B級グルメを愛してる! -13ページ目

地元飲み屋に求めること3ヶ条

実は私は引っ越しマニアである。

先週、8度目の引っ越しを敢行したが(おかげで更新遅れました。スンマセン)、ここ12年で7回というのはマニアの領域といっても良いだろう。

以前、浅草に住んでいたことがあるのだが、そこでひとつ得た教訓がある。

それは自分の好きな町には住まないこと、というものだ。

 

浅草はB級グルメの宝庫で、以前書き記した焼きそば屋 をはじめ、シブイホットドッグを食べさせる喫茶店、

絶対にウソがつけなくなるビヤホールなどいろいろと素敵な店がある。

夕方からどぜうでも突っつきながら、ビールでも飲んで暮らしたら幸せに違いない

という思いから浅草に住んでみたが、いつでも行けると思ってしまうと

なぜかこうありがたみというのがなくなってしまう。

 

田山花袋チックにどぜう食べても素敵な気分になれないのだ。

かってはわざわざ浅草を堪能しに来たわけだが、それが日常生活に埋没してしまうと

ちっともありがたくない、というわけだ。

好きな町はたまに訪れるから良いのであって、いつもそこにあるとなぁなぁの関係になってしまうんですね。

男と女の微妙な関係みたいだな、こりゃ。

 

さて、引っ越しといえばなんといっても引っ越し蕎麦なわけであるが、

私の場合は悠長に蕎麦何ぞを食ってはいないのである。

引っ越しが一段落したら、近所の飲み屋探しを始める。

1人で飲みたくなったときにふらりと訪れられるような

いい感じの飲み屋はないものか、駅付近をくまなく探索をする。

 

炉ばた焼き、小料理、焼き鳥、居酒屋…さまざまな看板が目に飛び込む。

店内をチラ見しながら物色してみる。

ちなみに私の中で地元飲み屋をランクづけをすると以下のようになる。


Aランク 磨かれたカウンター、清潔な店内、新鮮な素材、レアな品揃え、アルコール充実、美味


Bランク 愛想の良い主人、豊富なメニュー、落ち着ける、不味くない程度の味、つまりまぁまぁ


Cランク チェーン店系、店内が広すぎ、活気がありすぎ、無難なメニューに無難な味


Dランク 態度のデカイ常連の溜まり場、近所のスーパーで仕入れたようなお手軽メニュー、不味そう

 

Aランクがあればメッケもんだが、これはそう簡単には見つからない。

Cランクは1人で飲みに来るのには向きませんな。店が広すぎたり、やたらと活気があると落ち着かなくてかなわない。

よって探し求めるはBランクの店。

Dランクは……足を踏み入れたときに客が値踏みするようにジロリとにらんだりするので、気の弱い人は行くのやめた方がいいですね。私は家で飲んでた方がマシです、ハイ。

 

何軒か見た後で、カウンターが8席程度、テーブルが2つ、座敷2つといったそこそこの炉ばた焼き屋を発見。

客同士がカウンター越しに話している風でもなく、常連の溜まり場チックな匂いはない。

メニューもそこそこ豊富にありそうだ。

いかにものBランク店である

カウンターの客たちはほんのチラリと私の方を見たが、

一歩足を踏み入れてみる、

別段気にする出もなくまた連れとの話に戻っていく。

よろしい、と心の中でつぶやく。

ヨソモンがよぉ」みたいな感じの店はやっぱりいただけないんである。

 

生ビールにおつまみを4,5品頼んで、自分におつかれ様と乾杯した。

この地ではどんな生活が待っていることやら…

そんなわけで、新たな人生の始まりを平凡な炉ばた焼き屋で迎えるのであったんであった。

 

ウンチク店主は是か非か?~四谷「浅間」の日本酒問答~

ウンチク、というのはTPOをわきまえて語らないと、往々にして

ウザッたがられるという悲劇が待っている。

よっぽど知識に自信があるのならばともかく、プロの前で下手な知識をひけらかすと痛い目に会う、こともままあるだろう。

やっぱり十四代はウマイね、米は山田だね

なんてことをうかつに言ったとしよう。

普通の店というのは「もう一杯、いかがですか?」と言う。

いい店というのは、「雄町もうまいですよ」と他の十四代を勧めてくれる。

悪い店というのは「いやー、十四代は見せ酒というか一応、リクエストがあるんで置いてるんですけど…。個人的にはあんまりおすすめしませんけどね」とか言って突き放す。

気分台無し、である。

しかし、世の中にはもっと恐るべき男もいる。

「じゃ、ちょっとこれ飲んでみてよ。さっきの十四代の山田と飲み比べてもらえばわかると思うんだけど

九平次さんの山田は…なんたらかんたら…それで、長谷川さんのところで…なんたらかんたら…東一の勝木社長が…なんたらかんたら…種麹は…なんたらかんたらYK35で…なんたらかんたら」

