B級グルメを愛してる! -14ページ目

やきとん屋こそ酒飲みのオアシスである

やきとん屋、というとなにかこうヤキトリ屋に比べて大人な感じがする

なにせ食うのはモツだ

豚の内蔵を食らうというのは、鳥肉を食べるのよりはやはりワイルドである

なにせ安い

1串100円くらいで、おつまみも100円~300円程度のものがほとんど

たらふく食べて飲んでも1人2000円もしないだろう

いかにもの飲兵衛が幅をきかし、女子供を寄せ付けない雰囲気を醸し出しているのがたまらない

場所も繁華街よりは中央線沿線だとか西武新宿線だとかの世界が似合う

野方の「秋元屋」もそんな素晴らしきやきとん屋である

やきとん屋は豚モツを食らうところだからして、メニューもちょいと変わっている

レバ、ハツ、カシラなどはヤキトリでもポピュラーであるが、

オッパイ、テッポウ、チレ、コブクロ……

といったあたりは知らなければなにがなんだかわからん部位である

ちなみにオッパイはそのまんま豚の乳、テッポウは直腸、チレは脾臓、コブクロは子宮である

「今日、いいオッパイ入ったんだよ」

「いいね、オッパイ。ピンクでキレイじゃない」

などという恐ろしい会話が店内ではやりとりされるんである

まるで変態の集まりだわな

でもって、アルコール類もやきとん屋ならではのこだわりが伺える

酎ハイとニホンシトロン(幻の炭酸と呼ばれている。泡がシュワシュワともの凄い勢いで立つ)の組み合わせは文句なし

焼酎もキンミヤ が気分

トリハイ(トリスのハイボール)や生ホッピーもいいっすね

これらがだいたい350円くらいで飲める

幸せなことこの上ない

ちなみに「秋元屋」では日本酒の品揃えもなかなかのものである

あと忘れちゃならないのがもつ煮込み

この出来映えで、幸せ気分に一層、拍車が掛かるかどうかが決まる

「秋元屋」のもつ煮込みは玉子入りで380円とお値打ち

旨味がよくモツに染みている

まさに酒飲みのための食べ物といえるだろう

それとこの店の名物がキャベツ、である

大ぶりにザックリとカットされたキャベツを味噌につけて食べるんであるが

これがなんというか清涼感があってよい

キャベツのデッカイ固まりをバリバリボリボリ

大阪の串カツは無料で食べ放題のキャベツがあって

ソースをつけて食べたりするが、

あの場合はしなびちまったキャベツを1枚、1枚をかじる

こっちの場合は固まりにガブリ、である

しかも歯ごたえサクサク

濃厚なモツの味がキャベツですっきりしていくようだ

あんまり長居をするのは無粋ってもんだ

飲んで食って、サクッと帰るのがいいやきとん屋での過ごし方

新鮮なモツを存分に味わって、スペシャルな焼酎を味わって

これで2000円なら涙が出てくる

私のROAD TO MOTSUの旅はまだまだ続くんであった…

●やきとん「秋元屋」

 中野区野方5-28-3

 03-3338-6236

 営業時間:17:00~24:00(月~土)16:00~22:00(日・祝)

 定休日:水曜

京都B級グルメは「にしんそば」にあり

京都に行ってきた

で、うまいもん食ってきた

旬と言えば塚原産の筍富山のホタルイカ

高級旅館の繊細な料理、割烹の独自性溢れる料理

京料理を堪能してきました

素敵な京都の話は残念ながら置いておくとして

 

でもって、京都のB級グルメとはなにか

街を徘徊しているとやたらとみかける看板がある

名物・にしんそば

 

 

 

でたぜ、にしんそば

にしんを甘い煮汁で煮て、それをそばの上に乗せるだけという料理

にしんの甘みと蕎麦つゆがマッチしてうまい、

ということになるらしい

ちなみに京都の「松葉」が発祥の地

 

それにしても、見た目、どうなのよとツッコミたくなる

なにかこう京らしい繊細さだとか情緒とかが微塵も感じられない風体だ

蕎麦の上ににしんがドカーン

発想はほとんど丼ものの感覚だろう

舞妓さんがにしんにかじりついている姿はちょいと想像できない

京都には珍しい男らしい料理といえよう

 

