B級グルメを愛してる! -2ページ目

大井町沿線を巡る極上酒場の旅 その② ~大井町「大山酒場」の割烹着軍団~

大井町に着いた我々は、駅すぐ横の「東小路」へと突入した。

ここの横町は昭和24年頃からあるという、なかなかの老舗横町で、

マニアにはたまらん感じのオーラが出まくっている。

しかもこれがまたいい飲み屋が並んでいるというのだから、

片っ端から攻めたくなってくる。


というわけで、まずは界隈でも大箱といえる「大山酒場」へと向かった。

ここは昭和27年オープンと老舗の風格は十分で、

檜の一枚板のカウンターや作りつけのいすがなんともいいムードを醸し出している。

で、ホールスタッフは女性(おばさま)ばかり。

なんともいえぬ温もりが店内に包まれている。


大山酒場
(白衣の旧天使たちがお客様をお出迎え)


なにを飲もうかと思案していると

ここに来たら、これしかないでしょう」と音楽界一の居酒屋通K氏がこう言った。

「ここは6合5勺の特性徳利で飲む熱燗を味あわないと」

熱燗を注文すると噂の特大徳利を持っておかあさんがやってきた。

おぉ、なるほどデカイ徳利だ。

なみなみと酒が入っていたら、とてもじゃないけど注げやしない。

牛乳瓶底の眼鏡のような厚手のグラスに注がれた酒をきゅっと一杯。

うむ、大衆酒場の味がする。

なんだかいろいろと混ざったような複雑な味、とでもいうのだろうか。

酒に年期が染みついている、といった感じの味だ。


大山酒場
(厚手のグラスがなんともいい)


メニューを見るとハムエッグス、というのが目に入った。

エッグス、というのだからきっと目玉焼きが二つあるのだろう。

燗酒にハムエッグの取り合わせも意外といけそうだ。

他にも定番の煮込みにぬたをオーダー。

ザ・煮込み、といった感じの醤油味だ。


大山酒場
(燗酒と意外にマッチするハムエッグス)



大山酒場
(やはり煮込みがないとはじまらない)


ふとみると気になるメニューがいくつかある。

なんだかしらないがオムレツの種類が多いのである。

プレーンからチーズ、納豆、とろろオムレツなんてのもある。

この手の店でこういった洋風なものはハズレが多いのだが、

見た目も味もなかなかのものだった。



大山酒場
(見た目もキレイなプレーンオムレツ)


シブイ居酒屋というと酒の肴は和物に限る、とは思うが、

ハムエッグスにオムレツなんてのも楽しいモンだ。

割烹着姿のおばさまたちがせわしく働く、大山酒場を後に

次はどこに行こうか…


●大山酒場

東京都品川区東大井5-2-13 

電話:03-3474-4749

営業時間:17:00~22:30

定休日:土日祝








大井町線を巡る極上酒場の旅 その① ~中延「忠弥」のオキテ~

下町の次は大井町線沿線が熱い!

というわけで、なかなかレアな中延、大井町、旗の台あたりを攻めてみることにした。

メンツは前回同様、B級居酒屋研究会な面々。

特に某メジャースカバンドのK氏(ベース担当)はB級居酒屋のオーソリティともいえる存在で、

業界でもトップクラスの知識を保有しているといっても過言ではないだろう。


そんなわけで、まずは中延の「忠弥」へと向かった。

ここは営業時間が17:00~20:00までのわずか3時間のみという店で、絶品のモツ焼きが評判の店だ。

5時30分に訪れたが、既に満席という盛況。

我々も人のことは言えたもんではないが、「いったいこの人たちは何をしているのか?」と気になってしまう。


まずはビールを注文。

食べ物は紙に書いて渡す仕組みだ。

レバ刺し、酢の物に焼き物をオーダー。

このオーダーシステムが初心者にはくせ者で中々に難しい。

まず食べたいものを書く。

もつ焼き×4

どて×4

ハラミ×4


しかし、このまま紙を出したのではオヤジさんに怒られる。

タレなの?塩なの?ちゃんと書いてくれないと

で、ここで「塩でお願いします」とかいってもダメなのである。

ちゃんと紙に「塩」と書かなければならない。


どて×4 塩


でもって、塩タレが混在する場合は、全品の横に塩、タレ表示を書かないとダメなのである。

私も何度も訪れているが、ついうっかりこのシステムを忘れてオヤジさんに注意されることしばしば。

店に入る前に一度、システムについて確認しておくのがいいだろう。



そんな儀式が終わるとようやく食べ物にありつける。

もつ焼きは塩味で透き通ったスープがなかなかのもの

もつにもいい具合にスープが染みていて、何杯もお代わりしたくなる味だ。


忠弥

(絶品のもつ焼き)