ってな感じで、日本酒の知識がない者にはサッパリとわからない話を延々とし出す、のである。

しかも、我々は彼が話し終わるのを待たないと酒にありつくことが出来ない。

いや、勝手に飲んじゃってもいいんだが、あんまり熱心に話すので、

ちゃんと聞かないと申し訳ないのかなぁ、という気になるのだ。

asama

それが四谷3丁目にある地酒「浅間」という店の若き店主・畠山氏であったりする。

彼の日本酒にかける情熱は素晴らしい

話の端々に日本酒に対する愛を感じる。

日本酒講座を聴きに来たのであれば、充実した時間を過ごすことが出来るだろう。

料理も日本酒にあった素敵な和食がずらりと並ぶ。

日本酒もお任せ、料理もお任せ

しかも、日本酒で有名な三軒茶屋の「赤●」某店と比べても、

リーズナブルな価格、品揃えも文句なし

日本酒好きなら満足すること間違いなし、の店である。

しかし、そんな素晴らしい店をこのblogで紹介するわけにはいかない。

「浅間」のアキレス腱が二代目店主・畠山氏なのである。

とにかく語る、んである。

新しい酒を持ってくる度にひたすら語る。

我々、お客さんたちがその時にどんな話をしていようが

お構いなしに語りを入れる。

初めて訪れる人はおそらくド肝を抜かれるに違いない。

「なぜこの人は一切の空気を読まずにこんなに語るのだろう?」と。

ただ知識をひけらかすだけのウンチク野郎であれば、こんな不快な店はないことだろう。

しかし、畠山氏の場合は自分の知識の自慢をしたいわけではない。

ただお客さんたちに日本酒のことをもっと知ってもらって、もっと好きになってもらいたい、

その気持ちが彼特有のサービス精神となって表れているのだ。

これはちとややこしい。

向こうはよかれと思ってサービスしてくれる。

こちらからみると過剰サービスである。

はてはて、困ったモンである。

ちなみに私の知り合いには、お客の知識に真っ向からケンカを挑むバーテンがいる。

彼はお客の半端な知識には厳しく、やりこめてしまうのだ。

それは、客からするとひどい仕打ち、であるが、畠山氏の場合はあくまでもサービスの一環なのである。


ちなみに『散歩の達人』(1998年12月号)に以下のように紹介されている。


二代目に目を向けると、なるほど確かに“銘酒界の書生”といった風情が。
お酒について尋ねると、造りから風味の特徴までを、誠実かつ熱心に教えてくれる。それが、またおもしろい
そんな日本酒談義をしつつ味わう銘酒の肴は、全国各地の旬の幸を使ったホッとするようなお袋の味…


さすがに雑誌だけあって、気をつかって書いてますね。

最初はありがたがって聞いていた話も、3度、4度と店を訪れる度に

ちょいとウザったくなってくる

でも、美味しいお酒は飲みたいから店に入ってみる。

やっぱりウザイ

でも行く

なんてことを延々と繰り返していると

彼の話も酒のつまみ、のように思えてくる。

つまり、詩吟だとか浪曲といったような伝統芸みたいなものである。

そのうち、日本酒オンリーのある意味でつまらない話が面白く思えてくるようになるのだ。

話が面白いんではない。(彼は残念ながら話を面白おかしく聞かせる才能には乏しいんである)

ひたすら真面目に話している畠山氏の素晴らしさに感動を通りこえ、その畠山節に思わず唸ってしまうのだ。

感動と笑いは紙一重ですな。

独りでしみじみと酒を飲みたい、なんて時にはちょいと似つかわしくないが、

畠山ファミリーが奏でる家庭的な雰囲気は、ちょっと日本酒が好き、くらいの人を誘って行くと喜ばれるかもしれません。

ざっくばらんに日本酒の話が聞きたい、なんて時もいいでしょう。


いろいろと語る店主は世の中に五万と存在するが、これだけ情熱をもって語る人間はそうはいないはず…

世の中にはいろんなB級がまだまだ眠っているんである

●地酒 「浅間」
東京都新宿区四谷3-7
電話: 03-3355-2977

営業時間:月~金17:00~24:00 土 17:00~22:00
定休日:日

「浅間」のHPはこちら


レトルトカレーの奥義を究めたか!?~「100時間かけたカレー」の実力~

レトルトカレーについて考えてみたいと思う。

 

レトルトカレーといえば「ボンカレー」、と思い浮かべる人は

OVER35YEARSの人々だろうか。

「ボンカレー」

「ハイアース」

「オロナミンC]

この3つがホーロー看板の御三家といわれていた時代の話である。

ちなみにボンカレーは松山容子、ハイアースはお水こと水原弘(アース渦巻きの由美かおるバージョンはセクシーだ)、オロナミンCは大村昆ちゃんがキャラクターを勤めている。わかるかなぁ~わかんねぇだろうなぁ~by 松鶴家千歳)

 

ま、子供の頃にレトルトカレーのお世話になった記憶はあまりない。

おそらく、物は試しで1,2回は食べたことがあるとは思うのだが、

家で食べるカレーといえば、うちの場合、「ハウスバーモンドカレー」。

リンゴとハチミツ、とろーり溶けてる、ヒデキ感激~です。

どうも今日はネタが古くていけねぇや

 

レトルトトカレーと本格的に付き合い始めたのはひとり暮らしを始めた20歳の頃からである。

ご飯を炊くだけでお腹いっぱいの食事にありつけ、しかも調理時間はわずか3分。

こんな便利なモンはないわなぁ~、というわけで、以来、いままで愛用しています、ハイ。

(大学時代は「LEE」の10倍カレーが個人的な一番人気。あの強烈な辛さが最高のおかずになって、

他の具やらなんやらはいらなくなるお味でした)

 

ボンカレー時代は、ただ単に腹を満たすための道具、に過ぎなかったレトルトカレーも

最近ではグルメ化の傾向にある。

かってマダムヤンが「お客様にお出しできるラーメンです」といっていたように

レトルトカレー界も高級志向になってきているわけだ。

 

ま、種類だけでいったらそれこそ100種類は雄にあるだろう。

お店系ブランドの中では、ルー&ドライカレーをミックスさせた「パク森」、

本格インド風では最近はキーマカレーがトレンド、

変わりどころでは、強烈インパクトの「蟹と卵のカレー」、

缶詰系では「トドカレー」や「熊カレー」なんて、とんでもないカレーもある。

(インパクト系レトルトカレーの話はまた後日に)

 

100jikan

(ビーフシチューのような濃厚なお味)


そんな中でこれぞレトルトカレーのある種の奥義を究めた、と思えるカレーがでた。

MCC食品の神戸カレー「100時間かけたカレー」だ。

何が奥義かというと圧倒的なとろとろ感。

まさに100時間煮込んだ系の味わいである。

これは私が「スタンドカレーの美学 」で提唱するところの煮込まれた感が十分に堪能できる。

ちなみに100時間の内訳はこうなっている。

 

25時間…カレールーの焼き上げ、熟成

15時間…フォンを煮出す

34時間…野菜のソテー、熟成

29時間…ソースの煮込み、一日寝かせ、仕上げ

 

まさに熟成の味

カレールーの色もどろどろした黒っぽい感じ。

レトルトカレーにありがちな茶色いルーの安っぽさとはわけが違う。

重厚さ、これがレトルトカレーの奥義に通じるのではないかと思う。

ちなみに監修は元オリエンタルホテル名誉総料理長の石阪 勇氏。

一般的には馴染みがなく、エライ人なんだかどうかよくわからないところもB級でよい。

 

そんなわけで、手軽なスタンドカレー風味を味わう向きにはおすすめの品である。

レトルトカレー…独りモンの強い味方である。一般家庭ではどういうときに食べられるのであろうか?