湯豆腐だとか湯葉だとかの京料理にはないダイナミックさに

京都B級グルメの称号を与えたい逸品だ

 

●「松葉」

 京都府京都市東山区川端町192

 電話:075-561-1451

 営業時間:10:30~21:30

 定休日:水曜日

 

 

 

野球場こそB級グルメの殿堂だ

千葉ロッテマリーンズのHP にリンクを張っていただいたおかげで、

マリーンズファンの皆さまに多数ご来場いただいております

誠に有り難うございます

そんなわけで、野球場でのB級グルメについて考えてみよう

 

 先日、甲子園球場に母校の応援に行ってきた

45年振りの出場ということでスタンドはOB連中が大盛り上がり

他の学校が学生中心なのに対して、うちの学校はどうみてもOBの方が多い

よって、試合開始前はそこかしこでビールが飲まれているという

高校野球らしからぬ光景が繰り広げられていたのだ

 

かくいう私もビールにうつつを抜かしてみる

おつまみは何にしようかと物色してみる

名物は「甲子園カレー」だというが、ビールのつまみにはあうはずもない

つらつらとみていたら「オムソバ」なる大阪B級グルメを発見した

これだー!

 やはり土地土地の名物に舌鼓を打つのが遠征してきた楽しみというものだ

オムソバ……

なんと魅力的な響きであろうか

まさにお好み焼き文化のたまものともいえよう

焼きそばを玉子焼きでくるみ、上からマヨネーズをドバッとかける

マヨネーズが玉子と焼きそばに混ざり合って、濃厚なテイストを醸し出す

このしつこさにビールがグビグビとすすむんだな、これが

 

 これが唐揚げだとかポテトだとかのありきたりのおつまみだと

なにかこう、もうひとつ盛り上がりにかける

オリジナリティがないんですな

各チームにオリジナリティがあるのと同じように球場にだってオリジナリティがあるべきだ!

というわけで、甲子園のオムソバは正しい

名古屋ドームに行けば味噌串カツやどて飯どて焼きをご飯にかけて青ネギを散らしてある)があるし、

楽天のフルキャストスタジアムに行けば仙台名物・牛たん出会える

 

motu

 

ちなみに我がマリンスタジアムの名物と言えば、

「モツ煮込み」だろう

長ネギとモツの相性がなかなかよく、海風に吹かれながら飲むビールにビッタシと合う

ちなみに各場所で売られているが、バックスクリーン裏がおすすめ

 

同じスポーツ観戦でもサッカーだとこうはいかない

試合展開があわただしくて、ゆっくりとビールを飲んでおつまみ食べながら観戦する、なんてのには似合わない

やはり野球観戦ならではの楽しみといえるだろう

 

ビールをプハーッとやりながらの野球観戦

陽気に野次でも飛ばしながら、名物料理に舌鼓を打ってみたい

 

 

 

 

中級ユーラシア料理「元祖日の丸軒」の怪人

中級ユーラシア料理「元祖日の丸軒」という店がある

まだ世間にエスニックブームが到来する以前からある店だから

その筋では相当に老舗であったりする

 

とにかく、すべてが見せ物小屋のような雰囲気の中にある

昭和30年代の怪しげな出し物のような…

黄色く塗られた外観にはサーカス絵が描かれ、周りからは完全に浮き上がっている

なにせ場所が新代田、しかも環七沿いとくればラーメン屋くらいしかこれといった店がないところだ

 

hinomaru

 

心惹かれるまま、階段を上がってみる

ギギーッと扉を開けると予想通りの光景が目に飛び込んでくる

壁にはどういうわけか柱時計がやたらと並んでいる。時間を間違えなくて良さそうだ

窓は船仕様の丸窓。雨漏りしなくて良さそうだ

窓の外には光の帯を連ねながら環七を泳ぐ車の群れが見える

都会を航海する気分にちょいと惹かれる

BGMは昭和歌謡だ

「サムライ・ニッポン」なんかが流れていたりする

 

