藤巻将一のあくなき野望編 1万円のラーメンとは? ~池尻「藤巻激場」の料理人魂~
はたして藤巻将一はさらにとんでもないことを考えている男であった。
なんと一杯1万円のラーメンのみを出す店を考えているというのだ。
伊勢エビなんかが入ったラーメンで一杯1万円、というのはある。
だがあれはラーメンではなく伊勢エビを食べているにすぎない。
が、藤巻の作る1万円ラーメンは、スープと麺だけで具はないという。
大丈夫か、藤巻!
が、藤巻はこともなさげにこう言った。
「板場は料理人にとっての戦場。ラーメンは戦場で戦う上での武器。この店では私を売っている」と。
(料理に精を出す、藤巻氏の図)
そもそも藤巻氏はタイのオリエンタルホテルで修行をし、
氏曰く「日本でタイの宮廷料理を作れるただ一人の日本人」であるそうだ。
その修行を支えてくれた先輩料理人に対する感謝の気持ちとタイ料理への恩返しのために
世界一のスープ・トムヤムクンを広めたいとの思いからラーメン屋を始めるに至ったという。
「ラーメン業界に対してね、こう言ってやりたい。『プロの料理人が作るとラーメンはこうなる』ってね」
確かにトムヤム激場麺はなんともいえぬ味わいである。
ある意味、唯一無二の料理といっても差し支えないだろう。
オリジナル・トムヤムペーストに鶏油からとったネギ油、香草等を混ぜたスープは、
トムヤムクンを越えている、という気にさせられる。
1万円のラーメンのスープはさらなる極上テイストなのだろう。
美食家ならば喜んでお金を出すかもしれない。
なぜ1万円のラーメンなるものを作り出そうと考えたのかというと
カッコ良さを目指していくからであるという。
「チョイ悪どころじゃなくて、本当の不良オヤジになってもらいたいってこと。
女連れてきて、パッと食べて、じゃ2万円、って金置いてパッと帰ってくわけ。
そういうカッコ良さを目指すなら、ここに来ればいいってこと」
だそうだ。
「1万円のラーメンが完成したら、店の名前は激場じゃなくて激城にしようと思ってんの。
その時にようやく一国一城の主になれるって思うわけ。
とにかく一番じゃないと気が済まないんだよね」
そうなんである。
藤巻氏はとにかく一番じゃないと気が済まない方なのだ。
かつてこの地には「アジアンボール将」というアジアンヌードルと丼を出す店があった。
その店はなかなか繁盛していたらしい。
弟子が三軒茶屋に支店を出すのを気に前々からやってみたいと思っていたラーメン屋を始めることにした。
値段は1杯800円。
アジアンボール時代の客はまったく寄りつかなくなり、300万あった売り上げも1/10以下になってしまったという。
普通ならばラーメンの値段を下げるところだが、藤巻氏はさらなる改良を重ね、1杯1000円のラーメンを生み出したという。
で、ますます人は来ない。
経営の危惧にも貧したが、それでも信念は曲げなかったという。
「武士道なんですよ。武士道で一番大事なのはやせがまん。
約8ヶ月やせがまんを貫いて、ようやく客が来だした。
で、行列が出来るようになって1000円のラーメンは勝ったなと。
もう一回、挑戦しようという気持ちの表れが1500円のラーメンなんです」
とのことだ。
やせがまんも一番でなけりゃ気が済まないというのだから筋金入りだ。
で、ついに1万円のラーメンが完成したらしい。
(1杯1万円の文字が光る)
これを食うには10回以上、店に通うことが必須条件らしい。
オヤジと料理に興味のある方は、訪れてみてはいかがか?
