B級グルメを愛してる! -11ページ目

熱海的B級グルメ道

熱海が暑い…いや熱い。

夏だから暑いのはあたり前なのだが、最近の熱海は温泉の街、というポジションから脱却しつつある。

熱海海岸には白い砂が敷き詰められ、海岸隣の熱海マリーナにはずらりとヨットが並んでいる

海岸のデッキを散歩していると「熱海」ではなく「ATAMI」といった横文字の世界観が広がる。

夏には毎週のように花火大会が開催されるし、海岸沿いには温泉宿ではなく新しいホテルが建ち並んでいる。

熱海=温泉という概念は過去のものであるようだ。


というわけで、熱海を訪れたついでにB級グルメを探してみた。

つらつら歩いていると熱海商店街を抜けたあたりにわさびソフトクリームなるものが売られていた。

辛いです、と断り書きがあったが、味はまさしくワサビそのもの

静岡県はワサビ処として有名なので、あってしかるべしな商品であるが、

食ったそばから喉が渇いて仕方なかった。

暑いからアイスを食べる、でもって、喉がヒリヒリするので何か飲みたくなる…

悪の食物連鎖みたいだな、こりゃ。


kuronbo

(素敵な看板だ。イラストがダメを押しているのが良い)


ワサビアイス屋のすぐ先にはスナック喫茶くろんぼという思い切った名前の喫茶店があった。

看板にはご丁寧にもくろんぼさんのイラストまで描かれている。

ま、ちびくろさんぼも復刊したことだし、一応、アリなんでしょうね。

ちなみにくろんぼの近くには居酒屋あそこという店もあった。

「あ、そこね」とタクシーの運ちゃんに指示するのとは違う。

「あ、そこ、そこよ、もっと~」のあそこである。

私はこういうネーミングセンスの店が好きだ。

横浜の中華街にある喫茶ブラジルとかもいい。

なぜ中華街にブラジルなのか?

一瞬でもそう考えさせたら勝ちというものだろう。

今回、「喫茶くろんぼ」は訪れられなかったが、機会があったら入ってみたい店である。

くろんぼコーヒーなんてものがあるのだろうか?

真っ黒なコーヒー。

いやコーヒーはそもそも黒いんですけどね。


そのまま熱海商店街を突っ切って海まで来るとソープ街があったりするのだが、

その近くに謎の中華料理店がある。

一緒に行った友人がこう言うのである。

「もう10年近く前になるけど、彼女とそこの店に入ったら『兄ちゃん、拳銃あるんだけど買わない』と店のバアさんにしつこく言われて、慌てて逃げてきた」と言うのだ。

ちなみに友人は本当のことしか言わない人として有名である。

よって限りなく事実であると思ってもらっていいだろう。

その店はいまも健在だ。

危なくて名前出せないけど…


そんな熱海は私は好きだ。

(こんなシメでいいのか?)



●「スナック喫茶くろんぼ」

 静岡県熱海市咲見町3-1

 電話:0557-82-2484

飲み屋系ラーメン屋の真骨頂! ~経堂「はるばるてい」の酒魂~

飲み屋系ラーメン屋、というジャンルがある。

酒のツマミが充実していて、

酒の品揃えもなかなか、というラーメン屋だ。

飲んだシメにラーメンを食べたくなることも多いことと思うが、

最後にこの手を訪れるとさらにまた飲んでしまう、

なんてことになりがちだ。

しかし、それもまた人生。

ラーメン屋でゆっくり飲めるというのもまた幸せというものだ


かって、ラーメン屋で飲むといえばビールに餃子だった時代に

ラーメン屋も飲み屋である、と教えられた店がある。

経堂にある「はるばるていというラーメン屋だ。

支那ソバ屋としても上質なラーメン屋であるが、

なんといってもツマミ最高、日本酒最高

帰りがけに一杯、なんて気分の時は素敵な飲み屋としてツカエるのである。


よって、夜に訪れると酒を楽しむ輩でにぎわっている。

ラーメン居酒屋的な雰囲気ですな。

ちなみに狭い店内は以上に回転率が悪くなります、ハイ。

ツマミにはラーメン屋らしく、くんたま(茶蛋というお茶で煮た玉子)、チャーシュー、葱鶏、メンマ、きゅうりなどなど…

これらすべて自家製なのがうれしい

これらが絶妙な味付けで日本酒にberry much!