席に着くとついに噂の主人がお出ましになる

アンドレ、だ

人間山脈、大巨人のあのアンドレだ

「いらっしゃいませ…」

アンドレ(通称:店の主人)もとい店の主人(通称:ペペ・アンドレ…でも日本人らしい…思いっきり怪しいけど)だ

風貌は「ジョゼと虎と魚たち」のジョゼのおばあちゃん に似ているだとか、長髪になったゴリラーマン に似ている、とか諸説飛び交っている

なぜアンドレなのかという謎も残る

ちなみに私はかってこの店の付近に住んでいて、よく日の丸軒を訪れていた

ある日、道端でアンドレとすれ違った時にニターッとされてブッ飛んだ記憶がある

あのアンドレを昼間に見るのも強烈だが、挙げ句にあの顔でニターッだ

恐ろしい、背筋がゾッとする、というのもうなずけよう

大学生の頃の話である

 

で、メニューを見てみる

中級ユーラシア料理とは何か?という疑問が解ける

そもそも高級ユーラシア料理が何で低級ユーラシア料理とは何なのか、という話であるが、

まぁ、タイ、インド、中東などなどアジアンフードがいろいろと食べられて、それらが酒のつまみに合いそうな感じ=ゆえに中級みたいなことだろうか?

名物はターメイヤ(エジプトのコロッケ風)やタイの蟹料理やらいろいろあるんだが、

中でも私が好きなのはナン、である

イースト菌を使っているので、パンのような食感がよい

熱々の出来たてをちぎって食べるのがウマイのだ

味がほんのりと付いていて、そのままでもいける

ほうれん草カレーとかに浸けて食べるのだが、お土産にしてよく持ち帰ったもんだ

 

アンドレの一挙一動に心を奪われながら、見せ物小屋で過ごす至極の時間…

まさに時が止まったような空間、というに相応しいB級なスポットである

 

●中級ユーラシア料理「元祖日の丸軒」

 世田谷区羽根木1—4—18

  03—3325—6190

  営業時間:PM17:00~AM2:00

スタンドカレーの美学~新宿・ニューながい~

カレーなどというものはルーはすでに出来上がっているし、ご飯も炊かれているわけだから

その気になればオーダーを受けてから10秒ほどで客に出すことが出来る食べ物である

皿にご飯を盛って、上からカレールーをかける、以上、ってな感じだ

誠に簡潔でよろしい

そんなカレーを体験するならば、なんといってもスタンドカレー屋にかぎる

 

僕がよく行くのが新宿の「新宿カレー・ニューながい」である

ここは紀伊國屋書店の地下街にあるスタンドカレー屋で、スタンドカレー屋にしてはかなり多くのメニューを誇っている

赤カレー(激辛)、黒カレーを筆頭に変わりどころでは納豆カレーなどというものもある

一応、いろいろと食べてみたんだが、結局は最もベーシックなビーフカレーに落ち着く

それはスタンドカレーに何を求めているか、ということに起因するわけだが

具だくさんなカレーだとか上品なカレーというのはスタンドカレーに似つかわしくはない

カツカレーなど空腹時には惹かれるものがあるが、早さが命のスタンドカレー屋ではまずカツは作り置き、

冷めて固くなったカツなど逆にガッカリする

とにかく求められるのは早さであり、安さであり、劇的なうまさとかそういうんではないのだ

さらに僕がスタンドカレーに求めるものというのは、濃いー感じのルー、だ

ボンカレーなどのインスタントカレーというのはなにか薄い黄土色のルーであったりする

濃厚なルーはなにかこう何十年も鍋でコトコトと煮詰められたありがたーい感じがする

極端な話、ボンカレーの特別版みたいなもので十分なのである

 

 

というわけで、ニューながいのビーフカレーはひたすら鍋の中で煮詰められた感のする濃厚ルーである

すぐそばに「モンスナック」というこれまたスタンドカレー屋があるんだが、そっちはサラサラのスープタイプ

スタンドカレーとしては違うんだなぁーと思ったりしている

 

で、席に着く

一応、メニューを見てみる

胡椒がピリリと効いた黒カレーは820円、スタンダードなビーフカレーは480円(サービスデー時は350円)