レバ刺しはわさびかニンニクを選択。


忠弥
(わさびとレバ刺しの組み合わせも良い)


うーん、じっくりと腰を落ち着けて飲みたいところだが、今日はまだまだ先が長い。

メニューを見ると「カクテル」なるものがあった。

ドリンクはビール、日本酒にこのカクテルの3種類のみである。

が、ここでも「カクテル、お願いします」とうかつには言えない。

常に忙しい店なので、店員さんが聞きやすいタイミングでドリンクもオーダーしなければならないのだ。

ベストは料理が出された瞬間か。

特に気をつけなければならないのは、店のお母さんに注文をするときで

ヘンなタイミングで声を掛けるととりあってくれなかったりする。

店の中ですでに空気というものができあがっているようで、

それを乱す者は渇を入れられるという訳なのである。



忠弥
(これが謎のカクテル)


カクテルの作り方は実に大ざっぱで、ジョッキに適当に焼酎をつぐ。

この焼酎は瓶詰めされており、銘柄は不明。

もしやここにもなにか混ざっているのかもしれない。

で、その上にジンジャエール、ビールを適当に注ぐ。

店オリジナルのホイス、といってもいいだろう。

じっと作っているのを見ていたら、ビールを入れ忘れたりしていた。

それもまたご愛敬、ということか。



焼き物の部位は俗名が使われていたりして、なんなのか謎のものもある。

どて、とあるから大阪のどて焼きかとおもいきやとんでもない部位だったりした。


忠弥
(ハラミはタレでいただいてみる)


その部位がどこか知った友人たちは一様に食べるのを躊躇している。

と、共食いじゃねぇか、これは…」と一人が言った。

そう、牛のアソコなんですな。

味は皮みたいにパリパリとしていて、なにも知らなければ普通に美味。


忠弥
(アソコな感じのどて)


まずは精力を付けて、今日の戦いに望む、ということで、さらりと店を後にした。

目指すは大井町。

駅前の小路にはB級居酒屋がひしめいているのであった…


●「忠弥」

品川区中延2-10-9

電話:3783-2257

営業時間:17:00~20:00

定休日:土、日、祝日

下町を巡る極上酒場の旅 その③ ~曳舟「赤坂酒場」の国際感覚とは?~

そして、いい感じの我々は3軒目の店へと向かった。

店の名前は「赤坂酒場」。

あたりはシャビーなことこの上ないが、店はにぎやかであった。



赤坂酒場
(正しい佇まいの大衆酒場である)



で、何を飲もうかと見てみるとなんだか下町の酒場チックでないものがいろいろと並ぶ。

フランス焼酎 パリ野郎

カナダ焼酎 カナディアンロッキー

アメリカ焼酎 霧のサンフランシスコ


は?という感じだ。

どこからどうみても由緒正しい下町酒場なのだが、飲み物が尿だ…いや妙だ。

他にも人類最古の酒 ミード(はちみつ酒)とか謎のどぶろくとかがある。

とりあえずは、赤坂地ビールなるものを注文してみる。

地ビールとは謳っているが、その実はホッピービアである。



赤坂酒場
(ホッピービアな赤坂地ビール)


連れはチャレンジャーなのか、ミードに挑戦だ。

なんでもクレオパトラが愛した酒だということである。


赤坂酒場
(あまーい謎のミード)


なんでも蜂蜜を発酵させて造られた酒で、
その名も『シークレット・オブ・クレオパトラ』というらしい。

ハチミツが美容によいらしくクレオパトラも愛飲していたとのことだ。
ヨーロッパでは1万年以上前から造られており、“人類最古の酒”とされるという話だが、

ハチミツ酒なので甘いことこのうえない。

酒場で甘い酒ってのはさすがにいただけないのではと思うが、

そこは国際感覚あふれる大衆酒場なだけにこれもまた人生なのであろう。

やれやれ。

というわけで、我々はレバ刺しを肴に自家製のどぶろくなんぞを飲みつつ、たゆたゆと過ごす。

やはり大衆酒場というのはモツ焼きやレバ刺しにホッピー、というのが最強の組み合わせであって、

銘柄のいい吟醸酒や芋焼酎のロック、というのは気分ではない。

(やっぱりミードも気分ではない)