※営業時間は戦いなので「開戦時間」。
戦場にて「今日は休みます」なんてことはないので、不定休となっている
●「藤巻激場」
世田谷区池尻3-19-5
電話:03-5481-5838
開戦時間:12:00~14:00 18:00~22:00(平日)
12:00~15:00 18:00~22:00(土・日・祝)
休戦日:不定休
ひさびさに見つけた気骨の料理人が生み出す極上麺料理 ~池尻「藤巻激場」での衝撃~
その店の名前は「藤巻激場」。
店の構えはご覧の通りの赤と黒のツートンカラーで看板の類は一切ない。
(この外観だけで何屋かは絶対にわからない)
「いったいここは何屋なんだ?」と多くの人が思うことだろう。
しかも「藤巻激場」ときている。
芝居でもやってるのか…
あるいはホルモン屋か…
これが私が最初に受けた印象である。
「開けるのが恐い…」
B級グルメ道を邁進する私でさえそう思うのだから、一般の人ならさらにビビッたとしても不思議ではない。
いや、そもそもレストランであるという保証すらないのだ。
扉を開けると激情した藤巻氏に襲われる、ってなことだって十分にあり得る。
まさかね…
しかし、その可能性を払拭できないのは、硬質な店構えにある。
並みのB級店とはあきらかに違う。
何が違うかというと怪しさの質が違うのだ。
店の前はキレイに掃除され、それこそチリひとつ落ちていない。
窓や扉もキレイに磨かれており、新規オープンしたてのようにピカピカなのである。
それで頭を抱える。
「この徹底した衛生管理はただもんではない…おそらく店主はなにごとにもこだわるプロなのであろう…しかし、いったい何屋なのか…」
そんなジレンマを抱えながら何度か店の前を通ることがあったが、結局、店には入らずにしばしの時が流れた。
そしてついに訪れるときがやってきたのである。
それは雑誌の取材がもたらせた。
「2007年のラーメン特集」ということで、ラーメン王・石神のイチオシ店、ということで訪れたわけだ。
前のラーメン店の取材が長引いたせいで、予定の2時より少々遅れる。
いや、正確には「2時過ぎくらいに伺えるかと思います」と伝えていたのだが、
この「過ぎ」という曖昧表現がいけなかった。
なにせ相手は店の前にチリひとつ落とさない完璧主義者である。
2時ならキッチリ2時。「過ぎ」なんつう曖昧な表現は受け付けないわけである。
で、ついにおそるおそる扉を開けたわけだが、果たしてそこには店名のごとく激情した藤巻氏がいたわけだ。
看板に偽りなし。
藤巻氏はかなりの強面だけに恐いの何のって。
いや、今回はこちらの甘い計算が落ち度であるからして、ひたすら頭を下げる。
怒られること数分。
「じゃ、この話はここまで」と藤巻氏はカチャリとモードを切り替え、取材モードになる。
このあたりの潔さもプロだ。
ここで出されるのはトムヤム激場麺。
長年、タイ料理の修業をしてきた主人が世界一のスープ、トムヤムクンを広めたいという思い、
タイ料理や師事した先輩料理人たちへの恩返しのつもりで始めたのがこの店だという。
で、考えていることが飛び抜けているのである。
「丼一杯でタイのコース料理を表現する」というものなのである。
これだけ聞くといったいなんのことやらと人は思うだろう。
こういうことである。
前彩(前菜ではない。彩りも重要だということ)には麺の上にのせられた青パパイヤのスパイシーサラダ。
湯はトムヤムスープ、海鮮は海老と紋甲イカのすり身ゆで、麺は特製平打ち中華麺、〆の飯は鶏そぼろご飯の茶漬け風と確かにフルコースが揃っている。
いや揃っているだけではなく、しっかりと丼の中に表現されているのだ。
(花とレモンにも意味がある。知りたい人は勇気を出して店主に聞いてみよう)
で、肝心の味はどうなのか?
まずスープをいただいてみる。
「ム……」
これはまぎれもないトムヤムクン…しかし、なにか違う。もっと深みを感じる。
聞いてみると自家製のトムヤムペーストに鶏油からとったネギ油をミックスさせているとのこと。
さらにいくつかの具材を加え煮込んだものがこのスープ。
トムヤムクンではなくトムヤムガイスープなのである。
ガイとは鶏のことで、中華料理の修業もした店主の工夫が生み出したまさしくオリジナル。
このスープがまたいける。
ラーメン王・石神をもってして「甘・辛・酸・鹹・苦の五味が全て詰め込まれていて圧巻の味世界」といわしめたほどの出来栄え。
ただのタイラーメンなんかとは明らかに違う代物である。
いったいこのラーメンを生み出した藤巻将一とはどんな男なのか?
話はディープな世界に入っていくのであった…(続く)
「回転寿司PARADISE」 リニューアルオープン!
そんなわけで、「回転寿司PARADISE」」リニューアルオープンしました!