やっぱりメンドくさい時に重宝されるのだろう。そう思うとなんか虚しい食品だなぁ、とちょっとレトルトカレに哀愁を感じるのであった。

 

●神戸カレー「100時間かけたカレー」

 MCC食品

 価格365円

 原材料/野菜(たまねぎ・にんじん)・牛肉・ホールトマト・リンゴピューレ・バナナピューレ・小麦粉・植物油脂(大豆油、米油)・ブイヨン(鶏がら、牛骨、牛筋肉、牛肉、たまねぎ、にんじん、セロリ、なたね油、香辛料、ガーリック)・マーガリン・トマトペースト・香辛料・食塩・バター・砂糖・でん粉・ビーフエキス・野菜エキス・酵母エキス・ぶどう糖・カラメル色素・乳化剤・香料(その他豚肉由来原材料を含む)
内容量/200g(1人前)

呼子のイカは永遠に~四国・九州旅情編その5~

いよいよ四国・九州の旅もラストを迎える。

東京を出発して早2週間…

「讃岐うどんを本場で食べたい!」という暇人的発想から生まれたこの旅もクライマックスを迎えるわけだ。

そう、ついに私は佐賀県呼子に到着したのである。


玄界灘に沈む夕陽を見ながら新鮮なイカをつまみに地酒を飲んでしみじみと過ごしたい

そんな思いを胸に海沿いを軽快に飛ばす。

しかし、見あたるのは大箱の店ばかり…

シブイ飲み屋風の店が見あたらないのである。


もしや、観光客相手の大箱の店しかないのでは

いやーな、予感が背筋を走る。

そうだ漁港の側に行ってみよう、マグロで有名な三崎町なんかは漁港の側にいい感じの店が何軒もある。

呼子大橋を渡って加部島という小さな島へと渡る。

ちょうどレインボーブリッジを渡ってお台場に行くような感覚である。


期待に胸を躍らせ橋を渡る…が、ほどなくして愕然とする。

やはり、大箱系しかない。

島中をくまなく走ってみるが結果は同じだった。

私のワビ・サビ計画は水泡と消えてしまったようだ


どこの店に入ろうかと思い。いろいろと見てまたも愕然とする。

どの店も同じメニューを同じ金額設定で出しているのである。

しかも主力が定食系とくればこれはもうこう思うしかないだろう。


島全体が巨大なファミレスなんである

やれやれ


気を取り直して目に付いた店に入ってみることにする。

「いか道楽」…ご存知道楽シリーズのカニ、エビ同様、

巨大なイカが足をくねらせている看板がある、

なんてことはない。

平日のためか店はガランとしており、貸し切り状態。

親子連れとかいて騒がれてたらそれこそファミレスだが、

1人静かに海に沈む夕陽を見ながら…というシチュエーションは悪くない


スペシャルいか活造り定食(いか活造り、下足天ぷら、伊勢海老赤だし、いかじまん、いかしゅうまい、茶碗蒸し、ごはん、赤だし、香物、果物)を注文して、ビールをオーダーする。

酔ったらどこかの旅館にでも泊まるつもりだったんだが…


ほどなくしてついにいかの活造りが運ばれてきた。

いろいろと紆余曲折はあったが、呼子のイカに罪はない


ika

目の前に現れた呼子のイカ様はまさに透明な肌(?)をなされていた。

新鮮なイカは透明だと聞いていたが、まさにその素晴らしき柔肌とご対面できたわけだ。

ちょいと裏切られた感は否めないが、いままでのいきさつは忘れて、お前を味わってやろうじゃないが
そんな思いで、イカを一切れ口に運ぶ。


ち、違う

いままでいろんなイカを食ってきたが、食感、味わいが明らかに違う。

イカという生き物は極めてデリケートに出来ているらしく、

人が触れただけでやけどを起こして死んでしまうと聞く。

漁港から揚げたら即座に生け簀に移して、海中と同じ状態で保つことができなければ

この透明なイカは生まれないのである。

さすが漁港のすぐそばにある店だけのことはあるぜ。


まず、歯ごたえが違うのだ

シャキッ、とした歯ごたえがある。

東京で食べるイカはどんなに新鮮であっても

噛みしめたときにどうしてもねっちょり感がやや残る。

デリケートなイカ様はたとえ生け簀にいれられていたとしても

環境の変化ですぐに気分を損ねてしまうのである。


さらにほんのりとした甘味が新鮮さを物語るようだ。


来て良かった…

いままでさんざん悪態をついてゴメンな

玄界灘の夕陽を見ながらそんなことを思った。


イカのコースを一通りいただく

もう一度、あのいかの活造りを味わいたい…

しかし、すでに陽は落ち、あたりは暗くなり始めている。

ここでもう一回戦、イカ食っちゃたら、どっぷり飲んでその日は終了、

ってなことになっちゃうんだろうな…


しかし、ここは孤島の漁港

夜8時になれば付近は真っ暗。泊まろうにも宿もなさそうだ。

しかたなく、イカはあきらめて呼子を脱出することにする。


こうして私の長きにわたる四国・九州巡業ツアーも終わりを告げた、

のであるが、ここはまだ佐賀県。

東京への道はまだまだ長く険しく、危機一髪の困難が待ち受けているのであるが

それはまた別のお話


●いか料理専門店 「いか道楽」

 佐賀県東松浦郡呼子町加部島海岸通り

 電話:0955-82-5539

 営業時間:10:30~20:00



史上最悪の地獄湯 山ん城温泉での恐怖~四国・九州旅情編その4~

砂風呂に入って満足した一行は(私、1人だけだが)鹿児島でしこたま焼酎を購入し(伊佐美、山ねこ、芋、大正の一滴、百年の孤独などなど)