心の中ではビーフカレーととっくに決まっている

「ビーフカレー」

とそっけなく告げる

果たして何秒でカレーが出てくるか計ってみる

まず皿にご飯を盛る

ここまで8秒

次にカレーを掛ける

この作業が5秒

で、そのまま出される

しめて15秒だった

福神漬けなどはテーブルに備え付けられているし、ホントに作業行程が少ない

これこそが、スタンドカレーの醍醐味といえよう

 

でもって、出されたカレーは迅速に食べる

福神漬けを適宜補給しながら、ご飯とカレールーのバランスを考えてかき込む

ルーを多く取りすぎると最後は白飯しか残らないという悲しい事態に陥る

これはベテランのカレーマニアでもミスすることがあるので注意したい

最初こそカレールーたっぷりのご飯を食べていいが、中盤からは

ルー:3 ご飯:6 福神漬け:1の割合で事を進めたい

これでなんとか最終盤までカレールーが残るはずだ

 

この早さは立ち食いそば屋にも共通するものがあるように思うのだが、

カレーは立って食べるにはいまひとつ、という点で駅構内では立ち食いそば屋の天下になっている

丼は持つが皿は置いて食べるという日本人の気質が現れていると言えよう

ちなみに肉何ぞは入っていなくて結構である

よくビーフカレーなのに牛肉が入ってない、

などと嘆く輩がいるが、肉が食いたいならスタンドカレー屋には来るな、と言いたい

逆にヘナチョコな肉が入っている方がスタンドカレーテイストを損なうというものだ

 

オーダーしてからフィニッシュまでわすかに3分半

スタンドカレー屋の生命線はひたすら煮込まれた風のルー(実際はどうかわからんけどこってりねっとりのルーを見るとそんな感じがしてしまう)だと思うのだがどうだろう?

 

●「ニューながい」

 新宿区新宿3-17-13紀伊国屋書店B1F
 電話:03-3352-4853
 営業時間:10:30~20:30
 定休日:無休

ソース焼きそばの魔力~浅草・花家の潔さ~

ソース焼きそばという食べ物は極めて微妙な位置にあるのではないかと思う

縁日で食べるにはこれほど最適なものはない、というイメージだが、

中華料理屋などではなぜか手を出しにくい

なんか家庭料理の域を出ない食べ物 、というか、わざわざ店で食べるほどのものでは…

という思いに捕らわれてしまう

たとえば、ラーメンなんかの場合は家庭で作るのとラーメン屋で食べるのとでは雲泥の差があるが、

ソース焼きそばの場合、それほど変わらないんじゃないかと思う

具はキャベツに肉に紅ショウガ、青のり といったところ

豪華さだとか華やかさなどからは無縁のB級テイストが漂っている

メインディッシュとしては物足りなさを感じぜざるをえない

 

しかしながら、世の中にはこのソース焼きそばだけを販売しているという潔い店がある

浅草は田原町駅交差点に軒を構える「花家 」がそれだ

 

看板には「甘味・喫茶・焼きそば 花家」とある

店は創業60年ということで、それなりの風格が漂っている

昔ながらの大衆食堂的な感じだ

店のメニューは

焼きそば  300円

大盛り400円

あと飲み物類が

サイダー・コーラ・ジュース・ビール

これだけである

 

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その他に店先でおいなりさんとおにぎりが売られているが、

やはりソース焼きそば専門店といって差し支えないはずだ

ちなみにここのおにぎりは鶏スープの味が染みたなかなかの逸品で

おいなりさんともども昼時に売り切れてしまう人気商品だったりする

 

さて、肝心の焼きそばは、店先の鉄板の上で炒められている

寡黙なオヤジが黙々と炒める

できあがった焼きそばはやはり縁日風の王道を行く出来映え

具はキャベツとモヤシのみ 、もちろん肉などは入っていない

肉入りはソース焼きそば界では邪道、という気さえする

味はまさにTHE ソース焼きそば

ちょいと薄めの味なので、備え付けのソースで好みの味付けに変えるもよし

屋台で食べる焼きそばと違って、ちゃんと店で食べるところがなんとも泣ける

皿に盛られた焼きそばはやはりチープなんである

 