今回の目玉コンテンツは「回転寿司ネタ辞典」。
ここ数年、撮り溜めた回転寿司の写真を一挙公開しています。
なかなかに壮観です。
さらに毎週更新コンテンツを設置しました。
その名も「今週のお店探訪」。
こちらはこのブログ的な食べ歩きコラムになります。
というわけで、ごひいきに
廻らない回転寿司屋でも回転寿司は回転寿司? ~大井町「源平寿し」~
廻らない回転寿司屋というものがある、
いや、かつては廻っていたがいまは廻すことをやめてしまった回転寿司屋といった方がよいだろう。
食材のロスを出したくない、というのが最大の理由だと思うが、
それよりなにより、廻すことに意味がない、という店もある。
大井町の「源平寿し」もそんな店の一つではないだろうか。
確かにかつて、この店ではレーンが廻っていた。
私も廻っている頃に来店したことがあった。
その頃の印象は安さが魅力の普通の回転寿司屋、という感じだった。
というよりも、なぜ廻しているのかが不思議な店、といったほうが良いだろうか。
もともと普通の寿司屋だったのかもしれない。
なんだかレーンが無理矢理設えたといった感じだったのである。
レーンはカウンターの端から端まで行くと急角度で曲がっている。
レーントレーンの間はわずかに20センチほどである。
客席は片側一車線で、板場とカウンターのわずかな間にレーンが横たわっているといった案配だ。
大井町の近所に住んでいた頃はたまに顔を出していたが、月日が流れて十数年、久しぶりに訪れた。
当時とあまり変わらぬ佇まい。いや年月分は十分に老いている。
あやしげな古寿司屋、といった風情で、一見ではなかなか入りにくい雰囲気を醸し出している。
看板を見る。
「くるくる廻る江戸前鮨」
と書いてある。昔のままである。
店に入る。
「いらっしゃい」との声だが、なんだかかわいそうなくらいに元気がない…
病気の板前さんが無理矢理絞り出したような声だ。
愛想はあるんだが、致命的に元気がない、といった感じなのである。
人柄は良さそうな感じなのが救いか。
昼時とあって、客は数組いた。
皿は……廻っていない…
注文で板さんが握ってくれる。
忙しくないときなどは普通の回転寿司屋でも皿を廻さずに注文のみで握りたてを出す店もあるが、
そういうのとは違う感じだ。
古びたレーンを見ているともうえらく長い年月、廻った形跡がないのである。
じゃ、普通の街の古びた寿司屋と同じじゃないか、とあなたは言うかもしれない。
その通りなんである。
しかし、注文すると寿司はなぜか皿にのせられて出てくる。
「ムムム…」と思う。
このシステムは回転寿司だ。
お会計時もこの皿の色と数で計算をしていた。
回転寿司のいいところというのは、自分が食べようとしている寿司がいったいいくらなのか一目でわかるところにある。
すごい美味そうな中トロだが値段は高い…食べるべきかやめるべきか、それが問題だ、とハムレット的な苦悩に陥るのがそれはそれで楽しいもんである。
が、寿司は廻っていないがお会計だけは回転寿司システム、というのでは、回転寿司の楽しみをあじわうことはできない。
それでは意味がない、とあなたは言うかもしれない。
が、そうでもないんである。
寿司の値段がなんともいえぬ、回転寿司価格なわけだ。
マグロ、タコ、イカなどベーシックなネタは概ね110円。
大トロや活ネタなどの上ネタが300円と激安といっていいくらいの値段設定だ。
しかも、味は悪くない…。
いや、激安回転寿司だと思えば十分に美味い。
ここでふたたび「ムムム…」と思う。
廻っていないが、看板には回転寿司の表記。
廻っていないが、レーンはある。
廻っていないが、回転寿司システムのお会計。
廻っていないが、回転寿司価格…。
果たしてここは回転寿司屋なのか否か…
気軽に入れない回転寿司屋という新ジャンルな店というのもありなんじゃないかと思った次第です。
●「源平寿し」
東京都品川区大井1-1-25
電話:03-3777-6264
三の酉のぬるぬる煮込みに熟女ママ軍団の魔の手が… ~花園神社の屋台にて~
恒例になっている花園神社の三の酉へと行ってきた。
いわゆる神社の祭りというものが年々寂しい感じになっている中、
酉の市だけは活況だ。
とにかく出店の数がすごい。
浅草に住んでいた頃は浅草酉の市に出掛けるのが楽しみだった。
ここは数百メートルに渡って、通りの両サイドを露天が埋め尽くすという大盛況ぶり。
露天商の見本市みたいになんでも揃っていた。
地元出身の友人といったときなどは、屋台で飲めや食えやの歓待を受けたりした。
隣に座ったその筋らしき人(目高組ではない)からも「ニィちゃん、飲みっぷりえぇのぉ、もっと酒飲めや」とひたすら勧められたり…
浅草地元民のつながりとはなんと強力なのかと関心した次第である。
新宿・花園神社の酉の市は浅草と比べれば規模は小さいものの、
来ている客が面白いのなんのって…
(毎年、同じ店で買うのである)
それはとりあえずおいておいて、まずは去年買った熊手をお炊きあげしてから、境内にて参拝。
しかるに去年よりもちとBIGな熊手を購入。
いつも買う店は同じだが、どの熊手を買うかでいつも悩む…
宝船がいいか兜がいいか七福神がいいか…
今年は理由あって兜にしてみる。
入山に会社の名前を書いてもらい、最後は三本締め。
「お手を拝借、せーの、ヨヨヨイ、ヨヨヨイ、ヨヨヨイヨイ」と店の人が声をかけると威勢の良い声で客から「ソイヤー!」と合いの手が入る。
この「ソイヤー!」という掛け声を気持ちよく言ってくれている集団を見るとこれまた艶やかなホステスとおぼしき一団であった。