チャーシューは自家製オーブンで焼き上げた逸品。

ジューシーな高級ハム、みたいな味わいである。

昔の焼き豚を思い出す。

香油がきいたきゅうりや葱鶏も美味…

ラーメン食べるの忘れちゃいます。


そしてなんといっても圧巻なのが日本酒の品揃えである。

およそラーメン屋らしくないその品々は

無名ながらもかなりいける。

季節に合わせて「しぼりたて」や「冷やおろし」、「にごり」などが用意されている。
しかもそのどれもが1杯500円というのもうれしい。


koumen

(これだけでも美味そうな香麺)


シメには香麺が定番か。

麺と具(ネギ、きゅうり、ミミガー、刻みチャーシュー、のりなどなど)の入った丼と

スープの入った器、それに唐辛子の薬味の3つを混ぜ合わせていただく。

まず薬味と麺、具を混ぜ合わせ、しかるに海苔を手でちぎり、しばしいただく。

適当なところでスープを入れて2度美味しいというわけだ。

スープが赤く染まっていくがそれほど辛くないところもミソ。

なんか名古屋名物・櫃まぶしににてますね


常連が幅を利かす飲み屋系ラーメン屋。

純粋に酒を飲みたい人が集まる、ラーメンファンキラーな店である。


●「はるばるてい」

世田谷区経堂2-15-15

電話:03-3427-3242

営業時間:12:00~15:00, 17:00~20:30

定休日:火曜・水曜(但し、おやじの都合で休むとき多々あり)


秘伝のタレ壺を見よ!麻布十番商店街の老舗やきとん屋 ~「あべちゃん」に憩う~

東京で一番、粋な商店街はどこか?

といった質問をしたときに多くの人々は麻布十番商店街を挙げるのではないだろうか?

麻布十番納涼祭りは、若者度が最も高いお祭りだし、

たい焼き屋の代名詞ともいえる「浪花屋総本店」に

麻布十番温泉などの老舗も健在、

いまどきのカフェもあれば韓国料理屋が多数集まっていることでも有名だ。

そして、商店街の隣には六本木ヒルズがドーンと聳え立っている。

古さといまが混在する、ある意味、粋な商店街なのである。


そんなわけで、夏間近の麻布十番商店街を楽しむべく出掛けてみた。

テーマは風呂上がりの一杯

恵比寿の友人宅から30分ほどジョギングをして、

温泉に浸かり、

しかるにビールをプハーッとやろうじゃないかという趣向だ。

粋な商店街には粋な男がよく似合う。


ま、粋かどうかは別としてもひと汗かいた後の温泉は気持ちいい。

麻布十番温泉本体ではなく、銭湯版である越の湯へと向かう。

麻布十番温泉は値段も1260円と高い上に浴槽が何せ狭い。

大人二人入れば満杯という恐ろしさ…

銭湯料金で温泉が楽しめる銭湯の方が気持ちいいというものだ。

地下500メートルから引いているという温泉は黒光りした重曹泉

本格志向のお湯に浸かっていると肌がつるつるしてきた。


そしていよいよビールタイムだ。

友人が前から目を付けていたという、「あべちゃん」というやきとん屋へと赴くことにする。

この店は昭和8年から屋台で営業していたという老舗中の老舗。

長年、継ぎ足しながら使われてきたという秘伝のタレが名物だということだ。

なにはともあれビールで乾杯。

渇ききった喉に麦酒を流し込む瞬間は何にも代え難い

この瞬間のためにいままでどれだけの汗を流しただろうか…

私が最高の表情をする一瞬でもある。(そんなモン誰も見たくはないだろうが)


店内はいかにも麻布十番的な客層である。

やきとん屋らしい労務者風もいれば、若いカップルもいれば、ネクタイ姿もチラホラ目立つ。

ただなんとなくではあるが地元色が薄そうな気がした。

まさかこのうらぶれた感じのオヤジたちが麻布十番の住人だとは思えない

いや、戦後はこの辺り一帯は青線(政府未公認の売春地帯)だったというから

案外、そうなのかもしれないが。


開放感ある店内で飲むビールはやはりうまい。

窓際の席に陣取れば、ちょっとした縁台気分が味わえそうである。

夏には縁台でビール。

あー風流だね~、ってなもんですね。


abe

(これが秘伝のタレ壺だ!周りにこびり付いているタレがスゴイ)