九州での最大目標となっていた呼子のイカを食いに行くのであった。

呼子のイカ…史上最強とも言われる KING OF SQUID

その肌は透明に透き通り、我々が今まで食してきたどんな新鮮なイカも呼子のイカと比べれば似て非なる食べ物といわざるを得ないという…

まさしく未知の味がそこに待っているのだ。

イカ食い者としては、是非とも味あわなければならないさだめにある。

しかし、その前にちょっとまた寄り道をしてみるんだった。

私は実は温泉グルマンでもある。

聞くところによると鹿児島県に山ん城温泉(やまんじょうと読む)なる日本一ワイルドな川湯があるという。

そこは至るところから噴煙が立ち上り、あたりには硫黄臭がたちこめている…

山深い川の上流部がそのまんま天然川湯になった温泉フリークからしてみれば桃源郷のような場所と聞く。

行ってみるしかない…

しかし、そこに行くには予想以上の困難が待ち受けているだろうと物の本には書いてあった。

で、行ってみる。

山中の砂利道を走っていると立て看板が見つかった。

「これより先、進むべからず。毒ガス発生区域なり。これより先に立ち入る者にどんな事故があっても当局は一切の責任を負わないものとする 鹿児島県営林局」

恐~え~

何が待ち受けてるんだよ、この先に

っつうか、温泉なんかホントにあるんですか?って感じですね。

いくらなんでも毒ガスはヤバイだろう

よっぽど引き返そうと思ったが、好奇心の方がどうしても勝る。

私はB級温泉も好きなのであった

さらに山奥へと進む。

途中にゲートがあって鎖で塞がれていた。

ええい、ここまで来たら面倒だ。

で、強行突破を果たす。

しばらく行くとちょいと開けた場所に出た。

きっとここが桃源郷に違いない…

しかし、なにせ毒ガス発生区域である。

迂闊に外に出たらどんなことになるやもわからない。

窓をちょいと降ろしてみる。

著しく硫黄臭い…

しかし、毒ガスではないようだ。

車を降りてみる。

川そのもが見あたらない。

ここではないのか…

ふと茂みの奥に沼地のような場所がほの見えた。

茂みをかき分け行ってみる。



yamanshiro


そこは…桃源郷ならぬ地獄湯の様相

別府の地獄温泉などとは比較にならない。

まず、沼地がボコボコと泡立っている

流れがないために水は毒々しく濁り、不気味な様相を呈している。

どうやら、ここが山ん城温泉らしい…

いや温泉だったらしい、といった方がいいか。

おそらく桃源郷だったのはもう過去の話で、いまはガスが発生し過ぎて

使われていないことがほどなくしてわかった。

とにかく帰ろう。

その時だった!

足がズブズブズブと沼地の中にハマってく

その勢いはまさにアリ地獄にハマったアリのごとく

あっという間に膝まで沈んでしまった。

足を上げて抜け出すことは不可能だ。

私は立派な大人であるが、ちょっと泣きそうになる。

とにかく、山ん中、どんなに叫ぼうが人はいない。

なにせ国が責任を負ってくれない地域なのである。

日本じゃねぇじゃん。


こうなるとどうなろうとこの状況から一刻も早く抜け出すしかない。

財布やデジカメやらを陸地に放り投げ、覚悟を決めた。

立っていたのでは自分の体重で沈んでいくだけだ。

水に飛び込めばその恐怖からは救われる。

たとえ、この硫黄臭が一生からだから消えなくなったとしてもかまわない。

私はこのおどろおどろしい沼地にみずから飛び込んでいったのであった

人生最後の瞬間にいままでのことが走馬燈のように脳裏に浮かぶというのは本当である。

私は足が沈んでいくほんの数秒の間にいろいろと思いだし、そして考えた。

このままこの沼地に沈んでしまったら誰にも発見されないまま、死んじゃうんだろうな…とか。

数分後、無事、地獄沼から脱出した…

しかし、臭い。

全身が硫黄臭に包まれている

とりあえず、タオルで全身を拭いてみたが臭いは取れない。

これまた生き地獄のようなもんである。

看板に偽り無し

ゴメンなさい、営林局の皆さま、ホントのホントにヤバかったんですね。

すっかりと暗くなった頃、山林の入り口にある温泉地へと舞い戻った。

しかし、このままではどんな宿でも泊めてはくれまい。

異様なる硫黄臭のする男として、香港に売られるかもしれない。

ふと見ると誰でも利用可能の足湯があるではないか。

人はすでにいない。

みんな宿でゆったりと過ごしている頃だろう。

私は全裸になり足湯の浅ーい風呂の中でじゃぶじゃぶと全身を洗うのであった

教訓

桃源郷を夢見る者、現実に打ちのめされる

呼子のイカにたどり着くにはまだまだ試練が続くのであった…

●山ん城温泉

 鹿児島県姶良郡牧園町高千穂山ん城温泉

 (現在は封鎖中)

ご飯が先か、味噌汁が先か…宮崎・冷や汁の謎~四国・九州旅情編その3~

さて、四国B級グルメを満喫した後は、愛媛からフェリーに乗って大分へと向かう。

佐賀関到着ということで、本場モンの関サバを味わおうと思ったが、

ちょいと旬がズレちまったので関アジにうつつをぬかしてみる。

うーん、いまさっきまで泳いでたアジだ…もとい味だ。

ピチピチ

 