どんなに味わったところで5分で食べ終わる

「早い・安い」は牛丼並みといえよう

おそらく味なんかにも様々な工夫があるのかもしれない

しかし、圧倒的な具の少なさ、全体がソース色でダーク、色づけが紅ショウガに青のりだけという、

このソース焼きそばの風体がすべての努力を打ち消してしまう

 

やっぱり、ソース焼きそばはソース焼きそばでしかない、と言うことだ

 

この潔い風体のソース焼きそばのみを提供する「花家」の潔さ、

浅草散歩に組み入れたいB級コースだ

 

●「花家」

 台東区西浅草1-1-18

 定休日:日曜

脂こってり、ガッツリ極太面、豚ウマウマ~ラーメン二郎の魅力とは

よく人に「ラーメン二郎とはどんなラーメンなのか?」と聞かれる

私はその時に「ラーメン二郎はラーメン二郎というラーメンだ」と答える

つまり、どの世界にも存在しない、オンリーワンの存在なわけだ

 

私のブログにもたびたび登場しているゆえ、ついにその本尊へと迫ってみた

 

jiro

 

まず、「今日は二郎を食べる」と決めた日の朝から、

ラーメン二郎との戦いは始まる

いくらお腹がすいていようと食事は厳禁だ

空腹状態を維持したまま、二郎に行くのがベストである

迂闊に何か食してしまったら、その日は二郎をあきらめるべきであろう

あとで後悔するハメになるのだから

 

初めて二郎を食べる人には三田本店の二郎をお勧めする

ここの二郎こそがKING OF 二郎なのであって

他店とは明らかに味の面で違うのだ

三田を食わずして二郎を食べたなどと言って欲しくはない

 

さて、入店。まず券売機で「大」か「小」かを決める

よほどの大食漢であっても初二郎の時は「小」にすべきだろう

「大」を普通のラーメン屋の大盛りくらいに考えていると地獄のような苦しみを味わうことになる

だされた物体は決して登頂できない絶壁の山、に感じられることだろう

次に豚(チャーシュー)の量を選ぶ

豚入りで5枚、豚ダブルで8枚入りだ

若い頃は「大ダブル」(「大」で豚ダブル)を食べたあとにまだ小なら食えるんじゃないかと思っていたが、いまは「小」でも大変厳しい。豚はもちろんシングル、ついうっかり豚ダブルなどにしてしまうと麺までたとりつくまでが大作業になる。

 

さて、いよいよラーメンの登場である

ここでかっては「二郎呪文」なるものが大仰に唱えられたものだった

「大ダブル野菜辛めにんにく脂増し増し…」みたいな

初心者は皆が次々と呪文を唱えていく中、

「ラ、ラーメン」と口走るのが精一杯だった

しかし、券売機制度になってからはこの呪文制度も姿を消した。

とりあえず券だけ出しておけば、なにもいわずともラーメンが出てくる

初心者に優しい時代になったモンだ

ちなみに現在ではニンニク入れますか」の言葉が店員さんから発せられる

いらない場合は「いりません」ときっぱりと言いましょう

 

まずラーメンが出されたら豚と野菜をグッと押し込み箸を入れられるスペースを作る。

できた隙間から箸をこじいれ麺をつまみ出す

5口程食べたら豚と野菜をスープの中にさらに沈める。
これでようやくスープが飲める状態になった。
でもって、スープをグッとすする。
今日のはなかなか良い。この時点で「今日はイケる」との感触を得る。
然るに豚をかじりつつ、麺を掻き込む、ひたすら掻き込む。
スープを飲む、グイグイ飲む。
半分あたりまで来るとかなり腹がふくれてくる。
「もう逃げ出したい…」

