夏の番外編 真夏のバーベキューは命懸け ~地獄の多摩川CUPの思い出 その1~
いまだ東京は梅雨明けしない鬱陶しい天気が続くが、夏本番間近、ということで思い出されるのが多摩川CUPの出来事である。
多摩川CUP…あんなアホみたいなイベントはもう2度とやらんだろうな…と思うくらい正気の沙汰とは思えない出来事であった。
いま思っても若いって素晴らしい…いや思いっきりアホだな、と思う。
これはアホなことに命をかけたバカ男どもの話である。
さて、話は15年くらい前に遡る。(思いっきり古い話でスンマセン)
世間はねるとんだとか合コンだとかで思いっきり盛り上がっている頃であった。
多摩川べりで生まれ育った友人Tとその隣に住むD通マン I 氏は考えた。
「多摩川で巨大合コンをやろうではないか」
D通 I 氏の顔の広さ、友人Tの業界関係者など来るわ来るわで様々な人種が100人近く詰めかけた。
川っぺりでの大宴会は飲めや歌えの大騒ぎ。
各地でバーベキュー職人が肉を焼いたり鉄板焼きをしたりと活躍している。
思えばここまでが平和な時間だったのかもしれない。
(平和な多摩川がこれから地獄絵図と化す)
これだけ大人数がいればちょっとした揉め事も起こる。
鉄板焼きでせっせせっせと焼きそば作りにいそしむS氏。
かれこれ30分近く味付けやら焼き具合やらに注意して作っていた。
周りにはその丹誠を込めて作られた焼きそばを待つ人々であふれかえっている。
「もうちょっと待って。最後の味付けが肝心なんだ」と言うS氏。
ソースやらスパイスやらを注意深く投入していく。
いよいよ完成間近、という段になって、酔っぱらったバカ男Mが乱入してきた。
「焼きそばなんてのは豪快な味付けが一番美味いんだ」とかなんとか言うとそのバカ男Mは飲んでいたビールをドバドバと焼きそばの上にかけてしまった。
「あっ…」
皆が凍り付いた。
ひたすら焼きそば作りに専念していたS氏も何が起こったかわからない様子だ。
そのバカ男は「これでうまくなるぞ」とか得意げになっている。
しばしの沈黙。
そして周りにもわかるくらいにフツフツと沸いているS氏の怒り…
私は思った。
「このバカ男は救いようのないだけでなく、命知らずの野郎だ」と。
S氏は香港映画で主役を務めるほどの肉体派アクションスター、そしてその横にはジムトレーナーも務める旧UWFのレフェリーW氏もいる。
彼らの顔が血走っている。
危険を察知した友人TがS氏をなだめに入る。
しかし、時すでに遅し。
「あいつを殺す…」
静かにS氏がつぶやく…
さすがのバカ男も周りのしらけた視線とただならぬ雰囲気を察したのか、
「なんだよ、せっかくうまくしてやったのによ」と捨て台詞を残し、そそくさと人混みに紛れてしまった。
私も殺す、とそう思った。
そしてそれはもっと後に実現することになる。
そう、生死をかけた地獄からの生還の後に…
(続く)