レバー、かしら、つくねなどの串ものと名物である煮込みをオーダーする。

煮込みは味が染み渡ったかなり濃厚なお味。

モツのひだひだにも滋味を感じるなかなかの一品だった。

焼き物に関しては普段は塩派の私であるが、

秘伝のタレ壺を見てしまった後ではタレでいかざるをえない。

なにせタレ壺の形状がスゴイのだ。

浅間山から溶岩流が流れ出したようにびっしりとタレがこびり付いている

さすが40年も守られている秘伝の壺だけのことはある。

凝縮された旨味成分がじんわりと口腔内に広がっていく。


麻布十番で食べる老舗のやきとん屋の味…

都会のド真ん中でほんの束の間、下町気分に浸れる風流なスポットである。


●「あべちゃん」

港区麻布十番2-1-1

電話:03-3451-5825

営業時間:11:30~13:00、15:30~(L.O.22:00)

定休日:日曜

イケるぜ、鶏モツ!レアな焼き鳥屋「酉玉」に唸る

鶏モツがメインの串焼き屋があると聞いて、いそいそと出掛けてみた。

白金台の駅から歩いて10分、高速のガード下にある「酉玉」という店だ。


私は元来、モツ好き人間であるが、レアな鶏モツにお目にかかるのはそうそうない。

レバー、砂肝、ハツあたりならどこにでもあるが、

ここ「酉玉」にはみさき(メス鶏のテール)、きんちゃく、ちょうちん、ソリレース(ももの付け根)など本格的な鶏モツが並んでいる。

メニューにもなかなかいい感じだ。酉コース(7本)と一品料理で鶏皮の佃煮、ささみの塩昆布和えをオーダーした。


まずコースからスタート。

1本目はみさきだ。独特の香りがするボンジリ。

チーズ風味とでもいうのか、初っ端から濃厚テイスト。

下味に良い仕事がしてあるのが伺える

この先に期待が持てそうだ。


その後、背肝、ふりそで、豚カルビ、などが出される。

それぞれ、バルサミコやゆず胡椒、ポン酢など味付けに工夫がされていて楽しめた。

腰の皮は脂身が美味、えんがわもコリコリしていて 楽しめました。
コリコリ系の食べ物は好きだなぁと


toritama

(和の心、ささみの塩昆布和えは味がしみていた)


一品料理も「ふーむ」というお味。

鶏皮の佃煮はショウガ味が強く、豚のショウガ焼きテイストで

ささみの塩昆布和えは焼酎や冷酒と合わせたくなる。


今回、チャレンジできなかったが玉ヒモは見た目も強烈。

鶏の卵管と卵になる直前の部分とで構成された一品だ。

半熟卵のプチッとした食感がたまらんのですよ。


いやー、なんか珍しくホメ称えているなぁ…

ちょいと変わった焼き鳥が食べたい方

モツが好きだ!と声を大にしている方にはお勧めします。


店はコの字のカウンターですが、隣の人と1席空けてくれる

ゆとりの居心地なので、ゆっくりとデートを楽しみたい向きにもよろしいかと。


●「酉玉」

東京都港区白金6-22-19
電話:03-5795-2950(予約可)

営業時間:17:30~1:00

定休日:日曜日(日・月曜連休の際は、日曜を営業、月曜を休み)







〝なんとか風〟グルメっていうやつは… ~「味の時計台」の昔風ラーメン~

なんとか風〟という料理はいかなものか、と常々思っている。

たとえば、南国チックでもなんでもない料理にパイナップルが添えてあるだけでトロピカル風になっているし、

ごく普通の中華料理に豆板醤が多めに使われていると四川風と命名されている。


どうよ、どうなのよ、と突っ込みたくなるのは私だけではあるまい。

つまり、どんなにキムタクに似ていようが、本人でない限りニセモノであるように、

いくら料理のテイストを似せてみようが、ニセモノであることにはかわりないわけだ。


私はこう思う。

ニセモノだっていいじゃないか、そんなに取り繕うとするなと。

私の愛するB級グルメには〝なんとか風〟などという中途半端なものはない。

オリジナルで勝負!という潔い料理が好きだ。

スペイン風オムレツとかメニューにあるとスペイン・オムレツではないわけね?