(お急ぎの方は以下の青字を飛ばしてお読みください。本筋には関係ありません)

九州での目的の一つに指宿の砂風呂に入る、というのがあった。

その昔に「走れK-100」というドラマがあって、これは鹿児島から北海道の夕張に住むおじいちゃんのところへ蒸気機関車を届けるというドラマである(主演:シャチハタCMでおなじみの大野しげひさ氏主演…シャチハタのCM自体がすでに古いんであるが)。

おじいちゃんは昔、K-100という蒸気機関車の運転手でもう一度運転したいという願いを叶えるために孫が一肌脱ぐのである。

しかし、線路は使わせてもらえないので、K-100の車輪をタイヤに変えて、道路をひた走り北海道へ向かう、というなんとも無茶なドラマだった。

ちなみに蒸気機関車であるからしてガソリンではなく石炭で走る。

煙突からポッポ、ポッポ黒煙をまき散らして走るわけだ。

よく車検通りましたね。

で、それが砂風呂に入りたいという私の欲望とどう関係があるのかというと

そのドラマの中で指宿の砂風呂シーンがあったわけだ。

イブスキという不思議な感じのする地名と砂風呂の強烈な印象が脳裏に焼き付き

いまのいままで「オレもいつかは砂風呂へ…」と思い続けて生きてきたというわけだ。

ものすごいセコイ夢だな、こりゃ。

なんで砂風呂について語るのにこんなに話が脱線するかなぁ…いやK-100はタイヤで走るから脱線はしないんですが。

 

しかも、今回の話には砂風呂も指宿も出てこないんである。

その途中で立ち寄った宮崎名物の話だ。

ちなみに宮崎名物といって何が思い浮かぶでしょうか?

私は…巨人のキャンプ地だということくらいしか思い浮かばない。

宮崎出身の皆さん、ごめんなさい。

で、つらつらと例によって街をふらついてみる。

するとチキン南蛮の文字がやたらと目に飛び込んでくる。

なるほど、宮崎産地鶏を使ったチキン南蛮が名物なわけね、フムフムと思い

じゃ一丁食べてやるかと思い店に入ろうと思ったら

さらなる魅惑的な文字が目に飛び込んできた。

冷や汁

噂には聞いたことがある宮崎郷土料理の冷たい味噌汁のようなもの。

味噌汁のようなもの、ということは知っているがそれ以上は何も知らない。

じゃ、何も知らないのと一緒ですね、ハイ。

 

hiyajiru


なかなかよさそげな定食屋があったので、入ってみる。

手づくりの店 ぶうぶ

ちなみに手づくりの手の字は手のひらが描かれている。

結構、にぎわっているが誰も冷や汁は食していなかった。

もしや地元民は冷や汁なんぞ食べないのでは…

つ、つまりあんまりうまくないのでは…

嫌な予感が脳裏をよぎる。チキン南蛮はうまそうだ。

しかし、どちらがB級かと考えればこれはもう圧倒的に冷や汁であろう。

なにせ得体が知れない。

ちなみに私はご飯の上に味噌汁をかけて食べるのが好きだ

実に味わい深い。

ワカメがご飯の上にペタリと張り付いていたりすると最高である。

猫まんま…などと人は言うが、猫だけにこんなうまいもん食わしておくのはもったいない。

もう何年も食べてないけど。

丼飯文化の日本人にしてみれば、ご飯の上に何かを掛けて食べるというのは極めて普通のことなのであろう。

いったい、冷たい味噌汁とはいかなものなのか…

 

しばらくすると冷や汁セットが姿を見せた。

ご飯におしんこ、煮物に冷や汁という面々。

さっそく冷や汁をご飯の上にドバッとかけてみる。

ふーむ、温かいご飯と冷や汁の相性は悪くはない。

味噌汁というよりは魚と豆腐をすり潰した出し汁、といったところか。

きゅうりと大葉が単調になりがちな味のアクセントになっている。

味噌汁ぶっかけご飯は味噌汁の中にご飯が浮いている、といった豪快さがあるが、

冷や汁の場合はご飯の上におかずとして汁を掛ける、という上品な感じがする

上品なカレーライスはルーが別容器に入っていて、

ご飯にちょっとずつ掛けて食べるが、冷や汁もそんな感覚に近い。

いっぺんにドバッと掛けて食べるとはしたないが、

ちょっとづつ掛けて食べるとお上品、ってなところか。

ちなみに味噌汁ぶっかけご飯の場合は、ご飯が冷たくて味噌汁が熱い方が美味です。


最初はお上品に食べていたが、最後は面倒くさくなって、残りをドバーッとご飯の上にぶちまけてみた。

やっぱりこうじゃなくちゃね。

大人食いならぬ日本人食い

ごっつぁんでした。


調べてみると冷や汁とはもともと宮崎の暑い夏を乗り切るための食べ物らしい。

食欲がないときにもさっぱりとしていて栄養価の高い冷や汁ならば食べられる、ということだ。

季節はまだ4月…冷や汁にはまだ早い季節だったんで誰も食べてなかったわけですね。

納得。


ご飯が先か味噌汁が先か、カレーが先かライスが先か、そんなことを考えながら、指宿へと向かうんであった……


●手作りの店「ぶうぶ」

 宮崎県宮崎市橘通東3-49

 0985-25-8287


鍋焼きラーメンの繰り出す三位一体攻撃とは?~四国・九州旅情編その2~

さらに旅は続くんであった。

高松から大歩危、小歩危を越えて、一路、土佐へと向かう。

旬のカツオを食いたいぜ!という食念が坂本龍馬の故郷へと向かわせる。

カツオ、いただきました。

土佐のカツオはわら焼きでボワーッと一気の強火であぶる。

見た目も華やか。

表面はカリカリ、中身はジューシーで、おいしゅうございました。

しかし、今回はカツオの話ではないんである。

高知県須崎市に眠る、まだ見ぬ強豪「鍋焼きラーメン」を食べにいくのであった。

鍋焼きラーメン…誰もが想像つくことと思うが、鍋焼きうどんのうどんをラーメンに変えてみました、

という発想の基に生まれた食べ物、に違いない。

ちなみに50年も前からあるれっきとした町の名物だということだ。


ラーメンを煮込んだりしたら麺やわやわで、なんかこう歯ごたえのない、なよなよした食べ物なんじゃないか」と思いつつ、いざ須崎へ。

元祖・鍋焼きラーメンの味を忠実に守っているという「橋本食堂」へと向かう。

メニューを見ると鍋焼きラーメン、ごはん、ビール、以上、であった。

アツアツの鍋焼きラーメンをつまみにビールを飲むのか?