赤坂酒場
(やっぱレバ刺しっすよ、人生は)


怪しげな酒にそろそろ怪しくなり出した我々は次なる店へとまた向かうのであった。

目指すは本所吾妻橋…

果たして無事にたどり着けるのやら…


●「赤坂酒場」

東京都墨田区東向島2-30-9

電話:03-3611-5822

営業時間:17:00~22:15

定休日:日曜、祝日





下町を巡る極上酒場の旅 その② ~八広 「日の丸酒場」の謎のすすこ編~

続いてやってきたのは京成押上線の八広駅そばの「日の丸酒場」だ。

都内の人でも京成押上線などというものがいったいどこからどこまで走っているのか謎なくらい下町な場所である。

そんなわけで、駅の近くにあるのだが都内とは思えぬ寂しさが立ちこめている。

これが京成線沿線の風景なのであろう。

なにせここいらは木造家屋が恐ろしく密集している地域で、ひとたび火事や地震が起きれば連鎖的に被害が広がるという危険地帯なんである。

華やかさとは無縁の場所といってもいいだろう。



日の丸酒場

(下町の大衆酒場な店である)

というわけで、シンと静まりかえった街をとぼとぼと歩き店の前についた。

ガラリと引き戸を開ける。

店の中央に厨房があり、中では屈強そうな男たちがきびきびと動き回っている。

下町酒場通のK氏に聞くとなんでもこの店の初代は旧陸軍の近衛連隊にいたとのことだ。

よって「日の丸酒場」なり。

店員のきびきびとした動きも軍隊式トレーニングの成果なのかもしれない。

メニューを見る。

にこごり、肉豆腐、とんかつ、魚フライ、しめさばなどを注文。

とんかつなどはこれで300円だ。


日の丸酒場

(銀皿がなんともいえぬ味わいを醸し出す)



日の丸酒場
(牛肉の味がしみでたスープがたまらない)


飲み物はもちろん焼酎ハイボール

キクスイの炭酸を入れたグラスに元祖酎ハイの素をいれたシビレる逸品である。

このハイボールを飲むためだけに店に来てもいいくらいだ。


変わったところではこの手の店では珍しいビーフシチューなどもある。

とりあえず頼む。

他には「すずこ」なるものもあった。

これも頼む。

何が出てくるかわからないのが楽しみなのである。

ビーフシチューは老舗洋食屋で食べるような懐かしい味わい。

大衆酒場でビーフシチューとは初の試みであるかもしれない。

が、予想に反してこれがなかなかハイボールと合う。

シチューをチビリチビリとすすりながら、ハイボールを飲むというのが

こんなに気持ちがよいとは知らなかった。


日の丸酒場

(洋食屋チックなビーフシチュー)


で、やってきたすずこがこれだ。


日の丸酒場
(すずこ?)


おい、誰だ、いくら頼んだの?」とK氏は言ったが、よく見るといくらではなくすじこであった。

すじこ……すずこ……

なるほどねぇ、としか言いようがなかった。

でもって、とんかつよりも肉豆腐よりも高い500円であった。

うーむ、謎の設定である。


下町テイストなハイボールをガンガン飲みながら、大衆酒場でのひとときは過ぎていく。

次なる店はどこへ行こうか…


●「日の丸酒場」

東京都墨田区八広6丁目25-2

電話:03-3612-6926

営業時間:17:00~23:30

定休日:不定休





下町を巡る極上酒場の旅 その① ~浅草 正直ビアホール編~

飲み屋は下町に限る」と断言してはばからない男がいる。

超メジャースカバンドのベースK氏である。

彼は世田谷に住んでいるにもかかわらず、週に1度、多いときには3度も下町の居酒屋へと繰り出している。

マニアとかいうレベルではない。

しかもK氏はツアーなどで訪れる街ごと渋い飲み屋を探し歩いているという筋金入り。

芸能界のB級酒場王と呼ばせていただきたいほどの御仁だ。

なにをかくそう私も下町を堪能したいがために吾妻橋に住んだことがある。

まだ陽の高いうちから酒をあおってうまいつまみに舌鼓を打つ、というのに憧れていたわけだ。

というわけで、今回はK氏とともに下町をグルグルリとまわってきた。


まず最初に訪れたのは「正直ビアホール」である。

ここは前にも訪れたことがあるので、詳細は省くが(http://ameblo.jp/b-classgourmet/day-20060621.html

浅草テイストにあふれた素敵なビアホールである。



正直ビアホール

(今度はちゃんと飲む前に撮りました)


