エンジョイ立ち飲み 笑顔の絶えない陽気な酒場 ~渋谷「富士屋本店」はお気楽天国~
立ち飲み屋という場所に気軽に入れるようになったのはいつのことだろう?
10代で酒を飲み始めて以来、様々な飲み屋へ足を踏み入れた。
敷居の高い会員制割烹、ガンコ親父が仕切る店、競馬場付近の飲み屋…
それなりに緊張したり、おどおどしたこともあっただろうが、それも経験の一つ、とでも思っていたのではないだろうか。
ただどうしても入りにくい店というのがあった。
それが立ち飲み屋である。
若い身空ではどうにも居心地が悪く、場違いだという思いが強かったからだ。
それになにか怖い。
どんなに経験値を積んでも、立ち飲み屋だけは大人の聖域。
いつの日かは立ち飲み屋に、との思いを胸に抱いて生きてきたわけだ。
しかしながら、いつの間にか立ち飲み屋が怖くない場所になっていた。
これはちょっとしたカルチャーショックである。
たとえば、子供の頃、相撲の横綱というのはとてつもなく偉大な存在、と思っていた。
輪島に北の湖…
北の湖は嫌いだったが、輪島は贔屓。
黄金の左に一喜一憂していたのを思い出す。
それがである、気がつくといつの間にか自分が横綱よりも年齢が上になっていた。
貴乃花、若乃花の時代。
自分も大人になったんだなぁ、としみじみと思ったものである。
立ち飲み屋にすんなりと入れるようになった自分にも同じことを感じる。
「オレも大人になったんあだなぁ…また一つ階段を上ったなぁ」と。
そんなわけで、一人でふらりと立ち飲み屋なんかに行くことが増えたわけだが、中でも気に入ってるのが渋谷の「富士屋本店」。
ここは立ち飲み屋にありがちな閉鎖的な雰囲気がなく、オープンな感じで、一人でボッと過ごしていても結構、楽しめる。
(オープンで和やかな立ち飲み屋)
立ち飲み屋というとどうにもうらぶれた感の強いオヤジたちの巣窟、といったイメージがあるが、
ここ富士屋本店は、渋谷にありながら地元色が強いというか、多種多様な人々がいて人物観察をしているだけでも楽しめる。
まだ立ち飲み屋デビューしていない人はまずこの店から始めると気後れしなくてすむのではないだろうか。
なにせ広い。
そして、地下という立地のせいもあるのだろうが、渋谷の喧噪とは無関係で、なにかオヤジのための楽園的なムードにあふれている。
若者がいないだけでこんなに安心するようになるとはそりゃ、立ち飲み屋にも気後れしなくなるわけだな、とふと思ったりした。
メニューはほとんどが200円から300円台。
名物メニューはマグロの中落ちにハムカツ、ハムキャ別などなど…
ちなみにハムキャ別とはたっぷりの千切りキャベツの上にこれまたたぷりのハムを乗せたという一品で、量がかなりある。
(名物のマグロ中落ち。量も十分で安いっす)
面白いのは支払いシステムで、立ち飲み屋にありがちなキャッシュ・オン・デリバリーは普通にしても、
たいがいの客が1000円札を1枚ないし2枚にぎりしめている。
おつりをそのままテーブルの上に置いて、それを使い切ったら食べ飲み終了と決めているようだ。
ので、テーブルの上には硬貨がそこかしこで積まれている。
私の予算も今日は1000円。
この後、渋谷で友人たちと飲む予定なのでその前に軽く一杯、というわけだ。
立ち飲み屋の正しい使い方であろう。
生ビール(450円)、中落ち(350円)、ハムカツ(200円)の3品で締めて1000円という寸法だ。
(なぜか懐かしい味のするハムカツ)
さっと飲んでさっと立ち去っても良し、
仲間とまったり過ごしても良し、
立ち飲み屋には立ち飲み屋の人生が、
そして、オヤジどもにはオヤジどもの人生があるってもんだ
ねぇ、お客さん
と懐かしのモカ を思い出す。
オヤジの楽園が渋谷の地下にあるのである。
●「富士屋本店」
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町2-3 B1F
電話:03-3461-2128
営業時間:17:00-21:30迄(21:00L.O)
定休日:日・祝・第4土曜