ちょっと似せてみました的な料理なんざんすね、と思ってしまう。

それよりもどっからどうみてもただのスペイン・オムレツを

当店オリジナル「山ちゃんオムレツ」とか銘打っていた方がまだ食欲がそそるという話だ。


そんな私であるがつい最近〝なんとか風〟の魔力に魅せられてしまったことがある。

新宿3丁目にある「味の時計台」というラーメン屋が掲げていた

サッポロ昔風ラーメン、というメニューだ。

トロピカル風や四川風ならどんな味かは想像できる。

しかし、創業当時の味、これが昔のラーメンの味です、

とこられると「ムムム…それはいったいどんな味なのやら…」と興味がわいてくる。

なにせ知らない味だ。

シンバブエ風でも悔し涙風でもいいのだが、

〝なんとか風〟と名乗るなら、なんだかよくわからない謎の味がいいのではないかと思う。


話を元に戻そう。

昔風という限り、当時の味通りではないにしろ、いにしえの味をかいま見ることができるのではないか、

きっと15分後には「やっぱりな…と後悔しながら店を後にすることはわかりきっていたのだが、

(そもそも味の時計台がどうなのよ、って店ですから)物は試しの精神で店の中へと引き込まれてみた。



tokeidai

(コールタールの海のようなスープに食欲は…)


で、出てきたラーメンがこれが見事にドス黒いスープのラーメンだった…

こ、これが昔のサッポロラーメンなのか…」

おそるおそるスープを口に運んでみたが、見た目よりは塩辛くなくまろやかである。

しかし、美味いとはとてもいいがたい。

当然か。

しかし、「昔風のルーツを探る」という今回の目的は達成されることがなかった。

どのあたりが昔風なのかいまひとつ理解できなかったのである。

まさか、このドス黒い醤油がサッポロラーメンのルーツだとは思いがたい。

(というか、その前に味がね…。ちなみここはFC店ではなく直営店なのだが…)

東京の昔ながらのラーメンといえば支那そばが思い浮かぶ。

澄んだスープに鶏ガラスープがなぜだか郷愁をそそる。

サッポロラーメンの昔味…ちょっと期待したんだけどな…

寒い土地ならではの工夫であるとかなんとかを。


〝なんとか風〟に名物ナシ、を私のB級グルメ辞書に深く刻みつけておこうと思う。


●「味の時計台」新宿3丁目店

東京都新宿区新宿3-14-21

電話:03-5368-1228

営業時間:11:00~5:00

定休日:無休






従業員は見ていた! ~「肉匠 なか田」の壮絶サービスの巻~

B級グルメ にあるまじき高級店の話を書こうと思う。

西麻布近辺にある「肉匠 なか田」という店の話だ。


ここは高級和牛焼き肉の店である。

入り口のわかりにくいエントランスに長く続くアプローチ。

なにやら界隈にありがちな知る人ぞ知る系の店構えである。


店内に入ってみる。

まだ開店直後なので客の姿はない。

そんな時に個室に通されるというのもなんだな、という感じだ。

ちょいと本日は大事な話があったもんで、個室を予約したわけだ。


肉の単品アラカルトも多数ある。

ハネシタやらクラシタやらアカセンといった聞き慣れない部位もある。

シャトーブリアン(フィレの中心で稀少な部位)¥8,400也

なかなか気合いの入った値段である。


コースの説明を聞いたら刺身が充実していることがわかり

迷わずにコースを選択。追加でハネシタ(肩ロースの上等な部位)をオーダーしたがあいにく切らしているとのことだった…

美味いらしいんですけどね。


というわけで、今宵の宴が始まる。

刺身はどれもが濃厚な味。

牛トロ、クリ(腕)、ハツ、生レバー、ユッケなどが並ぶ。

一口サイズの刺身を食べているとグワシと一度に大量に食したい気がしてくる。

大人食いしてぇ~」という心の叫びを押さえつつ、

上品に1枚ずついただいてみる。

最後の1枚が胃の中に収まると同時に焼き物の皿が出された。

この時点で我々はまだこの行為の持つ意味に気がついてはいなかった…

それはのちのち、恐ろしい衝撃を与えることになるのである。


nakata

(ドライアイスの煙の中、現れた刺身。演出もスゴイ)