6時過ぎに訪れたが先客はなく、しばしお母さんと話し込む。

と、大昔の常連客、というのがやってきた。

お母さんも顔に見覚えがあるらしいのだが、名前どころか何者かもわからない様子。

なんでも以前来たのは10年近く前で、その頃はよく来ていたとのことだ。

お母さんは「ちょっと待って、絶対に思い出すから」と言って記憶の糸を会話から必死にたぐり寄せているようだ。


しばらくたった頃だった。

「思い出した!自衛隊の人でしょ!

と突然、お母さんが叫んだ。

ご名答。

確かにその方は自衛隊の教官だった。

市ヶ谷駐屯地にいた10数年前はよく来ていたらしく、その頃の思い出話に花が咲く。

市ヶ谷以降、青森や富士の方に行っていて、奥様とも自衛隊内で知り合ったとのことだった。

で、自衛隊のあれやこれやといろいろと話を聞かせていただいた。

お客さんは皆、友達。

なんともアットホームなビアホールなんである。



正直ビアホール

(こんな感じの素敵なビアホール。

雰囲気を壊す方はご遠慮ください)


が、中には招かざる客というのもいる。

席、空いてますぅ~

と語尾をのばしながら茶髪な感じの女子と軟弱そうな男が扉を開けた。

席はちょうど2席空いていた。

この席ね、予約で埋まってるから」とおかさんは体よく追っ払った。

「あぁいうのはいいのいいの」

なるほどあぁいう若人は来ちゃダメなんですな。

店の雰囲気を壊す感じの方はご遠慮いただきたいということだ。


そんなわけでビールを5杯ほど飲んで、店を後にした。

なにせ下町ツアーは始まったばかり…

ここからが本番なんである


獣を食らおう!ジビエ天国 ~逗子「またぎ」の鉄砲オヤジの巻~

ジビエなどというとなんだか上品なフレンチ、みたいなイメージがあるが

実のところ獣肉なわけである。

野鳥、猪、熊、鹿

野山を駆け回り、空を飛び回る野生の動物たちを鉄砲でパーンと仕留めて、

ハイどうぞと客に出す店のことを「ジビエの店」などと呼ぶのは気分ではない。

やはり、もっとハードでなけりゃイカン。

逗子にそんな期待に応える「またぎ」という店がある。

まさに猟師の家、と呼ぶに相応しいゴッツイ店だ。


店内には長方形の巨大な囲炉裏がある。

客はこの囲炉裏の前に陣取って、獣肉を思い思いに焼く、といった趣向だ。

一応、店にメニューはあるが、誰もメニューを見て注文している人を見たことがない。


またぎ

(またぎな感じの獣肉メニューはあるのだが…)


オヤジが取ってきた獣肉を目当てに来ている客ばかりなので、

すべからくおまかせでOK、ということなのだろう。

そのあたりも猟師の住む山小屋に来た、という感があってよい。


そんなわけで今日おまかせでお願いした。

まず、出されたのが小鳥である。

小鳥…文字通り小さな鳥だが、なんの鳥だかは教えてもらえない。



またぎ

(謎の小鳥…脂がのっていて美味)


一説によると捕ってはいけない鳥、という話もあるが、逗子の山で捕れる鳥らしい。

この小鳥がかなり脂がのっていて良いのだ。

墨で焼いていると脂がポタポタと滴ってくる。



またぎ

(火の中心を外してじっくりと焼く)


するとオヤジが「この小鳥、焦がさないように焼くとすげえうめぇんだぞ」と教えてくれた。
脂が滴るたびにボッと火が強くなり、鳥を焦がす。

そこでを五徳を網の下に入れ、火からの高さを調整する。

今度は脂が垂れ落ちて火が強くなっても肉までは届かない。

これで良し。

こういう野生の肉は強火にかけずに火から遠ざけてじっくりと焼くのが良いのだ。

で、焼き上がったのがこちら。



またぎ

(いい感じに焼けた小鳥様)