そんな気分にさえ襲われる。
隣の大ダブルの男はさっきから2、3分箸が止まっている。
そんな弱気を打ち消すように再び麺に挑み掛かる。
しばらくするといわゆる

「二郎’S HIGH」と呼ばれる状態になる。

なんだか楽になるのである。
ここまでくれば勝ったも同然だ。
残りは余裕を持って食べる。
周りを見る、自分より早く食べているヤツはいないか確認するためだ。
もうあと少しというところでアクシデントが発生する。
なんとスープの中にまだ豚が1枚隠れていたのである。
これは迂闊だった。
この時期の豚は鉛のように心にずっしりと響く
おそるおそる一口かじってみる。
ダメだ、厳しい…
もうここまで頑張ったんだからいいじゃないか、残したとしても誰も責めないはずだ、と自分に言い聞かせてみる。
そうだ、オヤジだって文句は言うまい。よし残そう、もう限界なんだもんね、と心の悪魔が囁く。
丼をカウンターに置いてしまおうというその時になったハッと正気に戻る。
いかん、自分に負けてはいままで築き上げた二郎人生が意味をなさなく成るではないか
最後の気力を振り絞って、豚を食らう。
もう残りは少ない。
丼の底から残りの麺をすくい取る。
チッ野菜にしなきゃよかったぜと箸にからみつくもやしの束を見て思う。
最後の一滴のスープを飲み干す。
ふー、ミッション終了。スープや麺を残している面々が「こいつやるな」という目で見る。
フフフとほくそ笑む。充実感が体内を駆けめぐる。
全部食べて良かった

しかし、なぜ人類はこうまでして二郎を食べるのか?
それは二郎を食べたものしかわからない運命なのであろう。


●「ラーメン二郎」

 東京都港区三田2-16-3

 営業時間:10:00~16:00(麺がなくなり次第終了)

 定休日:日曜

本場・名古屋の超B級グルメ~マウンテンの怪~

名古屋の食文化については数多くの人間が数多くの評論を記しているのであえてどうとかこうとかはいわないが、長い間、生きてきて「これはさすがにどうか…」という食べ物が名古屋にあったんである

 

spa

 

その恐ろしい食べ物の名前は甘口小倉抹茶スパ

名古屋B級グルメ、ゲテモノ部門の雄・「喫茶マウンテン」 で食すことが出来る

その名の通り、抹茶を練り込んだ緑色のパスタの上になぜか小倉あんが載っており、それだけではあきたらないのか生クリームまでホイップされている、という恐ろしい食べ物である

 

なにがスゴイかというとまず匂いがスゴイんである

フォークをパスタにからみつけるのをためらわずにはいられない壮絶な匂いだ

なんというかな…ツンと鼻に来る刺激臭は目が痛いくらいのドギツさ

この段階で挫折する人も少なくないことだろう

 

匂い問題をクリアしたとして次に襲いかかるのが味、そのものだ

抹茶と生クリームとあんという取り合わせは一見すると悪くはないんじゃないかという気がする

和菓子テイスト、女性ウケしそうな気配さえ漂う

しかし、イメージを軽く越えるほど、とにかく甘い!

 しかも、異常に量が多いと来ている

ラーメン二郎 大ダブルを楽勝で食える人だろうとこの甘さでこの量は完食できまい

相当の甘党でなければ、泣きが入ること必死だ

ちなみに私の場合、5口ほどで泣きが入った

 

さらに勇気ある人間が食い進んだとしよう

またしても大きな壁にぶつかることになる

中盤を過ぎてくると油問題が浮上してくるのである

とにかく麺にまぶしてある油の量がハンパじゃない

この油量を思えば、「ラーメン二郎の油増し増し」なんかカワイイモンだと思わざるを得ない

甘党の大食いも残念ながらこの油問題でリタイアせざるえなかったりする

 

これらの諸問題を乗り越えられた者が、完食という栄光を手に入れることが出来るのである

その道は雪山で1人、遭難したときのように辛く長く険しい道のりだったと完食者はいう

 

ちなみに「喫茶マウンテン」のメニューはどれもこれも強烈だ!

甘口スパシリーズには他にも見た目も強烈な「甘口いちごスパ」(なにせ麺がピンクだ)「甘口めろんスパ」甘口バナナスパ」などがある。

もちろん、名古屋らしく「味噌煮込みスパ」や「とりスープスパ」、「おしるこスパ」なども健在

 

その他のメニューでは巨大なカキ氷、パフェ類、アイスが全体の1/2は締めると思われるジョッキ入りのフロート類などメニューはすべてキングサイズ!