ちょいと疑問だ。

注文してから土鍋で煮込むためかちょいと時間が掛かる。

待つこと10分、土鍋が運ばれてくる。

蓋を開けるとグツグツと煮込まれたラーメンが姿を見せる。

スープを一口すすってみる。

あち

古き良き日本の鶏がら醤油スープである。

しかし、煮込んでいるだけあって透明感があるスープ、というわけにはいかない。

コクはあってそれなりに美味である。


ちなみに鍋焼きラーメンの7つの定義というのがあって以下の通りである。

1. スープは、親鳥の鶏がら醤油ベースであること
2.麺は、細麺ストレートで少し硬めに提供されること
3.具は、親鳥の肉・ねぎ・生卵・ちくわ(すまき)などであること
4.器は、土鍋(ホーロー、鉄鍋)であること
5.スープが沸騰した状態で提供されること
6.たくわん(古漬けで酸味のあるものがベスト)が提供されること
7.全てに「おもてなしの心」を込めること

ということだ。古き良き鍋焼きラーメンは、具まで指定されているんである。

まわりをみるとみんなご飯と一緒に食べている。

ので、慌ててごはんを注文する。

ラーメンを食べる

たくわんを囓る

ごはんをかき込む

この三位一体攻撃が鍋焼きラーメンのフォーマルな食べ方らしい。

グツグツ煮込んで濃厚になったスープで口腔内がもったりとしてきたら、

酸っぱいたくわんで口直しをする、というのが正しいのである。

最後には残ったご飯をスープの中に入れて、雑炊風にするのもまた良し、

あー、満腹満腹、ってなもんである。

季節は真冬。飲んだ後とかに食べたら幸せだろうなぁ、と思う。

夏は勘弁

鍋焼きラーメンが全国区になれない理由もそのあたりが原因かと。

冬はいいけど夏はちょっとね、じゃ悲しすぎるぜ鍋焼き野郎!

ちなみに私がよく行くうどん屋では鍋焼きうどんは冬期限定である。


purin

さて、鍋焼きうどんも食ったし、次の目的地へ行こうかとブラブラ歩いていたら、

鍋焼きプリンなるものを発見した。

「やや、こ、これは…」

どうみてもプリンには見えない。

麺はマロン、スープはカラメル、具はシュークリームや黄桃などなど。

味は…なんか微妙っす。

プリン味のラーメンってな感じで。

まだラーメン味のプリンの方がうまそうだが、どんなもんでしょう?

●「橋本食堂」

 高知県須崎市横町4-19

 0889-42-2201

 営業時間:11:00~15:00

 休業日:日曜、祝日


本場・讃岐うどんはアナーキーか?~四国・九州旅情編その1~

GW特別企画をしてみることにする。

題してぶらーり四国・九州味巡りの旅。

どんな迷物に出会えることやら…

去年のことだが、ふと讃岐うどんが食べたくなって、高松に行ってみることにした。

ちょうどその頃、はなまるうどんの東京進出にともない讃岐うどんブームが沸き起こったが

前々から本場のアナーキーさを体験したいと思っていた。

信じられないくらいの激安価格、店とは言えない感じの掘っ立て小屋、全自動セルフサービスなシステム

ムムム、讃岐うどんおそるべし…である。

そんなわけで車でいざ高松へと向かったわけである。

3日後、高松に到着。なにせ高速を使わなかったもので時間が掛かる。

まさに自動車ぶらり旅の世界ですな。

讃岐うどん屋はだいたい2時過ぎには終わる。

うどんなんてもんは昼に食うもんなんだよ

という讃岐人の心意気が現れていると言えよう。

粋な讃岐人は夜にうどんを食わないのである…よく知らんけど

sanuki


見聞した結果、DEEP讃岐うどんを探し求めていたら、

ある一軒の店にたどり着いた。

「なかむら」

ここは讃岐うどん用語で言うところの製麺所タイプの店舗だ。

製麺所タイプとは元々は玉売りの製麺所で、副業でうどん屋もやってます的なノリの店である。

店構えは農家の納屋、 単なる民家風など外からはうどん屋とはわからない。

というか、店なのここ?という感じだ。

よって、一般店みたいにテーブルがあって、椅子があって、メニューがあって、店員さんがいて…

といったものは一切ない。

完全セルフサービス。

どのくらい完全かというと客の作業工程は以下のようになる

・店に入る

・食器棚から自分の丼を一つ選ぶ

・うどん置き場から大か小のうどんを選び、しかるにうどんを掴み取り自分   の丼に入れる。(釜揚げうどんの場合は、大釜の前で大か小かを告げて待つ)

・ネギ切り場で包丁を持ち、自分用のネギをせっせと刻む

・ダシが入っているタンクからダシを丼につぐ

・トッピング用の天ぷらなどを選ぶ

・お金を払う

以上、である

つまり何から何まで自分でやるということだ。

かってはネギがない場合は裏の畑から客が引き抜いてきていた、という話もある。

うーむ、こんだけセルフだとなんだか自分の家みたいな愛着さえ沸いてくる。

自然っていいなぁ~とさえ思う。

しかも、値段もいまどき学食価格の100円~

泣かせるぜ、讃岐野郎。

その県を代表する名物が100円で食えるところなんて他には絶対にない!