話を食に戻してみよう。

この店のシステムとしては肉には塩を振りかける。

なんでも40種類ほどある塩の中から7種類が選ばれ、

その日の食卓を飾ることになる。

7種類の塩は微妙に塩味が違っている。

一番ハードなマルドンクリスタルはピラミッド状の大粒な結晶が特徴。

脂身やサシが多い肉はハードな塩で、

淡泊なアジの肉はマイルドな塩で、肉の甘味を引き出すのが良いとのことだった。


私はとんかつにも塩を愛用する塩派の人間なのでこれは良い。

しかし、塩の振り方は難しい。

よくこうプロの方は遠目からサーッと投げ降りなんかをしているが、

あれを真似しようと思っても塩は均等にかからない。

肉の上でパラパラとやるのがよろしいようです。


さて、そんなこんなで食が進むにつれて、

我々は「ムムム…」と思う出来事に遭遇しはじめた。

サービスがあまりにも迅速すぎるのである

たとえば、ワインがなくなる。

すぐ注ぎに来る。

当たり前のことだとみなさんは思うことだろう。

しかし、ここは扉でガッチリと締め切られた完全個室

飲み終わる。

待ってましたとばかり従業員がやってきてサービスする。

タイミングがあまりに良すぎる。

一つの皿が空く。

最後の肉が皿の上から取り去られる。

すかさず次の皿が運ばれてくる。

早い。

なんという早さだ


連れは「視線が気になる…」と言いだした。

どうも個室に備え付けられている小さな窓から適宜、監視しているようなのだ。

監視付き個室

うーむ、スゴイ店だ。


ちなみに連れが塩をこぼした時のことだった。

サラーッと塩がテーブルに広がった。

すかさず、布巾を持った従業員乱入。

さらにこんなこともあった。

連れが席から立ち上がった拍子に頭上の照明に頭を当てた。

すかさず従業員「お怪我はありませんか」の声と共に乱入。

私が「大丈夫?」と声を掛ける間もない。


なんという。


ある種、過剰サービスであることは間違いないところだ。

2人きりでしっぽりと話したいがために個室を取ったわけであるが

従業員の目が気になる、というのもスゴイ話だ。


うっかり、感動話なんかして連れが泣こうものなら

「大丈夫ですか?」の声と共にハンケチを持って乱入してきそうな気配すらある。

もちろん、この監視下の中では女性とイチャイチャしようなんて気も起きなくなることだろう。

お願いですから、そっとしておいてください


これが高級店の正しいサービスかどうかは甚だ疑問が残るが、

我々を笑わせてくれたことだけは確かだから

B級サービスであることは間違いない。

私なんかはわざと狙ってやってるんじゃないかと思ったほどだ。


図らずも肉の味よりも従業員のサービスが記憶に残ってしまった、

なんともいえない高級焼肉店である。



●「肉匠 なか田」

東京都港区西麻布2-2-2 NK青山ホームズ1F

電話:03-5468-2911

営業時間:18:00~24:00

定休日:日曜





カツカレーを丼に ~元祖・カツ屋「王ろじ」のとん丼~

カツカレー が好きだ…

いや好きだった時期がある。

20代の頃の話だ。


食欲旺盛な若者にとって

カツカレーの大盛り、という響きは格別のものがあった。

この場合、主役はなんといってもカツだ。

カレーの出来はこの際、少々目をつぶってやってもいい。


しかし、一口にカツカレーといってもカレー屋のカツカレー洋食屋のカツカレーはこれはもう大きな違いがある。

カレー屋のカツはなんというか、肉悪、油悪。

ジューシーさなどは皆無で、ガンといっても過言ではない。

挙げ句にカツカレーは大抵最高金額のメニューである。

踏んだり蹴ったりとはまさにこのこと。

どんなにカレーが美味でも、こればっかりは許せない。


よって私のカツカレーライフは洋食屋ですくすくと育くまれてきた。

中でもひいきにしていたのが近所にあった「キッチン南海」である。

