下町を巡る極上酒場の旅 その② ~八広 「日の丸酒場」の謎のすすこ編~
続いてやってきたのは京成押上線の八広駅そばの「日の丸酒場」だ。
都内の人でも京成押上線などというものがいったいどこからどこまで走っているのか謎なくらい下町な場所である。
そんなわけで、駅の近くにあるのだが都内とは思えぬ寂しさが立ちこめている。
これが京成線沿線の風景なのであろう。
なにせここいらは木造家屋が恐ろしく密集している地域で、ひとたび火事や地震が起きれば連鎖的に被害が広がるという危険地帯なんである。
華やかさとは無縁の場所といってもいいだろう。
(下町の大衆酒場な店である)
というわけで、シンと静まりかえった街をとぼとぼと歩き店の前についた。
ガラリと引き戸を開ける。
店の中央に厨房があり、中では屈強そうな男たちがきびきびと動き回っている。
下町酒場通のK氏に聞くとなんでもこの店の初代は旧陸軍の近衛連隊にいたとのことだ。
よって「日の丸酒場」なり。
店員のきびきびとした動きも軍隊式トレーニングの成果なのかもしれない。
メニューを見る。
にこごり、肉豆腐、とんかつ、魚フライ、しめさばなどを注文。
とんかつなどはこれで300円だ。
(銀皿がなんともいえぬ味わいを醸し出す)
飲み物はもちろん焼酎ハイボール。
キクスイの炭酸を入れたグラスに元祖酎ハイの素をいれたシビレる逸品である。
このハイボールを飲むためだけに店に来てもいいくらいだ。
変わったところではこの手の店では珍しいビーフシチューなどもある。
とりあえず頼む。
他には「すずこ」なるものもあった。
これも頼む。
何が出てくるかわからないのが楽しみなのである。
ビーフシチューは老舗洋食屋で食べるような懐かしい味わい。
大衆酒場でビーフシチューとは初の試みであるかもしれない。
が、予想に反してこれがなかなかハイボールと合う。
シチューをチビリチビリとすすりながら、ハイボールを飲むというのが
こんなに気持ちがよいとは知らなかった。
(洋食屋チックなビーフシチュー)
で、やってきたすずこがこれだ。
「おい、誰だ、いくら頼んだの?」とK氏は言ったが、よく見るといくらではなくすじこであった。
「すじこ……すずこ……」
なるほどねぇ、としか言いようがなかった。
でもって、とんかつよりも肉豆腐よりも高い500円であった。
うーむ、謎の設定である。
下町テイストなハイボールをガンガン飲みながら、大衆酒場でのひとときは過ぎていく。
次なる店はどこへ行こうか…
●「日の丸酒場」
東京都墨田区八広6丁目25-2
電話:03-3612-6926
営業時間:17:00~23:30
定休日:不定休