 

さすが「マウンテン」と恐れられているという

 

愛・地球博に出店してたら、世界を驚きの渦に巻き込んだのは間違いない

 

●喫茶「マウンテン」

 名古屋市昭和区滝川町47-86
 営業時間:am 7:00~pm 10:00 

  定休日:月曜日

 

二日酔いの時に食べたいもの

うーむ、二日酔いだ…

3連チャンで朝4時近くまで飲んでたら、ちょいと頭がクラクラしている

こんな時、無性にラーメンが食べたくなる

サッパリ醤油系なんかじゃ、このクラクラ頭には効きやしない

コッテリ系、それも油ギドギドのやつ

いわゆる背脂チャチャ系といわれるラーメンだ

 

いまのラーメン愛好家には信じられないことかもしれないが

かって背脂チャチャ系といえば「香月」の独占市場だったときがある

もう20数年前の話だ

その頃、「香月」は明治通り沿いにあった

JRAのある並木橋よりさらに恵比寿よ寄り、

渋谷からだと10数分は歩いた、かなり僻地にあった(当時の明治通りはいまと違ってなーんにもなかった)

当時、高校生だった我々はテクテクと歩いて「香月」を目指した

店内は7人も入ればいっぱいだったか…

店に到着するとまずビールを頼む

学ランで行ってるにもかかわらず店主は快くビールを出してくれた

古き良き時代の話だ

 

なぜ二日酔い時にコテコテラーメンが食べたくなるのか?

とにかく重要なのはスープである

極端な話、麺だとか具だとかはこの際、どうでもいい

アルコールで焼け付いた喉元に鶏ガラベースのサッパリスープは逆に痛い、のである

染みるんですね、アルコール焼けの食道に

サッパリスープだとただ単に熱いお湯が通過していく=染みる、ってなことになる

 

背脂系スープの場合だと油の膜が保護してくれるのか

スープが食道を通過していくときに焼けるような感覚に襲われなくて済む

スープを一口すすったときのジワッと広がるコッテリ風味

このコッテリが体の毒素を吸着してくれるんじゃないかという錯覚に陥る

サッパリ醤油だとこうはいかない

そのまま、すとーんと胃袋まで落ちてしまう

あまりに気持ち悪かったりすると吐いてしまうときさえある

 

ではどこのラーメン屋が良いのか?

コッテリの総本山ともいうべき「ラーメン二郎」はさすがに厳しい

二日酔いで「二郎」は自殺行為といっても過言ではないだろう

先の「香月」は…いまわざわざ食べに行くほどの店じゃなくなってしまった

私の中では10数年前に終わっている店だ

「野方ホープ軒」という手もあるが、千駄ヶ谷のホープ軒と違って、

スープが上品すぎるところがほしい、もっと野性味があれば文句はないのだが

ちなみに千駄ヶ谷も二郎とにたような理由でペケである

理想は「ラーメン二郎」のワイルドさを残しつつも、もっとまろやかな感じ

スープに臭みがあるとそれだけで吐きそうになってしまうので、

油ギトギトなんだが臭みない、みたいなのがよい

 

で、最近、二日酔いの日に好んでいくのが「ぽっぽっ屋 」である

「ぽっぽっ屋」とは「二郎」で修行した人が開いた店で

「二郎」インスパイア系といえよう

「二郎」テイストは守られつつ、初心者にも優しい量と味付けだ

これが良い

深みのあるコッテリスープに胃が洗浄される思いである

 

ちなみに酒を飲んだあとにラーメンを食べたくなるのとは根本的に違う様な気がする

10代、20代の頃は酒飲んだあとシメにラーメンは定番であった

なんでシメにラーメンだったのか?

あの頃は「恵比寿ラーメン」が多かったか

まだヒゲのオヤジ・柴田さんが健在で屋台で営業していた頃の話だ

「恵比寿ラーメン」のスープはサッパリ醤油系であることを考えると

飲んだあとはサッパリ醤油

二日酔いの時はコッテリラーメン

が良い、ということになる

 

なるほど…なんだかわからんがそんな気がしないでもない

飲んだあとはすきっとさせたいもんですからね

 

そんなわけで、これから「ぽっぽっ屋」へと出掛け、その後酒を飲みに出掛け、

シメにサッパリ醤油ラーメンを食べてみようという、今日この頃です

 

 ●「ぽっぽっ屋」中野新橋店

  東京都中野区本町5-4-1

  営業時間 am11:30~15:00 pm17:30~23:00

   無休

 