おそらくエンゲル係数もブッチ切りで低いのであろう。

県内総生産も鳥取・島根と肩を並べているかもしれない…

余談になるが、各種調べてみたら鳥取県と島根県はもの凄いライバル関係にあることが判明した。

地方交付税依存度 1位 島根 3位 鳥取(国からの補助金なしにやっていけない県)

地方債現在高  1位 島根 6位 鳥取地方債の県民1人あたりの借金高)

人口の少ない県 1位 鳥取 2位 島根

県内総生産の低い県 1位 鳥取 3位 島根

高額納税者の少ない県 1位 鳥取 2位 島根

コンビニの少ない県 1位 鳥取 2位 島根

などなど…

鳥取がわずかに島根を押さえてTOPの座を死守か

なんのTOPだかわからんが。

ちなみに香川県の県内総生産は低い方から数えて11番目である。

上には上があるもんだ。

今度、島根・鳥取問題についてじっくりと考えてみたい。

話は大きく脱線してしまったが、結局のところ讃岐うどんは作る楽しみが最大のごちそうだな、という話。

自分で作ったうどんを庭先で食べるのもまた風情。

讃岐式オープンテラスはのどかでよい。

ちなみにこの手の掘っ立て小屋風讃岐うどん屋は店にたどり着けないことでも有名。

本場の讃岐うどんは初心者泣かせの食べ物なんである。

●「なかむら」

 丸亀市飯山町西坂元1373-3
 0877-98-4818 

 営業時間:9:00~14:00 

 定休日:火曜

新宿3丁目の怪しい沖縄料理屋「城」で食べたヒージャーの刺身

新宿3丁目といえば、かってはオヤジ系飲み屋の巣窟みたいな場所であったが、

ここ数年、妙に近代化している

女子ウケするような店があちらこちらに出始めているのだ

よって若者がやたらと多く進出している

20代のサラリーマンたちは元気だ

合コンが繰り広げられることもあるだろう

しかしながら、そんな若者たちを一切寄せ付けないテイストを醸し出している店がある

沖縄料理の「城」もそんな店の一つだろう

 

城と書いて沖縄ではぐすくと読む

金城さんはかねぐすくさん、大城さんはおおぐすくさんになるわけだ

いまでこそ沖縄料理はブームといっていいくらいのにぎわいを見せているが、

ここ「城」はかなり年期が入っている

つまりオールド新宿3丁目テイストの店なのである

 

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店の看板が「城」の1文字だけ

沖縄料理ともなんとも書いていない

しかも2階にあるので、様子を伺うことも困難

何屋なんだ「城」って、店の前を通たびに思っていた

沖縄県人以外は普通に「しろ」と読むことだろう

「城」ってネーミングはなんかサパークラブな雰囲気が漂わないでもない

絨毯パブ系のイメージ

なんかヤバい感じの店なんだろうな、と思いつつもある時ついに入ってみることにした

これもB級魂のなせる技であろう

いまを遡ること10年近く前の話だ

 

入るとそこは絨毯パブならぬ畳の世界

陽気な沖縄ソングが流れている

なるほど沖縄料理の店だったのか

カウンターもあるが、迷わず座敷席へと向かってみる

なんかここの座敷はちょいとヘンなのである

アイドルのポスターやら生写真やら地図やら三味線やらいろんなもんが壁に貼られている

このセンスはダメダメ店かB級店かのどちらかだが、不思議と痛さは感じない

なーんか、馴染んでる感じだ

 

実はそれまで沖縄料理にはあまり縁がなかった

ゴーヤチャンプルは知っていたが、本場モンは食ったためしがない

そんな人間が沖縄料理のメニューを見るとどうなるか?

これが見事にサッパリわからないのである

スヌイ、スクガラス、スーチカ、クーブイリチ、マーミナ、チキアギ…

挙げたらきりがない…っつかほとんどわからない

グルメを自認する私であったが、未知の強豪に大挙出会った感覚だ

もちろんメニューにはそれらがなんであるかなど書かれてはいない

来る人はみんな知っているという前提なのであろう

初心者に優しくないところもB級っぽくてよろしい

 

なかでもものすごい心惹かれるネーミングに出会った

ヒージャーの刺身

刺身っていうからには生なんであろう

生で食うということは生で食べられるものなんであろう

魚…であればまったく問題ない

沖縄は南国だからして熱帯魚の刺身かもしれない

まぁ、食べられないこともないだろう

問題は魚じゃなかった場合だ

牛とか馬をヒージャーと呼ぶような気はしない

きっと沖縄特有の生き物なのだろう

ハブか?

「ハブ刺しはキツイねぇ」などと友人と話しながらとにかくヒージャー刺しなるものを頼んでみることにした

何が出てくるのかのお楽しみで、あえてヒージャーが何か聞かなかったのだ

チャレンジャーだね~

 

で、出てきたのはこれはいままでみたこともないようなあでやかな赤い色の物体

真っ赤も真っ赤、マグロの赤身どころの騒ぎではない

血の色…いや、赤いペンキの色だったわけですね、これが

 

見るからにヤバそうなテイストを醸し出している

何なのよ、これは

ちょっと後悔してみた

「この…赤さはヤバいよね…」

「けものの色だよね…これは」

「それも、普通刺身で食べないけものだよな…きっと」

 

そんな会話を交わしながら恐る恐るその赤い物体を口に入れてみた

案の定、生臭い

気分は泣きたい

とにかくヒージャーって何なんだ

そのことだけが頭の中を駆けめぐる

 

しかも、刺身の盛りがハンパない

こんなにサービスしなくていいのに…

友人は「案外、いけるね」などと言いながら、つまんでいる

私は好き嫌いはまったくない、といっても過言ではないが、

何を食べているんだかわからない不安感&この生臭さが異様な不安を与える

歯ごたえも刺身で食うもんじゃない感じのゴツゴツ感がある

私1:友人:3の割合でなんとか一皿平らげた

 

