甲府のほうとうは放蕩息子なのか伝家の宝刀なのか? ~昇仙峡「ほうとう会館」の無防備会計~
紅葉シーズンには一足早いが、甲府の昇仙峡へとドライブに行った。
紅葉シーズンは渋滞で連なる山道もいまの時期ならススイノスイ。
川沿いの奇岩やら滝やらが見もので、まぁ風流な景色である。
そんなわけで、ロープウェイに乗って、山にも登った。
富士山が見事な姿を現していた。
ロープーウェイからは素敵な風景はまったく見られない…
ちともの悲しい。
(風光明媚な昇仙峡の図)
というわけで、一通り見物した後で、昼食タイムがやってきた。
昇仙峡の最上部には「ほうとう会館」なる建物があって、各種ほうとうを販売していたり、食事処があったりする。
なにかないかと探していたらほうとう饅頭なるものを発見。
実演販売でできたてのホカホカをいただく。
饅頭のてっぺんにはかぼちゃがへそのごまのように置かれ、中身は野沢菜、椎茸、切り干し大根などがほうとうの麺でくるまれている。
ほうとうの味がする、なんてこたぁーない。
和風肉まんといった感じである。
(中身の具がほうとうの麺にくるまれている)
しかし、この饅頭を見てもほうとうというのは具を食べるもの、という気がしないでもない。
過去に何度か本場モンのほうとうを食べているが、主役の麺の存在感が薄いというか、
名古屋名物・みそ煮込みうどんだとか鍋焼きうどんなんかと比べると麺が具の引き立て役、となっているような気がする。
しかし、ほうとうの麺は平打ち極厚、幅広の麺。他の麺料理から比べても存在感があってしかるべきなのだが、
「ほうとうは麺じゃないんだよな、具だよ、具」なんて思いに駆られてしまう。
ほうとうとはそもそも武田信玄の時代に陣中食として甲斐の国に広まったものらしいから、味噌仕立てのスープにそのへんにあった野菜やら山菜やらをぶち込んで作っていたのであろう。
そういう意味ではみそ汁のぶっ込み料理withほうとうというのも納得できようというものだ。
(きのこほうとうのお姿。バカデカのナメコがすごかった…)
ふとレストランの入り口を見たら「ほうとう」「放蕩」「宝刀」「餺飥」と書かれた紙が張ってあった。
山梨県民にとってほうとうはまさに伝家の宝刀であろうが、主役が具となれば放蕩息子のごとし…
本来は餺飥(はくたく)という奈良時代の食べ物らしく、稲作が困難だった土地柄で発達した甲斐の国ならではの麺料理。
名古屋人がきしめんに対して誇りを持っているのと同様、甲斐人もほうとうに対しては並々ならぬ誇りを持っているだろうことはひしひしと感じる。
「うどんみたいな生ちょっろいもんとは違う、硬派な食べ物なんでぇい」という意気込みは感じますが、
「UDON」ならぬ「HOUTOU」なんて映画になるほどロマンがある食べ物ではないですな、残念ながら。
と、最後に会計をする段になってまたまた驚かせられた。
レストランは2階にあって、会計は1階だというのだ。
ここはレストラン専用の建物ではなくて、1階にはおみやげ物やらが売っていて、普通にたくさんの人が出入りしている。
しかも会計処というのが、レストランの出入り口とはかなり離れた場所にあり、
あれでは素通りして帰ってもらっても結構です、といってるようなもんであると思った。
実際、混んでいればまったくわからないし、ただ食いして帰る人も多々いるだろう。
だが、きっとほうとう会館側もそんなことは百も承知なのではないかと思う。
「我々は甲斐・武田の末裔よ。人々はみな善の心があるはずだ。それを信じるわい、ガハハハ」
と寛容な心で見守っているに違いない。
しかし、その無防備さが武田の滅亡につながったことを忘れちゃいかん。
無防備もほうとうほうとうに、なんてね。
●「昇仙峡ほうとう会館」
山梨県甲府市猪狩町393
電話:055-287-2131
営業時間:8:30~17:30
8:30~16:30(冬期)
定休日:無休