うーん、さすが新宿、水商売が元気な街であると納得した。
ふと近くからひときわ大きな声で三本締めどころか十本締めのようなながーい掛け声が聞こえてきた。
花園神社の隣に位置する「東京飯店」が熊手を購入したようだ。
見に行くとこれが見たこともないような超巨大熊手なのである。
しかも、1本ではなく特大熊手も数本見受けられた。
もう何十年も前から買い続け、これ以上大きな熊手が出来ない、というところまできているのだろう。
我が社もそれくらい繁盛してもらいたいもんである。
その後、いつもは近隣の店に食事に出掛けるんだが、今回は神社内の出店に伺ってみることにした。
さすがにどの店も満席でわいわいがやがやとにぎわっている。
店頭で串ものを焼く姿なんかを見ているとなかなかにそそられる。
山盛りの焼き鳥もさることながら、煮込み鍋やおでん、サザエ、ホタテなどの海鮮物などなかなかに揃っている。
席が空くのを待ってすべり込んでみた。
早速、ビールと煮込み、焼き鳥を注文する。
トイ面のおねぇさん方乃の一団から乾杯の催促を受ける。
結構、できあがっているようである。
年の頃は30代後半、といったところだろうか。
あきらかな水商売風。スナック、バーのママ軍団のように見受けられる。
あまりの迫力に気後れしながらチビチビとやっていると
「あんた、男なんだからそんなにチビチビやってんじゃないわよ!」とママ軍団から叱咤を受けた。
「す、すんません」とかなんとかいいながら、ビールをグイとやってみた。
「あーもうじれったいわね、男ならこうでしょうこう」といいながらママ軍団のひとりがコップ酒をイッキした。
「おぉー」と周りは拍手喝采である。
こうなると後には引けない雰囲気だ。
しかたがないので、こっちもコップ酒。
うーむ、剣菱か…イッキはちとキツイ…最近、この手は飲んでないからな…
ま、それもまた人生と思いグイとあけてみる。
いつの間にか店中が注目しているぜ…なんてこった
とそこにホストの一団がやってきた。
どうやらママ軍団の知り合いらしい。
ホスト軍団は来るなり全員、剣菱イッキだ。
すごい様相を呈してきた。
さすが歌舞伎町商売人たちがわんさかと集まっているだけある。
これで来年も商売繁盛することだろう。
しかし、この状況はいささかキツイ。
そうだ煮込みを食わねば、とおもい箸をつけてみる。
「ぬ、ぬるい…」
なんじゃこりゃ、と心の中で叫んでみる。
あいかわらず周囲はホストクラブ状態だ。
この雰囲気ならこの味で然るべきか…
うーむ、祭りはやはり地元民のものだといたく実感した。
剣菱とぬる煮込みにあたった私は美味なもつ煮込みを求めて夜の街へと繰り出すのであった…
新蕎麦と紅葉と奥多摩と風流 ~奥多摩「一心亭」で小滝を眺めるの巻~
今年も東京では紅葉が遅れている。
この時期、まだ青々としている木々を見ていると日本の四季的情緒ってもんがどうなっちまうのか心配になる。
それはすなわちグルメの世界にも影響が出ることであって、紅葉を見ながらのんびり蕎麦、なんてこともおあずけになってしまうわけだ。
新蕎麦の時期に合わせて、紅葉狩りと蕎麦を楽しむ、なんてことをしていると日本人に生まれて良かったな、とかつくづく思ったりするもんだ。
が、新蕎麦の時期はやってきたが東京に紅葉の知らせはやってこない。
いったいいつくるのか?
ゴドーを待つ心境で待ってはみたが、シビレを切らして奥多摩へとGO!
案の定、奥多摩には緑が色濃く残っている。
紅葉にはまだ早い。
チャールストンにもまだ早い(by 田原俊彦)
例年なら色鮮やかな紅葉に染まる奥多摩周遊道路も御岳街道もただの道と化している。
よって風景に目を奪われることなくスイスイと車を走らせられる。
安全運転には良いです。
奥多摩の銘酒「澤ノ井」の看板が道々にあるせいか、ちょっと喉を潤してみたくなる。
飲酒運転はいけません。
とかなんとかやっているあいだに目指す蕎麦屋へと到着した。
JR青梅線の終点より二駅手前の鳩ノ巣駅前にある「一心亭」という蕎麦屋だ。
このあたりは鳩ノ巣渓谷という奥多摩屈指の景勝地であり、紅葉シーズンには人々がわんさかと押し寄せる。
が、今日は平日。おじじとおばばがスケッチにいそしむ姿がポツポツと見えるくらいだ。
のどかな奥多摩のひなびた午後…ってな感じだろうか。
「一心亭」は渓谷の麓に位置し、全面ガラス張りで風景を堪能できる店構えである。
窓からは横を流れる小川や落差数メートルほどの小滝が見える。
ベストポジションは小滝前の座敷か。
水上の滝と名付けられた小滝を見ながら新蕎麦をすする…
うーむ、風流です。
(小さいながらなかなか風流な水神の滝)
いや、蕎麦をすするってのは違うな…
ここの蕎麦はかなりの極太で噛み切る、という感じだろうか。
繊細な味を楽しむというよりは、ゴッツリとした蕎麦の食感を味わうもんのようだ。
車でなけりゃ、川魚の塩焼きを肴に一杯やりたいところだ。
本場で飲む澤ノ井もさぞかし美味だろう。
店にはそんな幸せを求めてやってきた輩たちが、頬を赤く染めてグビグビとやってやがった。
「チッ、お前が紅葉してどうすんだよ」と心の中で突っ込んでみる。
オレはこんな紅葉を見に来たんじゃないねぇ、とかわけのわからんことを思いながら店を後にした。
奥多摩に紅葉が訪れるのはまだ先の話である。
●「一心亭」
東京都西多摩郡奥多摩町棚澤398
電話:0428-85-2231
営業時間:11:00~16:00
定休日:火曜
築地を揺るがす激安寿司店の浸食…築地寿司屋の未来はいかに!
