新蕎麦と紅葉と奥多摩と風流 ~奥多摩「一心亭」で小滝を眺めるの巻~
今年も東京では紅葉が遅れている。
この時期、まだ青々としている木々を見ていると日本の四季的情緒ってもんがどうなっちまうのか心配になる。
それはすなわちグルメの世界にも影響が出ることであって、紅葉を見ながらのんびり蕎麦、なんてこともおあずけになってしまうわけだ。
新蕎麦の時期に合わせて、紅葉狩りと蕎麦を楽しむ、なんてことをしていると日本人に生まれて良かったな、とかつくづく思ったりするもんだ。
が、新蕎麦の時期はやってきたが東京に紅葉の知らせはやってこない。
いったいいつくるのか?
ゴドーを待つ心境で待ってはみたが、シビレを切らして奥多摩へとGO!
案の定、奥多摩には緑が色濃く残っている。
紅葉にはまだ早い。
チャールストンにもまだ早い(by 田原俊彦)
例年なら色鮮やかな紅葉に染まる奥多摩周遊道路も御岳街道もただの道と化している。
よって風景に目を奪われることなくスイスイと車を走らせられる。
安全運転には良いです。
奥多摩の銘酒「澤ノ井」の看板が道々にあるせいか、ちょっと喉を潤してみたくなる。
飲酒運転はいけません。
とかなんとかやっているあいだに目指す蕎麦屋へと到着した。
JR青梅線の終点より二駅手前の鳩ノ巣駅前にある「一心亭」という蕎麦屋だ。
このあたりは鳩ノ巣渓谷という奥多摩屈指の景勝地であり、紅葉シーズンには人々がわんさかと押し寄せる。
が、今日は平日。おじじとおばばがスケッチにいそしむ姿がポツポツと見えるくらいだ。
のどかな奥多摩のひなびた午後…ってな感じだろうか。
「一心亭」は渓谷の麓に位置し、全面ガラス張りで風景を堪能できる店構えである。
窓からは横を流れる小川や落差数メートルほどの小滝が見える。
ベストポジションは小滝前の座敷か。
水上の滝と名付けられた小滝を見ながら新蕎麦をすする…
うーむ、風流です。
(小さいながらなかなか風流な水神の滝)
いや、蕎麦をすするってのは違うな…
ここの蕎麦はかなりの極太で噛み切る、という感じだろうか。
繊細な味を楽しむというよりは、ゴッツリとした蕎麦の食感を味わうもんのようだ。
車でなけりゃ、川魚の塩焼きを肴に一杯やりたいところだ。
本場で飲む澤ノ井もさぞかし美味だろう。
店にはそんな幸せを求めてやってきた輩たちが、頬を赤く染めてグビグビとやってやがった。
「チッ、お前が紅葉してどうすんだよ」と心の中で突っ込んでみる。
オレはこんな紅葉を見に来たんじゃないねぇ、とかわけのわからんことを思いながら店を後にした。
奥多摩に紅葉が訪れるのはまだ先の話である。
●「一心亭」
東京都西多摩郡奥多摩町棚澤398
電話:0428-85-2231
営業時間:11:00~16:00
定休日:火曜