 

 

「ベニスの商人じゃあるまいし…」~嗚呼、懐かしの東中野「モカ」~

東中野あたりはいま地下高速工事で大変、鬱陶しいことになっているが、

かって線路沿いに「モカ」という素晴らしい喫茶店があった。

あれは大学1年の頃だろうか。(マハラジャが元気だった頃のお話)

当時、我々の間では

中野の「クラッシック」

渋谷の「ライオン」

東中野の「モカ」

三大激シブ喫茶店として憩いの場と化していた

中でも「モカ」は他の2店にはないB級な魅力に溢れていたのだった

何がB級かというと店のおかあさんが超B級なのであった

店内は…ほとんど「ムルギー」に近いと思ってもらってかまわない

テーブルやら雰囲気はだいたいあんな感じである

店のサイズは1/3くらいだろうか

テーブルにはオルゴールが置かれている

あけると音楽が流れ(「エリーゼのために」だった気がするがさすがに覚えていない)

そこにはメニューが貼り付けられている

そのままならば、オールドな雰囲気の中でコーヒーを飲み、

たゆたゆとした時間を楽しむ店、であるのだが、

ここ「モカ」にたゆたゆした時間などあり得ないのであった

入店後、しばらくするとおかあさん(当時、70歳くらいか)が雑談を仕掛けてくる

和やかに天気だとか社会情勢なんかについて話していると

突然、おかあさんが豹変するのである

「思い起こせば50年前、華の銀座の片隅で、肩で風着る艶姿…」

といきなり自分の半生を弁士風に語り出すんである

あまりの変貌振りに多くの人間が笑いを禁じ得ないのであるが、

これがまたどうしてなかなか聞き応えのある語り口で、いつ聞いても聞き惚れてしまう

それが長いときで30分、ショートバージョンでも20分くらい続く

話の中身は自分が20代の頃は花魁よろしく銀座でも噂のいい女で

モボ・モガに囲まれて大正ロマンな人生を送っていた…みたいなことだったと思う

でもって、必ず最後にシメの言葉があるんである

それが「ベニスの商人じゃあるまいし、肉のかたまり一つに血、一滴……ってなもんですよね、お客さん」

という台詞だ

まったくもって前後との話の脈略はなく、意味は著しく不明である

しかも、絶妙な節回しで言うのである

シビレた…グレートだぜ、おかあさん

「血、一滴」というところまでは歌舞伎でいうミエを切っている感じで

それからしばらく間をおいて「ってなもんですよね、お客さん」と続くわけだ。

しかしながら、急に「ってなもんですよね、お客さん」と振られるからその後の返しが難しい。

「ってなもんですよね」と相づちを求められても、何が何だか話がわからんのだから

「ハァ」と言うしかない。

あれは大学2年の元旦のことだ

「モカ」愛好者であった我々は有意義な正月を過ごすために

午後3時に「モカ」集合ということにした。

そして、午後3時。続々と仲間が集結してくる。

現在、スカパラの川上つよし、谷中敦をはじめ初代ドラマーだった青木達之などなど…

なかなか素晴らしいメンツだ。スカパラの原点は「モカ」にある………わきゃ、ないか

しかし、店は案の定、閉まっていた。そんなことはもちろん想定内である

我々はおかあさんから聞き出していた店の裏手の住居めがけて突進した。

チャイムを激しく鳴らす。

出ない

今度は扉をガチャガチャとしてみる

出ない

扉をドンドン叩き、「おかあさんいます?」と大声で叫ぶ

なんだかゴソゴソと部屋の中で動く気配がする

しばらくするとマスクをしたおかあさんが出てくる

風邪、らしい

なんでもここ2,3日寝込んでいたとのことだ

しかしながら、我々も「じゃ休んでてください」などとは言わないんである

「店の鍵貸してもらえますか?先に行ってやってますんで、おかあさん、着替えたら来てください」だったから

その後、老体に鞭打ったおかあさんに「ベニスの商人…」を語らせ

我々は満足して浅草へと消えていった…

浅草東宝にクレイジーキャッツ特集オールナイトを見に行くために…

なんてB級な野郎どもだったことか…

おかあさんに合掌