ここ2週間ほど連日締め切りに終われて四苦八苦していたがようやく一段落。
その中の一つに「一個人」という雑誌の取材で築地の寿司屋を4軒ほど回るというのがあった。
酒を飲みながらまったりとくつろげる店、ということで編集部お薦めの店にお邪魔したわけだ。
で、築地をポロポロと歩いていると新参者の寿司店の看板だけがやたらと鼻につく。
一言でいうと派手、なんである。
それも築地場外市場には似つかわしくない派手さである。
原色ギトギトの派手な外装ややたらとデカイ看板にはハッキリ、閉口してしまう。
(築地交差点に佇む巨大看板…自己主張しすぎである)
「おいおいここは築地場外だぜ、歌舞伎町と間違えてんじゃねぇぞ」と言いたくなる。
そもそも場外には数多くの寿司屋や海鮮丼物の店があるが、そのどれもが場外の景観を損ねる、なんて店作りはしていない。
確かに昼時なんぞは客引きの声も高らかであるが、それも場外の名物の一つ。
威勢の良い商売人の声が響き渡ってこそ、場外の昼時ってなもんだ。
24時間営業はいいが、自分の店だけ目立てばいいと思っているような店のあり方は大いに反省してもらいたいもんである。
そんなわけで、訪れた店の1軒に「魚河岸千両」という店があった。
ここは築地にうどん屋やら丼屋やら寿司屋を6店舗経営している虎杖グループの1軒だ。
このグループの店はオープンな雰囲気というかほとんど路面に店を出しているような感じである。
もともとある路地やら倉庫をうまく生かした作りになっていて、昔ながらの築地を肌に感じられるところが特徴であろう。
しかし、こんなスペースによく店をつくるもんだと感心させられる。
夜の築地場外で開いている店は限られているだけに貴重な存在かもしれない。
2012年に築地市場は豊洲へ移転するが、その後、場外がどのようになるのか心配する向きも多い。
原色ギトギトの派手な店に浸食されてしまうような築地場外は見たくないだけに既存店には頑張ってもらいたい。
そういう意味で古き良き築地を偲ぶことができ、しかもいまの時代を取り入れた虎杖の店なんかは築地場外の未来を考える上で参考になる。
もう1軒、同じ虎杖グループの「築地黒瀬 鮑」という店にも行った。
こちらは「魚河岸千両」のカジュアルな雰囲気と違って、本格志向の寿司屋。
表通りから細い通路を突き進んだドンツキにあるのだが、その通路はまるでタイムトンネルのように感じる。
通りを抜けた後に広がる空間が、なんだか懐かしい気分にさせてくれるからだ。
内装は江戸時代の寿司屋を意識したという。
竹をふんだんに使い、黒塀の雰囲気を醸し出している。
握られる寿司ネタも天然物ばかり、でもって値段は築地価格で、銀座と比べたら格安だけにちょっと趣向を凝らしたいときなどにはいいかもしれない。
慌ただしいイメージの築地にもなかなかに落ち着ける店があるのか、という感じだ。
夜の場外には昼の喧噪も面白さも何もないが、原色ギトギト寿司屋に対抗すべく頑張る店があることは知っておきたい。
ちなみに「一個人 1月号」は寿司屋の大特集。11/26発売なので、ご興味のある方はご覧あれ。
●「魚河岸千両」
東京都中央区築地4丁目10-14 樋泉ビル1F
電話:03-5565-5739
営業時間:11:00~14:30、17:00~22:30(月~金)
9:00~21:00(土、日、祝日)土曜日と連休前日は22:30まで
定休日:無休
「築地黒瀬 鮑」
東京都中央区築地4丁目10-16 築地四丁目町会ビル1F
電話:03-3544-1244
営業時間:17:00~23:00(月~金)
17:30~22:00(土)
定休日:日曜・祝日
清水のおさむいすし横町事情 ~清水市 エスパルスドリームプラザのすし横町~
前々から訪れなければいかんと思っていた日本唯一という寿司のフードパーク、すし横町へとようやく行ってきた。
清水港の近くにあるエスパルスドリームプラザ内にあって、すしミュージアムなるものも併設されているという。
ここには他にもサッカーミュージアムとちびまる子ちゃんランドもあって、
ちょっとしたミュージアム御殿みたいになっている…
いや、なっていると思ったといったほうが良いだろう。
ホームページ を見て、ちょっと怪しいとは思ったのだが、ここまでシャビーだとは思わなかった…
ま、その話はおいておくとして、すし横町へ行く前に近くの漁港の市場へと寄った。
やはり都内のスーパーとははくりょくも値段も段違いである。
アジなんかは1匹50センチはあろうかという特大サイズ。
これで1枚150円だというからやってられない。
やはり住むなら漁港の近くだと思い知らされる。
これなら寿司も期待ができるのでは…と思うのも自然の流れというものであろう。
で、期待に胸弾ませすし横町へと出向いたわけだ。
昭和レトル風な作りの場所には10軒の寿司屋が軒を並べている。
うち2軒は回転寿司屋。
私が行った日がたまたまなのかもしれないが、日曜日の夕食時だというのにここの横町はゴーストタウンのごとく…
正確に言えば1軒を除いて、ゴーストタウンのごとし、であろうか。
とにかく、たった1軒の店に人が集中しており、他の店は閑古鳥が鳴きまくっているのである。
行列ができている店は、「回転鮨 魚がし」。
ここは静岡県を中心に手広くチェーン展開をしている人気店である。
私は端からここに来ようと思っていたから行列に並んだが、何も考えずに来た人はいったいどう思うだろうか?