で、おやじさんにヒージャーって何んですか、と聞いてみた

「ヒージャーは山羊だよ、沖縄じゃあらゆる部位を食べるね」

山羊?山羊は刺身で食べないだろ

っつか、羊ならジンギスカンで食べるが、山羊だぜ

山羊さんのお乳…確かに生臭いです、クセありまくりです

山羊さんのお肉…上に同じです

うんメ~、という感じではありません

あしからず

 

沖縄深いぜ

山羊を食べる民族だぜ

もう沖縄には足向けて眠れねぇぜ

とかわけのわからんことを考えながら、またも未知の強豪に挑んでいった…

海ぶどう…うんめぇー

プチプチ感がたまらないぜ

そんなわけで、ヒージャーの悪夢を追い払うべく、チャンプルなんぞに舌鼓をうつのであった…

 

私がはじめて本格的な沖縄料理に出会った店…

新宿3丁目「城」

沖縄家庭料理とマニアな雰囲気を堪能できる

素敵なB級スポットである

 

●沖縄料理「城」

 東京都新宿区新宿3-8-5中川ビル2F

 03-5269-2269

 営業時間:18:00~5:00

 定休日:月曜

なんでんかんでんと私~替え玉選手権地獄編~

「なんでんかんでん」というと『マネーの虎』の川原ひろしを思い浮かべる人も多いことだろう
ま、「なんでん」は別にB級ではないが、Mr.なんでんかんでんこと川原ひろしが超B級野郎だということに気がついている人はいったい何人いるのだろうか?


私となんでんの出会いは、なんでんがオープンした日より始まった

羽根木に引っ越してきて3日後になんでんがオープンしたわけだ


当時、なんでんでは替え玉選手権というのをやっていて、

替え玉9つを45分以内にすれば、5000円もくれるというのだ

これは学生にしてみればうれしすぎるご褒美だ

日頃、ラーメン二郎の大ダブルで鍛えた胃袋にしてみれば

替え玉9つくらいでもない、と本気で思っていた

1週間ほど前から、二郎の大を食べ続け、胃袋の拡張に努め

いよいよチャレンジの時を迎えた


sanbaka

(これは3バカラーメン。社長の脳内アドレナリンが3バカ

という形になって現れた作品といえよう)

 

カウンターに座るなり「替え玉チャレンジします」と告げる

1杯目が出来上がったところでいよいよスタートだ

軽快に飛ばす

1杯を約2分30秒ペースというハイピッチ

まわりのお客さんたちも「これは楽勝だね」などと声を掛けてくれる

注目の的、であった

6杯を食べ終えた時点で、まだ15分しかたっていない

思えばこのハイピッチが大失敗だったのだが…

 

ここからまったく入らないのである

ただでさえ固い麺が噛みきれないゴムのように感じる

実際、ゆで時間はわずか10秒程度

はりがね、だとか粉落としなどといわれるくらい固麺なのであった

 

じりじりと時間が過ぎていく…

なんとか気合いで麺をかきこむ

10分たってようやく7杯目を食べ終わる

残り時間はあと20分

 

地獄の8杯目

もうだめだ

難攻不落の二郎の麺増しを完食した私でももう入らない

カウンター越しにニヤニヤと笑う男がいる

Mr.なんでんかんでん、川原ひろしだ

そのシルベスタ・スタローンに似た濃いい顔を見ていたら

完全に消えていた闘志に再び灯がともった

 

なんとか8杯目を食べ終える

しかし、残り時間はあと7分

お客さんたちはやんややんやの大声援

中には私が完食できるか否かで掛けている人たちまでいる

「もういい、よくやった食わなくていいぞ」という声もあれば

「死んでもいいから食え!あと3分だぞ」

残り1分

あとはスープと若干の麺を残すのみ

胃袋に納めてなんとか完食した

 

みんなの拍手が鳴りやまない中、

ダッシュで外に出た

その瞬間にドバーッと大洪水のように嘔吐した

 

その後、自主的に店の前を掃除した

それからである、私とMr.なんでんかんでんとの付き合いが始まったのは

私が誰に言われずとも黙々と清掃する姿にいたく感動したらしい

私が雑誌のライターになって、各雑誌になんでんを紹介した経緯もあり

店はいつの間にか大行列店へと変貌していた

いま創業当時からなんでんにいるのは社長とケシャム(おもろいパキスタン人。ビザの関係で日本とパキスタンを行ったり来たりしている)それに私だけ、と言われるくらい店に馴染んでいたりする

あくまでも客でしかないんだが

 

しかしながら、社長・川原ひろしはいろんなことに手を出すのが好きだ

しかも必ずと言っていいほど失敗する

一番ひどかったというか笑ったのが、「被るだけで毛が生えてくる帽子」の開発への投資。

んなもん、売れねぇって口を酸っぱくして言ったんだけどね。

なんでも、『マネーの虎』で放映するとパクられてしまうので、極秘で援助してくれませんかといった手紙が来たらしい

いったい、どんなもんが出来上がるかと思ったら、これが磁気を埋め込んだだけのとんでもなくダサイ帽子だった…どんなに髪の毛が不自由でも絶対にかぶりたくない感じの

 

結局、500くらい作って20くらいしか売れなかったらしい。

この世に20人もそんなもんにすがらなければいけない人がいること自体、驚きであったりするが、そこまで切羽詰まった事情もあるのだろう、ナムサン。
しかし、こんなに商売勘がない人間が、ラーメン屋としては成功を収めたのが不思議でならん今日この頃です

あ、ラーメンの話、全然書かなかったわ

まいいか

 

●「なんでんかんでん」

 東京都世田谷区羽根木1-8-7

 電話:03-3322-2539

 営業時間:18:00~お客さんがいなくなるまで

 定休日:無休