ここまでじっくりと焼けば頭から骨まですべてガブガブといける。

フレンチでいうところのジビエなどという軟弱なものではこうはいかないだろう。

続いてはバチマグロの刺身を軽く炙っていただく。

もちろん刺身でもいける。


またぎ

(バチマグロの刺身。生でもいけます)


続いては鹿だ。

これもオヤジが鉄砲でババンと撃ってきたやつだ。

オヤジはなにより猟が好き、という鉄砲オヤジで、

お客の予約が入ったりすると猟にいけねぇじゃなねぇか、とグチをこぼすほどである。

店には射撃大会の賞状が何枚も飾られている。

まさに猟師の店、といったところであろう。

またぎ

(まさに野生の味。ごっつりとりた鹿肉)


野生の肉は食べでが違う。

牛とか豚とかとはあきらかに違う、独特の風味。

体の内に眠る野生が目覚める気がしてくる。


基本的に酒類は持ち込みをする。

この獣肉に負けないワイン、日本酒などを。

いつも一緒に行くメンバーが利き酒師やバーの店主、肉関係の店主などなので

酒類に関してはほぼ万全。

ごっつりとした獣肉に実に合う酒が用意される。

他にも自家製ゆず胡椒や黒七味、様々な塩などの調味料も持ち込まれ、

思い思いの味付けで肉を食らう。

なにせ猟師の店なわけだから、そういうことは自分でやるのである。


そして、〆にはシシ鍋をいただく。


またぎ
(獣肉コースのしめを飾るに相応しい重厚なお味)


これがねー、不思議とガツガツはいっちゃうんですよ。

かなり肉食べてもうお腹いっぱい、ってはずなんですが。

イノシシも単体で食べると野性味にあふれ苦手な方も多いと思いますが、鍋ならばイケる。

イケイケGOGO!コイケヤ、ってなもんである。

最後は雑炊とかすいとんにしてスープまで全部いただきます。

ごちそうさまでゴンした。


も、見た目がそのまんまの鉄砲オヤジが捌く獣肉をただ目の前で焼くだけ、というシンプルな構図の店だけに

客側も山小屋を訪れるような気分になる。

オヤジ、今日の猟はどうだった?」と猟の話で盛り上がったりして、これもまた極上の酒の肴。

がっつり食って、がっつり飲んで、これで次の日はハードなウンコが出てくること間違いなし!

獣肉パワーを満喫できる素敵な店なんである。


●「またぎ」

神奈川県三浦郡葉山町





バクダンと大相撲中継 ~立ち飲み屋 五反田「呑ん気」の憩いタイム~

ほんの軽飲みしたい時に立ち飲み屋というは実にありがたい存在であったりする。

夕方の小1時間、うらぶれた時間を過ごすために五反田にある「呑ん気」に訪れた。

5時をちょいと回ったくらいの時間だったのでまだ客は3人だけ。

店のオヤジと話しながら大相撲観戦にうつつを抜かしていた。

また今場所も朝青龍が優勝すんだろうな

とかなんとかいいながら、焼酎をあおっている。

なんとのどかな風景だろうか。



呑ん気
(激安メニューが並ぶ)



オヤジさんはアフロヘアーで石立鉄男がちょっとつぶれた感じのなんとも愛嬌ある顔立ち。

おかみさんはデーンとした豪快な感じで、こちらも存在感がある。

50種類以上はあるおつまみは概ね、200円と300円

キャッシュ・オン・デリバリーなので、灰皿に小銭を入れている人を多く見かける。



呑ん気

(スパサラ てんこ盛りで200円也)


まずはビールを注文して、スパサラ明太イワシを注文。

スパサラはてんこ盛りで200円。

明太イワシもガッツリと食べでがある。



呑ん気

(明太イワシ 300円也)