確かにこの店は他店と比べれば回転寿司なだけ安いかもしれない。
ファミリー連れなどにも人気であろう。
が、これでは他店の立場があまりにもなさすぎる。
ラーメン横町なんかでも、一部の人気店に人が集中することはあるが、ここまでひどい光景を見たことがない。
他店の店員はこの状況にますますやる気がなくなっているのか、うらめしそうに回転寿司屋の行列を眺めるばかりである。
よってますます他店に人は寄りつかない。
(デカネタ、肉厚のマグロカルパッチョ)
確かに魚がしの寿司はデカネタで厚みもあり、たいへんに食べでがある。
沼津の漁港で揚がった新鮮な魚を直送するのが売りである。
これで安ければ文句ないところだが、主力の皿が300円台と高めの設定。
店内が高級志向であるとか華やかさがあるとか味+αの部分があれば良いのだが、その他特記すべき事項は特にないだけに回転寿司屋としては高評価が与えられない。
(ちなみにここのチェーンは流れ鮨を売りにしている店舗がある。流れ鮨とはタッチパネルで注文したものが、握りたての状態で目の前に流れてくる、というものだ。そういうエンタな部分があれば評価するのであるが)
というわけで、すし横町最大の人気店がもうひとつパンチが欠けるだけに他の店はもっといただけないのかと思ってしまう。
他にも世界中のマグロが味わえる「The まぐろや」や洋風創作寿司の回転寿司屋なんかもある。
寿司屋の場合、どうしてもネタの仕入れの関係があるから、小樽や気仙沼など地方の有名店をこういうフードパークに招致するのは難しいのであろう。
そのせいで、どの店も同じに見えてしまうというか、ラーメンやカレーなどのフードパークと比べて、バラエティ感がないのが辛い。
気を取り直して、すしミュージアムを見学することにした。
入場料を300円も取るわけだから(すし横町で食事をした人は半額)、それなりに立派なものを期待してもバチは当たるまい。
すしの歴史やら全国の寿司について勉強でもしてやろうという魂胆である。
それくらいはあるだろうとは思っていたが…
入ってみると中は江戸の町並みが再現されている。
確かににぎり寿司は江戸時代に誕生したものであるから、江戸の文化を学ぶのはよい。
が、それだけなんである。
(仕方がないので、こんなところで写真を撮ってみるの図)
順路にあるのは江戸の風景ばかり。寿司についてのウンチクが書かれたチラシが数枚置いてあるくらいで、寿司ミュージアムの片鱗すらみえない。
「こ、これはいったいどういうことだ…」
と唖然としていたら、最後に寿司の歴史やら全国の寿司について書かれた展示場があった。
ご丁寧に室町時代くらいからの寿司の歴史について書かれてある。
全国の寿司についても写真が展示されている。
が、それは学園祭ですし研究会が発表するようなレベルなんである。
あっと驚く仕掛けとは言わないが、学園祭レベルはやめて欲しい。
がっくし
(学園祭レベルの展示場であった…)
で、ちょっと考えてみたのだが、そもそも清水と寿司のつながりって何よ?
