさんの仕事をなんとなく見ていた。
まず、6、7センチはありそうな分厚い肉を2つに切る。
おそらくこの元の肉が300グラムなのであろう。
次に肉の隅の方に鉄串を通す。
鉄串に串刺しにされた肉に小麦粉をさっと付ける。
そのまま卵の中に浸し、油の中に放りこむ、といった感じだ。
で、大きな鍋の中でグツグツと何枚ものとんかつが揚げられている。
あまりに大量のとんかつを同じ鍋で揚げているので、繊細、というものからはほど遠い感じがする。
むしろ大雑把といってもいいくらいの揚げ方である。
「大丈夫か…」
ジューシーなとんかつを揚げるためには繊細さが要求されるのではないか、
揚げすぎると衣が焦げ焦げになるのではないか、などとちょっと不安になってみる。
そして、ついにとんかつが揚がった。
デカイ…
(これが170グラムのとんかつ定食)
隣のビールの入ったコップと比べてみればわかると思うが、一番デカイ真ん中の肉などはゆうにコップの大きさを越えている。
果たしてどんな味なのか…
箸で肉をつまむ。
ダメなとんかつはこの時点で衣がポロポロと肉から剥がれ始める。
おっ、衣はピシリと肉についている。まずは合格だ。
味はどうか?
ムムム…なかなかにジューシー。
雄に4,5センチはあろうかという肉厚ながら肉はうっすらとピンクがかり、しかも噛みごたえが柔らかい。
ぱさついた感じがしないのだ。
肉質の良さも伺える。
定食には豚汁と大きなお茶碗、いや小さめの丼に山盛りのご飯が付いている。
しかもこのご飯は釜炊きをしているので、ごはんにつやがあって美味。
とんかつ屋というところはご飯とかキャベツのお代わり無料の店が多いが、この店ではおかわりなど必要ないくらいの量が既にある。
これで1300円か…安
ふと、つれのとんかつを見ると焼き色が違うことに気がついた。
やはり焼きかたが大雑把なのかもしれない。
あれだけ大量に鍋の中にとんかつが投入されている状況では、こんなことがあってもおかしくはないのだろう。
注文を受けたからと言うよりもむしろお客さんが来ることを見越して、次々に揚げている節もあったから、それはそれで納得してしまう。
(肉厚、ピンキーなロースかつ)
別の考え方をすれば、焼き加減が違う2つのとんかつを味わえたことになるからこれはこれで幸せである。
ソースはノーマルな濃厚ソースに、辛口の2種類あり、どちらもさっぱりとした味わいである。
2×2で4倍美味しい…ってことはないはな、さすがに。
しかし、こんな肉厚でどデカとんかつをここまで美味に食させてくれるならば文句はない。
こんなに量が多くなければちょくちょく食いにきてもいいのだが…
やはり大きすぎるとんかつは難敵なのであった…
●「丸一」
住所:大田区大森北1-7-2
電話:03-3762-2601
営業時間:11:30 - 14:00 / 17:00 - 21:00(但し、8時くらいには売り切れになる)
定休日:水曜日