ここではいつもトンカツ定食を食べようか、盛り合わせ定食にしようか、

はたまたカツカレーにしようか、いつも悩んでいた。

結果、8割はカツカレーにしてしまっていた、ような気がする。

カツというご馳走とカレーという庶民派の奏でるハーモニーは

格別なものがあったわけだ。


そんなカツカレー界に一風変わったカツカレーを食わせる店がある。

新宿の路地裏に佇む、トンカツ屋、「王ろじ」である。


「王ろじ」は大正10年創業の老舗で、「トンカツ」という言葉の名付け親でもあるらしい。

つい数年前までは古い佇まいのなかなかシブイ店構えだったのだが、

改築されて風情がなくなってしまった。

あー、こりゃこりゃ。

「王ろじ」はれっきとしたトンカツ屋である。

路地の王様だから「王ろじ」。

そんな店だから、カツカレーもまさに王様級の迫力であったりする。


oroji

(しかし、デカイ、カツだ。カツだけ丼といってもいいだろう)

ここのカツカレーは皿と器がドッキングしたヘンテコな形状の容器に入っている。

カツカレーライスというよりはカレーカツ丼

よって名前も「とん丼」と名付けられている。

見ての通り、器からは棒状のカツが屹立している。

この棒状のトンカツは衣カリカリ、サクサク感もほどほどあって悪くない。

まさにカツが主役のカツカレー。

衣のカリカリ具合とカレールーとの相性はなかなかのものだ…

が、なんというかなぁ…確かにカツカレーなんだが、なにかこうすっきりしないんですな、これが。


あまりにカツの主張が強いもんだから、カツ丼にカレーがかかっている

程度にしか思えなかったりする。

器の形状がヘンなせいで量も少ない。

若者の胃袋を満たしてくれるカツカレーとはまったく別物といえよう。

こうなってくるとカツカレーのありがたみ、というのは感じられない。
やはりカツ丼カレー味、といった趣なのである。


改築前の「王ろじ」には大正ロマンに溢れる奥座敷があって、

そこで食すのが気分だった。

かって、路地の王様だったときの雰囲気をほのかに感じたものだ。

あの頃は確かにB級だったのだが…


丼で食べるカツカレー、

大正ロマンが漂う、モボ・モガ好みのスタイルだったのかもしれない。


●「王ろじ」

新宿区新宿3-17-21

電話:03-3352-1037

営業時間:11:00~15:00、16:30~(L.O.20:30)

定休日:水曜日






回ってどうする?田んぼのド真ん中に佇む回転喫茶 名古屋「ロータリー」の喫茶店学

名古屋の喫茶店といえば、モーニング戦争が話題になった。

私も実際に体験すべく名古屋へと足を向け、

さまざまな喫茶店を訪れたことがある。


ドリンク代のみでトーストやサラダがサービスで出てくるのが基本。

これでだいたい300~400円くらいである。

過激な店になるとその料金でパンの食べ放題が付く。

もちろん、パンは焼きたて。

ちなみに「リヨン」という喫茶店はフルタイムモーニングを実施している。

つまり、いつでもモーニングサービス実施中。

そうなってくるともうサービスですらない。というかモーニングじゃないじゃん。

まさにデフレの極みである。


そんな名古屋の喫茶店界にとんでもなくバカげた喫茶店が登場した。

なんと100分掛けてぐるーりと1回転するという回る喫茶店、その名も「ロータリー」。

これが名古屋市内の夜景のキレイなビルの屋上、あるいは景色の素晴らしい山の頂上にでもあれば

素敵な気分を味わえるかもしれない。

が、ここは田んぼのド真ん中…

見渡す限り、のどかな田園風景が広がっている


rotari

(この円形の物体がくるくると回るんである)


回す意味、ねぇじゃん!」

誰もがそう思うことだろう。

そりゃね、寿司だって回転させる意味がないといったらないですよ。

しかし、回転寿司の場合は目の前で回る寿司を見る楽しみというのがある。

これはなかなか楽しい。

では、回転喫茶の場合はどうか?