相撲の取り組みはとととんと進み、結びの一番、朝青龍-白鵬戦を迎えようとしていた。

オヤジも調理の手を休め、テレビに見入っている。

時間はまだ6時前。

ポツポツと訪れる常連は何の仕事をしてるんだかわからん感じのオヤジばかり。

これまた立ち飲み屋らしい風景である。

オヤジは常連が来るたびに「おかえりなさい」と挨拶をするが、これがなんとも温かみがあってよい。

立ち飲み屋でありながら、ふれあい酒場のような温もりを感じる。

取り組みは朝青龍が貫禄勝ちし、単独で1敗をキープ。

店の客たちからは一斉にため息が漏れた。

これで今場所も終わったようなもんだね…」とオヤジもがっかりとした様子だ。

なんといういい光景だろうか…

夕暮れ時の立ち飲み屋と相撲中継というのは実にマッチしている


6時をすぎるとサラリーマンたちがどっと押し寄せてきた。

それまでのどかな雰囲気が一変し、店が活気づいている。

店のあちこちから「バクダン お願い」の声が掛かっている。

バクダンとはこの店の名物で、焼酎のビール割りだ。



呑ん気
(バクダン 280円也)


バクダンはすっきりと飲みやすく、グイグイといける。

サワーみたいな甘ったるさがないだけに料理と良くマッチする。

バクダンとモツ煮込みを頼む。


呑ん気
(モツ煮込み 200円也)


モツ煮込みはもたっぷりとモツが入って、わずか200円というのがありがたい。

その昔は「やけ酒」ってのがあって、店の奥に皿を投げてたたき割るコーナーもあったという物騒な店だったが、

いまは和気藹々な家庭的雰囲気を醸し出している立ち飲み屋、といった風情だ。


夕方から酒をあおっているようなダメオヤジの時間は終わり、

サラリーマンタイムへと変わるとそろそろおいとまの時間か。

まったりとした時間が流れる、夕暮れ時の立ち飲み屋の空気が結構、気に入っている。


●「呑ん気」

東京都品川区西五反田1-2-6

電話:03-3490-5719

営業時間:16:30~23:00

定休日:土、日、祝日












哀愁のぴょんぴょん舎 ~ラゾーナ川崎の「ぴょんぴょん舎オンマーキッチン」~

川崎駅前に出来たラゾーナ川崎プラザ に行ってきた。
シネコンやらビッグカメラやらがあって、なかなかツカエそうな施設である。

チッタもいいが、ラゾーナの方が規模が圧倒的にデカイ。

お台場チックな施設といえよう。


で、こういう場所のレストランなんてものはB級グルマンには縁遠い店ばかりであるからして、

興味も何にもなかったりする。

チラとラインナップをみてみると中目黒で人気のジンギスカン屋「くろひつじ」が目立つくらいで、

これといって行ってみたくなるような店がまったくない。

いくつもの店が寄り集まった屋台村のようなフードコートもあるが、

どうもこういう場所は落ち着かなくていかん。

かつてのデパートの食堂のような趣があれば別なのだが、

それもまた望むべくもない。

というわけで、普通ならば素通りするところなんだが、

ふと見ると「ぴょんぴょん舎」の名前があった。

盛岡の冷麺の名店である。

私も昨年春に訪れて美味に舌鼓を打っている。

http://ameblo.jp/b-classgourmet/day-20060512.html


ぴょんぴょん舎といえば、昨年銀座に店を出店しており、

ラゾーナ店が岩手県外2店舗目になる。

まさか本店と同じ味は望むべくもないとはわかっていてもついつい足が向いてしまった。

ぴょんぴょん舎オンマーキッチン」と名付けられた店は果たしてどんなお味か?



ぴょんぴょん舎
(フードコート内だけに騒がしい)


店にはちょっとしたカウンター席があり、ここならばフードコート内の喧噪の中で食べなくて済む。

盛岡冷麺(850円)を注文し、できあがりを待つ。

ものの2,3分でサクッと出来上がる。

なんだかとても早い。

こういう店だけに早い、というのは必須条件なのであろう。


で、できあがりを見てみるとそれは似てはいるんだがちょこまかと違う。


ぴょんぴょん舎
(ラゾーナの冷麺)



pyonoyon
(盛岡本店の冷麺)


