やはり不夜城的な怪しさ充満 ~歌舞伎町「上海小吃」の中国社会~
「B級グルメとはどんなモンなんですか?」
と良く聞かれる。
私の定義では
1.ただならぬ雰囲気を持つ店
2.インパクトの強い料理
3.怪しい店主
この3つの要素のどれかがあれば、「B級グルメ」と認定している。
もちろん、このすべてを兼ね備えた最強のB級グルメも存在しているわけで、
そんな店に巡り会えたときはなんともいえない感動があったりする。
歌舞伎町の小さな路地の入り組んだ場所にある「上海小吃」も、1のただならぬ雰囲気だけなら、界隈きっての店ではないだろうか。
私がこの店を訪れることになったのはいまから10数年前のことであるが、
その時の印象が未だに脳裏にこびりついている。
ただでさえ怪しい歌舞伎町…その中でさらなる怪しい小さな路地を入っていく…
何が起きても不思議ではなく、一般ピープルなら決して足を踏み入れないような場所である。
まさに上海の裏路地を彷彿させる雰囲気…おどろおどろしささえ感じるさびれ感がたまらない。
ただならぬ妖気が漂う中、「上海小吃」はようやくその姿を見せるのである。
(昼なお怪しい店の前。夜はもっと怪しい…)
店の前ではじゃぶじゃぶと食器を洗っている店員がいる…
この店は細長い4階建てのビルになっているが、おそらく洗い場のスペースがないのであろう…
店の前で食器を洗う風景なんかは観光客がほとんど訪れない上海の路地でよく見かける。
そして店のトレードマーク的存在となっている1組のカップル人形、中国で言うところの童男童女が入り口に鎮座ましましている。
店に入ると壁一面にメニューがベタベタと張られているのに驚く。
とにかく数が多い。聞いてみたところによるとざっと600種類ほどのメニューがあるとのことだった。
蛙なんてのはかわいい方で、蜂、うさぎ、豚の脳みそ、犬、はてはサソリの唐揚げなんてものもある。
中国でよく見かける酔っぱらいエビもあった。
(壁一面に並ぶメニュー。ようわからんです)
これは生きたエビを紹興酒に漬け込んだもので、中国では目の前で実演される。
ボールのに入ったエビの上からジャバジャバと紹興酒がかけられ、ふたを閉められる。
ボールの中で狂ったようにエビがバシャバシャと飛び回る姿はまさに断末魔のごとし。
あまりの狂気に見ているだけで痛々しい限りだが、なにごともなくその断末魔エビを食す人々もGREATそのものに映った。
今日は鍋物をいただくことにした。
ご存じ麻辣火鍋。激辛&スパイシーな2色のスープが入った鍋にいろいろしゃぶしゃぶして食べるという代物だ。
(なぜか、みな辛い方のスープをつけたがる)
料理を待っている間、ふと入り口でなにやら揉め事が起きている。
どうも予約をした団体が席がないと怒っているようだ。
確かに席は満席であった。
近年、いろいろな雑誌で取り上げるようになって一般ピーが恐れずに来るようになったみたいだが、
10数年前には考えられないことである。
と、さらに予約客がやってきて、席がないことに腹を立てて帰ってしまった。
うーむ、この店に予約なんかをいれても無駄、ということだ。
確かに食事は予約をしていくもの、などと思っている輩のが来るような雰囲気の店ではない。
予約がちゃんと取れてないと言って文句を言うなんてのはまさに論外。
雑誌に取り上げられたからといって、普通の店だと思ってもらっては困るのである。
さて、鍋物は牛、豚よりも羊が気分。
具は野菜、海鮮類、練り物などが多数あり、いろいろな具が楽しめる。
普通の人は白菜だとかネギだとかエビだとかイカだとかを注文することだろう。
さすれば美味な鍋が楽しめる。
が、メニューには珍しい具、というコーナーがあって、
スッポン1匹、牛のペニス、かえる1匹、豚の脳みそなんてものがある。
私はチャレンジャーではあるが、ちとこの具には考えてしまう。
見ると鮮中鮮鍋というものもあって、
それはすっぽん、上海蟹、蛙、田うなぎなどの特製鍋とあった。
これは見た目のインパクトが強烈だ。
B級グルメの2の用件も満たしている。
(この具の取り合わせは強烈だ。特にカエルが…)
なかなか美味な上海テイストの家庭料理が味わえる店だけに普通に使いたい店なのだが、
やはりこういう店には怪しさを一緒に堪能できる人間と来たい。
「わー、こういう雰囲気のお店、おもしろーい」とか「こういう店ってスノッブだよね? とか、わーきゃー&したり顔系の人間とは来たくない。
B級グルメを楽しむにはB級グルメに対する心構えを持った人間と来るに限るのである。
●「上海小吃」
東京都新宿区歌舞伎町1-3-10
電話:03-3232-5909
営業時間:18:00~5:00(月~土)
18:00~2:00(日・祝)
定休日:無休