お隣の沼津港は確かに漁獲量も高く、美味な寿司屋も多い場所だ。
回転寿司業界でも「沼津」は一種のブランドである。
清水ですしといって思い浮かぶのは清水の次郎長一家の森の石松くらいか…
「食いねぇ、食いねぇ、寿司食いねぇ」の石松様の言動はあったにせよ、清水港の名物はお茶の香りと男だて、と決まっている。
もしや、石松のネタだけで強引にすしミュージアムを作っちまったんだろうか…
清水ならありうるな…
せめて清水と寿司の関連性がもっとしっかりしていれば、こんなチープなミュージアムやシャビーなすし横町にならんですんだだろうに…。
やはり清水はエスパルスの応援とお茶で頑張って欲しい、と思った次第です、ハイ。
●清水すし横町
静岡県静岡市清水区入船町13-15 エスパルスドリームプラザ1階
営業時間:11:00~22:00
定休日:無休
人情派のスープ焼きそばの隠し味とは? ~都立大学「麺家 八の坊」~
ホッとできるラーメン屋が好きだ。
居心地の良いラーメン屋とでもいうのだろうか…
こぢんまりしてはいるが清潔な店内、
BGMは小さな音でJAZZが流れている。
ラーメンを食べる前に軽く一杯飲んで、旨味のチャーシューなんかをつまむと気分だ。
店主は寡黙ながらも、真摯な姿勢で料理に取り組み、出される料理にはどこかあたたかみがある…
そんな店に出会うとホームグラウンドを見つけたような幸せな気分になれるものだ。
今年の2月に都立大学にオープンした「麺家 八の坊」もそんな店の一つではないかと思う。
さて、この店は友人Tとは旧知の澤田謙也 氏がプロデュースをする店である。
澤田氏は香港映画で主役を務めるほどのアクションスターであり、私もかれこれ20数年前に友人Tが撮った映画で共演したことがある。(といっても私はエキストラであったが…)
そんなわけでおそろしく硬派なラーメン屋ではないか、と思っていたのだが、ところがどっこいこれがなかなかどうしての人情派ラーメン屋であった。
元天ぷら家だったという店はカウンター7席だけの小さなお店。
天ぷら家の面影か、和テイストがそこかしこに見られ、これがなかなかの落ち着きを演出している。
(老舗の風格すら漂う、和テイストな風情がある)
そして、店主の穏やかな人柄が、ホッとさせるなにかを感じさせる。
この店主は澤田氏の弟さんなのであるが、硬派兄とは違って温厚さがにじみ出ている。
その温厚さが料理にも表れている、といった感じだ。
ちなみに「八の坊」とは伊豆長岡にある旅館から名付けたものだそうだ。
メニューはラーメンとスープやきそば、冷やしラーメンの3種類。
中でもスープやきそばに心ひかれる。
あの焼きそばがひたひたのスープに浸かっているものなのであろう…
果たしてうまいのか?
ちょっと考えるとソースとスープの相性が合うとは思えないのだが…
で、できあがったのがこちら。
(見た目、ソーキそば風のスープ焼きそば)
見た目は沖縄のソーキぞば風。
ふーむ、紅ショウガやもやし、キャベツなど具は確かに焼きそばのものだ。
おそるおそる麺をすすってみる…
おぉ、確かに焼きそばである。
麺にはウースターソースの味が染みており、うっすらと焼き目までついている。
では、スープはどうか?
ム…ムムムム…豚骨スープのコクと野菜の甘み、それにウースターソースの味がなんともいえない不思議な味を醸し出している。
(もっちりとした太麺とスープが良く絡む)
「いやね、那須の方で昔からスープ焼きそばを出してる店があるんですよ。
那須には子供の頃からよく行っていたんで、ずっと頭にあったというか…
で、自分も作ってみようかなと。
でも、その那須の店でスープ焼きそばは食べたことないんですけど」
と店主は人なつこい笑顔を浮かべて笑った。
つまりはスープ焼きそばというものを独自の感覚で作ったということだ。
作り方はシンプルで、麺を炒め、野菜を炒め、そこにラーメンスープとウスターソースを合わせて軽く炒める、といったものだ。
私の好きな焼きそば屋といえば浅草の「花家」 であるが、通常のソース焼きそばというのはなにか物足りなさが残る。
縁日の粋を出ないというか、満腹感に欠けるというか、とにかくメインディッシュとしてはどうなのよ、ってな感じであるが、
スープ焼きそばの場合、そんな心配はない。これはこれで立派なメインである。
あのソース焼きそばがメインになれる日がくるなんて、と思うと感慨深ささえ感じる。
「お前も立派になたなぁ、よしよし」ってなもんである。
あのシャビーさがたまらない魅力のソース焼きそばが、上流階級に出世したくらいのイメチェンといえよう。
スープになってB級に格を落とした、名古屋のスープパスタとは正反対の結果である。
ちなみに店主は家系で修行していたとのことで、ラーメンは家系テイストであるが、
家系の脂ギトギトからすると極サッパリとしている。
家系のテイストは好きだがあの脂にはへきへきする、といった人には新鮮な感じがするのではないか。
で、期間限定のはずが、定番メニューのレギュラー入りを果たしたという冷やしラーメン。
こちらは細麺の坦々麺風味。
クリーミーなスープはまろやかで、ずいずいと麺がすすむ。
(つるつると食べ進む、食欲増進冷やしラーメン)
ここではたと気がついた。
八の坊の料理には優しさがあるのではないかと。
スープ焼きそばはソース焼きそばのテイストが残るなつかしさが感じる逸品、ラーメンは家系ながら脂をおさえたサッパリ味、そして冷やしラーメンのまろやかさ…
店主の人柄がにじみ出るような料理である、と思った。
料理の隠し味は人にあり、と実感する店なのではないだろうか。
帰り際、澤田氏に「おい、知り合いだからといって提灯記事みたいなぬるい原稿は書くなよ」と釘を刺された。
提灯記事かどうかは実際に訪れて、料理と店主となにやら妙に落ち着くお店の雰囲気に触れればわかってもらえると思う。
(左から心優しき店主、友人Tこと高嶋政伸、私、強面の澤田謙也氏、イナちゃんマンこと稲垣雅之氏)
(澤田氏が探しに探したという地蔵。
なぜホレたかは直接、お店で本人に聞いてみよう!)