100分間で1回転。1分間に3.6度という極めてゆるりとした動きでは動いている実感がしない。

外の風景を見ていると案山子の位置が微妙にずれたので、

なんとなく動いているというのがわかるくらいだ。

楽しくない。

せめてこう回転が実感できるスピードならうれしいが,

そうなるとトイレに行くのにも危険がつきまとうことだろう。

 

目の前のレーンをコーヒーやケーキが回っている、

というのであれば、立派な回転喫茶だ。

自分の席が回る、というのもアミューズメント喫茶として

繁盛するかもしれない。

しかしである。

なぜ田んぼのド真ん中で回さなければならないのか

まったくもって謎だ。

表の風景を見ていても5分も見れば確実に飽きる。

なまじ期待感が大きいばかりに裏切られた思いがするという例のパターンだ。

我々は「回る」ということに関して過度の期待感を持ちすぎるのである。


ちょっと考えれば、企画倒れだとわかりそうなことを実現させてしまうのは、

さすが名古屋人である。

都会的なセンスでは思い浮かばない発想だ。

モーニング戦争や喫茶マウンテン の例を取っても

名古屋人の喫茶店に賭ける思いは特別なものがあるのではないか

ちなみに名古屋喫茶店界の雄・コメダ珈琲にはシロノワールというメニューがある。

熱々のデニッシュの上に冷たいソフトクリームが乗っているというシロモノだ。

名古屋人の魂は「」にある、というのもあながちウソではなさそうだ。


shiro

(これが名古屋人の魂の象徴といわれるシロノワールだ)


回転喫茶という考えは「もうサービスだけではガメツイ名古屋人の心を掴むことは出来ない…」

という切迫感から生まれたのではなく、

人より目立ったモノを作ってみるみゃぁ」ということで編み出されたモノであることは想像に難くない。


目立てば勝ち


マーケティングが発達した現代で、このような価値観が生き続ける名古屋はやはり恐るべし、なのである。


※風の噂で喫茶「ロータリー」がもう回っていない、という話を聞いた。

 ようやく気がついたか…と思った次第です


●喫茶「ロータリー」

 愛知県一宮市千秋町佐野字工高前10番

 電話:0586-81-3188

 営業時間:8:00~19:00(月~土)

         8:00~18:00(日・祝)

 






(B級グルメ番外編)カフェメシで食う山形水ラーメン

今年初めての冷やし中華でも食べようと銀座をぶらぶら歩いていたら

いま風のカフェのメニューボードに

山形水ラーメンの文字が目に飛び込んできた。


山形冷やしラーメン…噂には聞いたことがある。

山形県が総力を挙げて、暑い夏を乗り切るために開発したという代物である。

スープに堂々と氷が浮かんでいる、のが特徴らしい。

ビールに氷を浮かすようなものか?

どうなのよ、って気がしないでもない。

コンビニで冷やしラーメンってなものを一度食べてみたこともある。

スープの脂がしつこくて、これならつけ麺の方が良いなぁ、と思った。

冷えたスープと脂の相性は著しく悪いのだ


そんなわけで、冷やしラーメン業界からは気持ちが遠のいていたわけだが、

「山形水ラーメン」の文字には心ひかれるものがあった。

なんといっても山形、というのが良い。

さくらんぼの国、山形。

さくらんぼでも入ったトロピカル風を想起させられる。

話の種に食べてみようか…

しかし、ここは銀座のカフェである。

ラーメン屋ではない。

その時点で、かなり厳しい戦いが予想される。

冷やし中華に行くべきだ、それはわかっている。

しかし、B級グルマンたる者は負け戦とわかっていても出陣しなければいけないときがあるのである

そんなわけで、カフェへと侵入。


メニューを確認するまでもなく、水ラーメンをオーダーする。

「お飲み物はどうしますか?」

来たな、マクドナルド商法め。

ここでアイスティーなんぞを頼んだら、

それこそカフェメシ野郎になっちまう。

B級グルマンとは二度と名乗れなくなるだろう。

「いや、水ラーメンで。どんなものか食べてみたかったんですよ」とニコニコしながら告げる。

私は人当たりは良いんである。


hiyashi

(中央の氷がスープの固まりである)