比べてみていただければおわかりかと思いますが、見た目の美味さ感というのがまったく違う。

芸術品と落書きくらい見た目が違う

それはまぁよい。

なにせここはスピード勝負の店だ。

見た目で劣るのは仕方がない。

問題は味が良ければいいんだが…


と、あることに気がついた。

ラゾーナの方にある肉だ。

ドライフーズの肉

これを私は昨年食べたことがある。

玉川高島屋で購入したぴょんぴょん舎の冷麺セットに似たようなドライフーズがついていた。

もしかして、と私の脳裏に黒い霧がもやもやとかかりだす。

で、食べてみる。

これは市販されている冷麺セットの肉なんじゃなかろうか、という疑いが濃くなる。

こういう仕掛けがあったのか…


とはいえ、あのツルツルシコシコの麺は健在であった。(それは冷麺セットでも味わえたが)

それでよかろう、多くは望むまい。

なにせここはフードコートなんであるから…

やはり食事というのは店の雰囲気、というものもものすごく大事なんだなとあらためて確認した次第です。

やれやれ


●「ぴょんぴょん舎オンマーキッチン」

神奈川県川崎市幸区堀川町72-1

電話:044-874-8057

営業時間:10:00~22:00

定休日:無休


ロックンな職人が魅せる華麗なフィフティーズダンス ~町田「69’N’ROLL ONE」~

皆様、あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

というわけで、ラーメン取材の続きをば。


今回のラーメン取材では店主の皆さんにいろいろと話が聞けて非常に面白かったわけだが、

中でも町田にある「69’N’ROLL ONE」(ロックンロール ワン)の嶋崎順一氏はロックンンなポリシーが尋常ではなかった。



ロックンロールワン

(ロックンな店構えのラァメン家)



氏のスタイルはご覧のようなロックンローラー、しかもフィフティーズスタイルである。

なー、みんなオレってBIG?」(byアラジン)の世界である。

まず氏は営業中は一切、口を開かないという。

その理由を島崎はこういう。

お客さんとオレとの真剣勝負は、お客さんが店に入ったときから始まっている。

挨拶などしなくてもEYE to EYEでわかりあっているんですよ

なかなかにロックンな解釈である。

もちろん、一番の理由はラーメンを作りに集中したいため、とのことである。


そう氏のラーメン作りには他のものを寄せ付けぬオーラさえ漂っているのだ。

氏が心がけているのはあらゆる無駄を省くこと、だという。

最近のラーメン界では獣&魚介のWスープがちょっとしたブームとなっていたが、

この店で出されるのは比内鶏100%の純然たる鶏スープ

重層的な味ではなく、あえてシンプルスープにこだわったという。

いまはスープを作るのにいろいろ入れるのがはやりだけど

どうもキレとかスッキリ感が感じられない。

味がボヤけるんだよな。

じゃ、余計なものは取っちゃえ、ってことで生まれたのがこのスープ。

比内鶏じゃなきゃできないスープだぜ、ヨロシク

ってな話である。

新しさよりも懐かしさ、

インパクトよりも味わいをテーマに考えに考え抜いたというわけだ。


で、氏はこの店を一人でやっている。

スープ、麺作りはもちろん、営業中も一人のみ。

麺茹で、スープ作り、具材の盛りつけなどをすべてやるわけだから

それこそ一切の無駄な動きがなくこなさなければならないというわけだ。

その華麗なるロックンなラーメン作りが以下である。



ロックンロールワン

(流れるような動きはまさにロック!)


味もシンプルならばなにからなにまですべて一人でやってしまうこともある意味、シンプルだ。

一人でもこれだけ素晴らしいラーメンが作れる、ということでは、

これからラーメン屋を志す人に希望を与えることだろう。

1/26発売の「一個人」誌上でも、ラーメン評論家陣の高い評価を受けていることは言うまでもない。


ロックンなリズムを刻む店主を見ているだけでも、相当幸せになれることは間違いない。


●「69’N’ROLL ONE」

嶋崎氏曰く「うちに来たいお客さんはnetで探してでも来ますよ」とのことなので、探してみよう!