●「麺家 八の坊」
目黒区中根1-1-10
電話:03-5701-0455
営業時間:11:30~15:00(月~日)
18:00~25:30 (月~金)
18:00~23:30 (土・日 )
定休日:水曜
甲府のほうとうは放蕩息子なのか伝家の宝刀なのか? ~昇仙峡「ほうとう会館」の無防備会計~
紅葉シーズンには一足早いが、甲府の昇仙峡へとドライブに行った。
紅葉シーズンは渋滞で連なる山道もいまの時期ならススイノスイ。
川沿いの奇岩やら滝やらが見もので、まぁ風流な景色である。
そんなわけで、ロープウェイに乗って、山にも登った。
富士山が見事な姿を現していた。
ロープーウェイからは素敵な風景はまったく見られない…
ちともの悲しい。
(風光明媚な昇仙峡の図)
というわけで、一通り見物した後で、昼食タイムがやってきた。
昇仙峡の最上部には「ほうとう会館」なる建物があって、各種ほうとうを販売していたり、食事処があったりする。
なにかないかと探していたらほうとう饅頭なるものを発見。
実演販売でできたてのホカホカをいただく。
饅頭のてっぺんにはかぼちゃがへそのごまのように置かれ、中身は野沢菜、椎茸、切り干し大根などがほうとうの麺でくるまれている。
ほうとうの味がする、なんてこたぁーない。
和風肉まんといった感じである。
(中身の具がほうとうの麺にくるまれている)
しかし、この饅頭を見てもほうとうというのは具を食べるもの、という気がしないでもない。
過去に何度か本場モンのほうとうを食べているが、主役の麺の存在感が薄いというか、
名古屋名物・みそ煮込みうどんだとか鍋焼きうどんなんかと比べると麺が具の引き立て役、となっているような気がする。
しかし、ほうとうの麺は平打ち極厚、幅広の麺。他の麺料理から比べても存在感があってしかるべきなのだが、
「ほうとうは麺じゃないんだよな、具だよ、具」なんて思いに駆られてしまう。
ほうとうとはそもそも武田信玄の時代に陣中食として甲斐の国に広まったものらしいから、味噌仕立てのスープにそのへんにあった野菜やら山菜やらをぶち込んで作っていたのであろう。
そういう意味ではみそ汁のぶっ込み料理withほうとうというのも納得できようというものだ。
(きのこほうとうのお姿。バカデカのナメコがすごかった…)
ふとレストランの入り口を見たら「ほうとう」「放蕩」「宝刀」「餺飥」と書かれた紙が張ってあった。
山梨県民にとってほうとうはまさに伝家の宝刀であろうが、主役が具となれば放蕩息子のごとし…
本来は餺飥(はくたく)という奈良時代の食べ物らしく、稲作が困難だった土地柄で発達した甲斐の国ならではの麺料理。
名古屋人がきしめんに対して誇りを持っているのと同様、甲斐人もほうとうに対しては並々ならぬ誇りを持っているだろうことはひしひしと感じる。
「うどんみたいな生ちょっろいもんとは違う、硬派な食べ物なんでぇい」という意気込みは感じますが、
「UDON」ならぬ「HOUTOU」なんて映画になるほどロマンがある食べ物ではないですな、残念ながら。
と、最後に会計をする段になってまたまた驚かせられた。
レストランは2階にあって、会計は1階だというのだ。
ここはレストラン専用の建物ではなくて、1階にはおみやげ物やらが売っていて、普通にたくさんの人が出入りしている。
しかも会計処というのが、レストランの出入り口とはかなり離れた場所にあり、
あれでは素通りして帰ってもらっても結構です、といってるようなもんであると思った。
実際、混んでいればまったくわからないし、ただ食いして帰る人も多々いるだろう。
だが、きっとほうとう会館側もそんなことは百も承知なのではないかと思う。
「我々は甲斐・武田の末裔よ。人々はみな善の心があるはずだ。それを信じるわい、ガハハハ」
と寛容な心で見守っているに違いない。
しかし、その無防備さが武田の滅亡につながったことを忘れちゃいかん。
無防備もほうとうほうとうに、なんてね。
●「昇仙峡ほうとう会館」
山梨県甲府市猪狩町393
電話:055-287-2131
営業時間:8:30~17:30
8:30~16:30(冬期)
定休日:無休