築地を揺るがす激安寿司店の浸食…築地寿司屋の未来はいかに!
ここ2週間ほど連日締め切りに終われて四苦八苦していたがようやく一段落。
その中の一つに「一個人」という雑誌の取材で築地の寿司屋を4軒ほど回るというのがあった。
酒を飲みながらまったりとくつろげる店、ということで編集部お薦めの店にお邪魔したわけだ。
で、築地をポロポロと歩いていると新参者の寿司店の看板だけがやたらと鼻につく。
一言でいうと派手、なんである。
それも築地場外市場には似つかわしくない派手さである。
原色ギトギトの派手な外装ややたらとデカイ看板にはハッキリ、閉口してしまう。
(築地交差点に佇む巨大看板…自己主張しすぎである)
「おいおいここは築地場外だぜ、歌舞伎町と間違えてんじゃねぇぞ」と言いたくなる。
そもそも場外には数多くの寿司屋や海鮮丼物の店があるが、そのどれもが場外の景観を損ねる、なんて店作りはしていない。
確かに昼時なんぞは客引きの声も高らかであるが、それも場外の名物の一つ。
威勢の良い商売人の声が響き渡ってこそ、場外の昼時ってなもんだ。
24時間営業はいいが、自分の店だけ目立てばいいと思っているような店のあり方は大いに反省してもらいたいもんである。
そんなわけで、訪れた店の1軒に「魚河岸千両」という店があった。
ここは築地にうどん屋やら丼屋やら寿司屋を6店舗経営している虎杖グループの1軒だ。
このグループの店はオープンな雰囲気というかほとんど路面に店を出しているような感じである。
もともとある路地やら倉庫をうまく生かした作りになっていて、昔ながらの築地を肌に感じられるところが特徴であろう。
しかし、こんなスペースによく店をつくるもんだと感心させられる。
夜の築地場外で開いている店は限られているだけに貴重な存在かもしれない。
2012年に築地市場は豊洲へ移転するが、その後、場外がどのようになるのか心配する向きも多い。
原色ギトギトの派手な店に浸食されてしまうような築地場外は見たくないだけに既存店には頑張ってもらいたい。
そういう意味で古き良き築地を偲ぶことができ、しかもいまの時代を取り入れた虎杖の店なんかは築地場外の未来を考える上で参考になる。
もう1軒、同じ虎杖グループの「築地黒瀬 鮑」という店にも行った。
こちらは「魚河岸千両」のカジュアルな雰囲気と違って、本格志向の寿司屋。
表通りから細い通路を突き進んだドンツキにあるのだが、その通路はまるでタイムトンネルのように感じる。
通りを抜けた後に広がる空間が、なんだか懐かしい気分にさせてくれるからだ。
内装は江戸時代の寿司屋を意識したという。
竹をふんだんに使い、黒塀の雰囲気を醸し出している。
握られる寿司ネタも天然物ばかり、でもって値段は築地価格で、銀座と比べたら格安だけにちょっと趣向を凝らしたいときなどにはいいかもしれない。
慌ただしいイメージの築地にもなかなかに落ち着ける店があるのか、という感じだ。
夜の場外には昼の喧噪も面白さも何もないが、原色ギトギト寿司屋に対抗すべく頑張る店があることは知っておきたい。
ちなみに「一個人 1月号」は寿司屋の大特集。11/26発売なので、ご興味のある方はご覧あれ。
●「魚河岸千両」
東京都中央区築地4丁目10-14 樋泉ビル1F
電話:03-5565-5739
営業時間:11:00~14:30、17:00~22:30(月~金)
9:00~21:00(土、日、祝日)土曜日と連休前日は22:30まで
定休日:無休
「築地黒瀬 鮑」
東京都中央区築地4丁目10-16 築地四丁目町会ビル1F
電話:03-3544-1244
営業時間:17:00~23:00(月~金)
17:30~22:00(土)
定休日:日曜・祝日