営業時間:11:30~18:00頃(1日限定100食)

定休日:不定休


藤巻激場最終章 ~幻の原稿の巻~


雑誌の企画がちょいと変更になって、お店を普通に紹介する記事になってしまった…

で、せっかく書いたので当初掲載予定だった原稿を載せておこう。

ちなみに「一個人」ラーメン大特集は1月26日発売です。

私は巻頭特集記事を書いてますので、よかったら読んでみてください。

「丼一杯でタイ料理を表現する男」プロ料理人・藤巻将一

世の中にはとんでもないことを考え出す人間が多々いるが、ラーメン業界、いや料理界において藤巻将一ほど破天荒なことを考えている人間はそう滅多にいるものではない。


藤巻は言う。

いまのラーメン業界に『プロの料理人がラーメンを作るとこうなる』というのを見せてやりたいんですね。丼一杯でタイ料理を、藤巻の料理を表現すること、それこそ22年間の料理人としての集大成がこのラーメンなんです

丼一杯でタイ料理のコースを表現する、という発想も飛び抜けているが、

その発想をきっちりと形にし、しかも期待以上の料理を作り上げてしまうのだから、

藤巻が豪語するのもうなずける。

丼に表現されているのは、前菜・ソムタム(青パパイヤのスパイシーサラダ)、

湯・トムヤムスープ海鮮・トードマンクン(海老と紋甲イカのすり身ゆで)、麺・バーミー(特製平打ち中華麺)、飯・パカパオナーム(鶏そぼろごはんの茶漬け風)とまさにフルコース。

ラーメンという形態ではあるが果たしてこれがラーメンなのか、と思わずにはいられないほど計算尽くされた独創的な麺料理である。

このトムヤム激場麺の価格は1500

ラーメンとしては飛び抜けて高い。

しかしこれが藤巻の完成型ではない。藤巻の考えはその遙か上をいっている。

いま目指しているのが一杯1万円のラーメン。

それも麺とスープだけのシンプルな物で具材は一切なし。

それだけを売る店を出そうと思ってます。

自分にとってのカッコ良さを目指していくとそこにたどりつくんですね。

店の名前は『藤巻激城』。

いまの激場ではなく激城。それこそ私の城ですから

1500円のラーメンも破格だが、1万円のラーメン、それもスープと麺だけで作りたいとは考えていることが恐ろしい。

逆に言うとそれだけスープと麺に自信を持っているという証でもある。

そのスープは自家製のトムヤムペーストに鶏油から作ったネギ油、ハーブ、地中海産の天然レモンなどが加えられたもので、

ラーメン王・石神に「甘・辛・酸・鹹・苦の五味が全て詰め込まれていて圧巻の味世界」といわしめる出来栄え。

あざやかな盛りつけ、工夫された具材などで「視覚、嗅覚、味覚、触覚を満たしてくれる一杯はまさに料理の理想像ともいうべき姿」と大絶賛である。


この一杯のラーメンを完成させるために費やされた時間は想像に難くない。

いままでにもエスニックラーメンはあったものの、ここまで完成度の高いものはなかったはずだ。

自らを「日本でタイの宮廷料理を作れるただ一人の料理人」と称するタイ料理のプロ・藤巻だからこそできた料理なのである。

ラーメン職人には出来ない発想が丼に表現されているのだ。


その藤巻の歴史はチャレンジの歴史といってもいいだろう。

バンコクのオリエンタルホテルでタイ料理の修行をした藤巻は「アジアンボウル将」というタイ風の丼とヌードルの人気店を経営していた。

弟子が三軒茶屋に出店するのを期にこの店をすっぱりと閉め、新たなるチャレンジのために「藤巻激場」をオープンさせた。

オープン当初は客がほとんど来なく、かなりの苦戦を強いられたという。

普通ならば値下げをしたり、他のメニューを取り入れたりするところだが、

藤巻はその逆を行き、800円のラーメンにさらに改良を加えた一杯1000円のラーメンを編み出した。

そして、徐々に客が戻りだし、行列が出来るようになると今度はさらにグレードアップさせた1500円のラーメンを作り出したのだ

1000円のラーメンは勝ちました。

行列が出来るようになったし、これはこれでもういいと。

私の『もう一回戦うぞ!』という姿勢が、すべての面でグレードアップさせた1500円のラーメン。

次は1万円のラーメンに挑戦です。

激城にまでたどりついたら、ようやく一国一城の主になれるんじゃないですかね

飽くなきチャレンジ魂を持つ男、藤巻将一の野望が決して夢物語ではないことは、この丼に表現された世界が物語っている。

店で売っているのは料理ではない、ラーメンは板場という戦場で戦う上での武器にすぎず、売っているのは藤巻自身、という思いが、この丼に余すことなく表現されているからだ。ラーメン界に独自の提案をし続ける藤巻将一のチャレンジから目が離せない。