しばらくすると水ラーメンが登場した。

通常のラーメンと明らかに違う。

中央にサクランボが乗っている…

ってなことはなく、氷の固まりがどかんと乗っている

どうもスープを凍らせてシャーベット状にしたものらしい。

氷が溶けてもスープが薄まらないようにという配慮だろう。

地元・山形ではそんな手間の掛かることをしているとは思えない。

いかにも銀座のカフェメシ屋らしい考えだ。


スープにはオリーブオイルが使用されている。

くどいとまではいかないものの、

やはりスープはすんなりと喉を通らない。

ホタテ・アタリメ・日高昆布・しいたけ・煮干・かつおでダシをとり…」

と店内に表示されてた。

魚介スープの濃厚さが冷やされたことにより、さらに凄みをましてきた、

その凄みがいいんだか悪いんだかは置いておくにして。

溶けた氷の周りだけスープが薄まって、いい感じになる。

よって氷の固まりが早く溶けるようにグルグルとかき回す

バーボンを大きめのロックグラスに注いで、

指でこれまた大きめの氷をかき回しているのはそれなりに様になるが、

ことラーメンになると話は違う。

お行儀悪そうです。


ただ、こりゃ毎日食べたくなる味ではないわいな。

冷やし中華だとかそうめんなんかは暑い日などはつるつるっといけそうだが、

冷やしラーメンはちょいとしつこいぜ!

今週のがっかりさん


まぁね、カフェでこういうもんを食べようとしたこと自体がね、

B級精神から外れていたなと。


よって番外編ってことで、ひとつ…


●「Pour Cafe」

中央区銀座1-14-9

電話:03-3535-0516

営業時間:8:00~23:00(曜日により変動あり)

定休日:無休



ともたん再び ~今度は巨大ハンバーグ艦隊がお出迎え~

その機会は図らずも意外と早く訪れた。

まさにディープ・インパクト!思わず目を見開くその味とはいったい…「焼き肉ともたん」は爪を隠す 』で、

衝撃を与えられた焼き肉屋「ともたん」へ第2回目の出撃を行った。


今回は肉好きを自認するレディース2人と共に。

お2人とも週3でも肉OKの強者です。

私のblogを読んで、是非、出撃したいと志願してきた勇敢な戦士である。


まずは慎重にメニューをチェックする。

今日の組み立てをおおよそ決めて、お決まりのザブトンから突入を決行。

相変わらず惚れ惚れとする肉厚だ。

今度は前回よりも味わって食すことができる。

下ごしらえに絶妙な仕事がしてあるとみえて、

味付けはすでに万全。

表面がパリとなったところで口に入れると

いままで味わったことがないような食感に再び襲われた。


なんですか、これは…」

やはりはじめて食す人はそういう言葉が思わず出てしまう感覚なのだろう、

女性陣はお互いに顔を見合わせて、この新食感の肉に挑んでいる。


我々の後の客がやってきてザブトンをオーダーしたが、

どうやら我々のが最後の肉であったらしい。

危ないところだ。

このザブトンを食わずして、「ともたん」は語れない。

しかもテーブル席は3席しかない小さな店で、予約も不能ときている。

うっかりと行けない危険さもはらんでいると言えよう。


そして次に我々の前に現れたのが、巨大ハンバーグ艦隊であった。


tomotan


なんだこりゃ

この未確認の物体の風体はまさにハンバーグのごとき

然るにその実体は上ヒレ肉の2段重ねなり。

こりゃねぇ、もうねぇ、笑うしかないわけですよ。


しかも、味がまたグッとくるんですわ。

同行したレディースたちは炙りトロのような柔らかな噛み心地ジューシーな肉汁にいたく感動してました。

思わず笑っちゃうような味、ってなことです。


そんなわけで私はまだ笑いながら興奮している。

しかし、こういうこじんまりとしたB級店は同じ志を持った人と行くのが一番ですね。

この店を紹介してくれた友人Tは「荒らされたくない店」と言っていたが、

そのためにはこの雰囲気を楽しめる人とでないとダメなんだわな。


B級グルメの楽しみ…

それは空間を楽しみ、とうとうと過ぎていく時間を楽しみ、料理を楽しむことである。

誰と行くかってことはとても重要だと思った次第です。


●「焼き肉 ともたん」

東京都目黒区油面付近